猫がトイレの猫砂をいたずらしている場面を見たことがありますか。
器用に前足を使って、きれいな猫砂だけを取り出す『仕分け作業』をしている姿は何とも言えない可愛さもありますが、もしかしたら遊んでいるだけではないかもしれません。
実は、猫砂を食べてしまう猫は少なくないんです。
また他にも、布製品やビニール袋などの異物を食べてしまう猫もいます。
異物を食べてしまうと、消化されずに体内に残ってしまい、胃や腸にとどまってしまいます。
そうすると、猫は腸閉塞などを起こし最悪の場合死に至ることもあるんです。
また猫砂は種類が豊富で、それぞれの特徴や使われている原料、固まる性質も違います。
ですから、それぞれの危険性を知ることで、猫砂を食べてしまう猫たちのリスクを減らすやり方がきっと見つかるはずですよ。
猫砂が及ぼす体への影響
猫砂を食べることでどのように猫の体に影響があるのか、見ていきましょう。
まず、異物を食べることを『異嗜(いし)』と言います。
異嗜には、猫砂を食べることの他にも、道に落ちている石や砂、布製品やビニールなど様々なものを食べてしまうこともあります。
猫砂を食べてしまった場合、少量であれば便と一緒に排出されるため、すぐに異常が起きるということはありません。
しかし猫砂は水分を吸収し、膨張して固まるという性質ですので、たくさん食べてしまうと消化しきれずに体内で残ってしまう可能性があるのです。
通常は危険でないものでも、猫砂を食べ続けてしまうことで体に何らかの形で悪影響を及ぼしてしまいます。
もし、元気がなかったり、嘔吐などの異常が見られる場合は病院へ連れて行きましょう。
猫砂がどのように影響をもたらすのか、このあと種類別に詳しく説明していきますね。
猫砂の種類
異嗜が見られる猫には、体への健康被害の心配があり、種類によってリスクの高さはそれぞれ違います。
猫砂の種類はこのように5種類ほどあり、種類によって固まりやすさや性質も違いますので見ていきましょう。
【猫砂の種類と特徴】
鉱物 |
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シリカゲル |
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紙 |
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木 |
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おから |
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鉱物製の猫砂
主原料:ベンナイト(ケイ酸アルミニウム)
鉱物系の猫砂に使われているベンナイトは有害物質です。
そして固まる力は強く、水分を含んだ鉱物製の猫砂は、セメントのようにガッチリ強力に固まります。
猫砂として猫には好まれ扱いやすい反面、水分がたっぷりある体内では残りやすく、大量に食べてしまうと胃や腸に詰まってしまうことがあります。
ある猫は、猫砂を食べ続けて体調を崩して開腹手術を受けたらしいんにゃ。
そしたら、胃袋全体に猫砂が固まってこびりついていたらしいにゃ!怖いにゃー
そこまで状況が悪化してしまうのは余程悪い環境下だったのでしょう。
この一件は、かなりのレアケースで、ここまでくるとベンナイト中毒の疑いが出てきます。
ベンナイトの毒に侵された猫が『低カリウム症』や『腎臓病』を引き起こすと言われていることも多いですが、直接的な因果関係が解明されたわけではなく、はっきりとは言えないのが現状です。
ですが、有害物質であるベンナイトが体内に残されることと、固まりやすさを考えると、食べてしまうことは危険性があることは否定できません。
そしてもう一点、ベンナイトの心配なところが、粉塵が舞いやすいということ。
これは猫だけでなく、人間にも影響があり、有害物質を吸ってしまった場合、肺炎などのリスクが高まります。
また、舞い上がった粉塵が猫の体の毛に着いて、その毛をグルーミング(毛づくろい)することで体内に入り込んでしまうこともあります。
粉塵の舞いやすさも猫砂を選ぶ一つのポイントになりますね。
シリカゲル製の猫砂
主原料:シリカゲル(二酸化ケイ素)
乾燥剤に使われているシリカゲル。
シリカゲルも固まる力は強く、たくさん食べてしまうと体内に残りやすいです。
シリカゲル自体は少量であれば無害なのですが、まれに口の中がただれたり、食道に付着してしまうと炎症を起こしてしまう場合があります。
食べてしまったのが少量で、猫に異常がなければ、水を飲ませて様子を見ましょう。
紙製の猫砂
主原料:再生パルプ
おしっこを吸収すると膨張し、柔らかい状態で固まります。
粒の大きさが少し大きく、猫の好みが分かれるかもしれません。
匂い付きのものもあったり、吸収ポリマーも混ぜ込まれていたりしますが、毒性はありません。
凝固剤や接着剤が入っていたり、食べてしまった後、消化できない場合もあり、注意が必要なのはこちらの紙製の猫砂も同じです。
木製の猫砂
主原料:おがくず、または、木の(無添加)チップ
①おがくずの固まるタイプ
粒は大きいものやふわふわしたものまで様々なものがあります。
固まった後はやわらかく、食べようとするとすぐに崩れやすくなっています。
主原料は自然由来のものですが、カビが生えないように防腐剤が入っているので、体に良くはありません。
②チップ(木製ペレット)の固まらないタイプ
木製と言えば、こちらの固まらないシステムトイレで使用するものを目にすることの方が多いかもしれませんね。
いっさい固まらず、粒が大きいのが特徴です。
見た目がごはんと似てて、間違えちゃったりするんだにゃ~。
…と、と、友達が言ってたにゃ!!
おから製の猫砂
主原料:おから(コンスターチやタピオカでん粉なども)
おからはそもそも食べ物ですので、体に毒ということはありません。
おからで作られた猫砂は、中でも一番体にとって安心だと言えます。
おから製の猫砂は、虫が湧いちゃうこともまれにあるらしいにゃ!!
逆に言えば、それくらい安全なものとも言えるってことかにゃ?
猫の安全を考えられた猫砂だけど、もちろん食べてしまうのはNGだよ。
虫が湧きやすい心配は、湧く前に新しいものに交換すればOK♪
このタイプを使っているお宅の中には、おからの匂いが気になる方もいるようで、猫がいい匂いだと感じて食べてしまうことも少なくないんです。
食べ物由来成分で出来たものでも、抗菌剤や防腐剤も配合されているので、食べるのは良くありません。
他の猫砂から、おから製の猫砂へ切り替えた場合は、以前と比べて食べる頻度や量が多くなっていないか注目しておくと良いですね。
鉱物 | 食砂の危険度 |
---|---|
シリカゲル | 食砂の危険度 |
紙 | 食砂の危険度 |
木 | 食砂の危険度 |
おから | 食砂の危険度 |
それぞれの安全性の違いはよくわかりました。おから製の猫砂が一番、猫の体を考えられたものなんですね。
ですがそうは言っても、異嗜には多かれ少なかれリスクがあるということもわかりました。
今すぐに治してあげたいのですが、これからわたしたちにできる事ってあるんでしょうか?
そうですね、病院へ連れて行くことの他にも、飼い主にしかできない大切のことがありますよ。
猫砂を食べるときの2つの対策
異嗜が繰り返される猫に、飼い主がすぐに出来ることはあります。
大量に猫砂を食べてしまったことによって、食道や胃が詰まってしまったり、腸閉塞になってしまう可能性はあります。
リスクを最小限にするために、まずは飼い主さんがすぐにできる対策をしてあげましょう。
猫砂への興味をなくす
形や大きさを気に入らないものにしたり、今までと匂いが違うものにすると、興味がなくなる場合があります。
種類を変える場合は、ストレスがかからないように、少しずつ混ぜていく方法がおすすめです。
紙や木、おから製の猫砂を現在使っていて匂いが好きで食べてしまう猫には、シリカゲル製の物や鉱物製の猫砂を試してみてもいいかもしれません。
そして先ほどもご説明しましだが、鉱物の猫砂は粉塵が舞ってしまうということが心配な要因の一つです。
肺炎などのリスクを減らすために、こちらのような舞いづらい物を使うようにしましょう。
食べても影響の少ないものに変える
どのタイプでも食べてしまうような猫は、食べること自体、癖になっているかもしれません。
異嗜を改善することが難しいようでしたら、やめさせることから一旦頭から切り離して考えてみましょう。
お腹に入る量は少なくしたいので、見かけたら声をかけて気をそらすようにしていきます。猫砂の種類は、安全性の高い物から順番に試してみましょう。
おから→木→紙→シリカゲル→鉱物
おからや木は虫が湧くこともあるので、匂いや虫対策として芳香する紙砂を少し混ぜるというやり方もおすすめです。
そして猫は変化を苦手としますので、猫砂を変える際は、慎重にやるようにしてください。
少しずつ、9:1、8:1と徐々に割合を変えていき、猫にストレスを与えない方法で切り替えるようにしましょう。
ちなみに、こちらのようなシートを使うと、軽く飛び散りやすいおから製や紙製の猫砂もお掃除が楽になりますよ。
また、夢中になれるものを他に作ってみたりしてみてください。
猫砂が気に入らないと、トイレを我慢したりしちゃって、今度は泌尿器系の方の心配が出てきちゃうから、ぜひとも慎重にやってほしいんだにゃ。
苦労かけて申し訳ないにゃー
ゆね、猫代表として謝ってくれたの?大人になっちゃって!
愛する猫のためならなんでもするよ~!言い訳くらいしていいんだよ~
猫砂を食べてしまう6つの理由
猫はなぜ猫砂を食べてしまうのか、理由は6つあります。
- トイレだと理解していない
- ストレスがある
- 食事量や栄養の不足
- 寄生虫や病気
- 認知症
- 形や匂い、歯触りが好き
順番に見ていきますね。
1.トイレだと理解していない
まだお迎えして間もない子猫や、保護した猫などが「ここはトイレだ」と理解できていない場合があります。
トイレの前に座って、汚れていない猫砂を選んでは取り出して遊んだり、かじって食べちゃったりするんだにゃー。
ちゃんと仕分けして、器用だよね(笑)
でも、食べちゃうと体も心配だし、毎回掃除も大変…。ここは用を足す場所、遊んじゃダメよと根気よく教えてあげないといけないね。
トイレトレーニングは何歳からでも可能です。
根気よく教えてあげれば、きれい好きの猫は覚えることが出来ます。
こちらの記事は、トイレトレーニングについて詳しく解説しています。子猫も成猫もやり方は同じですので、ぜひ見てみてくださいね。
また、飼い主さんは、猫が食べてしまったのを見つける度に、猫砂の種類がいけないのだと思ってすぐに買い変えてしまっていませんか。
トイレを学習し終える前に、猫砂を変えてしまうと、猫はまた一から学習しなくてはいけなくなります。
また、猫は変化を苦手としますので、ストレスを感じてしまうかもしれません。
「ここはトイレ、遊ぶところじゃない」ということを理解するまでは、極力猫砂の種類を変えない方が良いです。
2.ストレスがある
なんらかのストレスを抱えていて、異常行動をとる猫もいます。
猫はとても繊細な動物ですので、些細な変化でも敏感に感じ取ってしまいます。
例えば、
- 引っ越しや部屋の模様替え
- 芳香剤や柔軟剤の匂い
- 工事現場の音
- スキンシップ不足や運動不足
などがあげられますが、他にもストレスを感じる要因はたくさんあります。
猫のストレス発散の矛先が、猫砂になってしまい、かじったり食べてしまうといった行動をとってしまったということです。
ストレスで、知らぬ間に自分の体を痛めつけているなんて可哀想ですよね。
思い当たる点があれば、今すぐに改善してあげましょう。
3.食事量や栄養の不足
単純にお腹がすいていて、猫砂を食べてしまう猫もいます。
2匹以上飼っているおうちの方など、他の猫に餌を取られてしまっていたりしている子はいませんか。
猫の摂取カロリーは決まっていて、適切な食事を与えることが大切です。
例えば、もともとあまり食べない猫には、栄養たっぷりのおやつをこまめにあげたり、食欲旺盛な子には、肥満にならないように低カロリーなものを与えるなど、対応してあげましょう。
猫のご飯は量で決めるのではなく、カロリーに注目してくださいね!!
餌のカロリー目安は、餌の袋に記載されているので見てみてください。
運動量も考慮して調節してくださいね。詳しくはかかりつけのお医者さんに相談してみると安心ですよ。
また、動物は本能的に足りない栄養を補おうと、石や砂など食べたりなめたりする場合があるんです。
石や砂にはミネラルが含まれていて、体に取り入れようとなめたり食べたりしてしまいます。
でも実際、人間の都合でつくられた猫砂は有害物質が入っているなんて、猫は知ったこっちゃないんだにゃ…。
ミネラルを取り入れるために、栄養価の高いキャットフードに切り替えるというのも良いかもしれません。
原材料の一番目に表記されているものが一番多く使われています。
一番目にチキンや魚介類を使われたものは、栄養価の高いキャットフードなんですよ。
また、異物はお腹に溜まりやすいですが、少しでも食事でお腹の負担を軽減したいところですよね。
穀物不使用のグレインフリーのキャットフードもおすすめですよ。穀物は消化に時間がかかってしまって、猫のお腹に溜まりやすいんです。消化のいいグレインフリーフードが消化吸収を助けてくれるんですよ!!
あとは~、
体重、年齢、運動量、食欲によっても、猫それぞれ適切な量も違ってきますので、しっかりと管理してあげることが大切です。
4.寄生虫や病気
寄生虫が原因で猫砂を食べてしまうこともあります。
お腹に寄生虫がいることで、栄養を取られてしまい、空腹になってしまって猫砂を食べてしまうという場合があります。
- 便の状態が悪い
- たくさん食べているのに極端に痩せている
- 嘔吐がある
また、病気がある場合もあり、肝臓疾患であることも考えられます。
- 黄疸(目や肉球が黄色くなる)
- 食欲不振
いずれも必ず病院へ連れて行き、お薬を処方してもらって、しっかり治してもらいましょう。
5.認知症
人間と同じように、猫も近年寿命が長くなり、認知症になる老猫が増えています。
認知症が原因で異常行動が繰り返され、悩まされている飼い主さんも少なくありません。
その異常行動の一つとして、猫砂を食べるということがあります。
認知症を発症してしまうと、治療や解決は難しいです。
とにかく気をそらしていくしかないですね…
発症してしまう前に予防として、サプリメントを飲ませてみるのもいいかもしれません。
6.形や匂い、歯ざわりが好き
口に入れた時の感覚、匂い、大粒なものを割る感触が好きで食べてしまう子もいます。
いわゆる『異食症(または異嗜症)』で、先ほど紹介したようなストレスや不安、栄養不足や寄生虫がきっかけとなって、繰り返されてしまう場合があります。
一方で、この異食症は精神疾患のようなもので、明確な原因や治療法がわからない場合も多いのが現状です。
ちなみにこのような症状には、猫砂だけでなく、布や紙などかじったりすることもあり、『ウールサッキング』とも呼ばれます。
ウール=羊毛 サッキング=しゃぶる
カーペットやクッションなどの繊維を吸ったりかじる行動。
主に、授乳期に母親から引き離された子猫や、欲求不満や慢性的なストレスを抱えた猫に見られます。
遺伝的なものもあって、シャム猫とかバーミーズに多いらしいんだにゃ~
何でも、東洋系の猫は繊維を好むらしいにゃ。
異食症になると、同じ行動がくりかえされて、食べたものがお腹の中に溜まりやすく、腸閉塞などになる可能性は高くなります。
猫砂を食べてしまう理由は様々ですが、猫砂は体に悪影響を及ぼすものですので、食べてしまわないよう、元となる原因を探して対策をしてあげてくださいね。
まとめ
猫砂を食べてしまう猫に向けて、お話をしてきました。
猫砂の種類は5種類あり、鉱物製の猫砂は体に悪影響を及ぼす可能性があり、猫の体のことを考えられた猫砂は、おから製のものだということがわかりました。
鉱物 | 食砂の危険度 |
---|---|
シリカゲル | 食砂の危険度 |
紙 | 食砂の危険度 |
木 | 食砂の危険度 |
おから | 食砂の危険度 |
そして、猫砂を食べるのをなかなかやめてくれない猫には、このようなやり方がおすすめです。
- 猫砂への興味をなくす
- 食べても影響の少ないものに変える
そして、そもそもどうして猫砂を食べてしまうのかというのはこちら。
- トイレだと理解していない
- ストレスがある
- 食事量や栄養の不足
- 寄生虫や病気
- 認知症
- 形や匂い、歯触りが好き
異嗜が見られる猫に悩まされている飼い主さんは大変だと思います。
ですが根本となる原因を探して改善したり、猫に合わせて猫砂を選んだり、気をそらせるグッズを使うなど工夫を凝らして、少しでもリスクを減らしてあげましょう。