先日猫友から、あわてた様子で連絡が入りました。
三日前ぐらいから食欲がないみたいで、あまり食べてくれないの。舌をしょっちゅうペロペロしているなと思っていたら、口の周りに茶色いよだれのような痕があったからなんだろうと思って…
つい先日まで元気だったのに、こんなに急に元気がなくなるなんて。
『茶色いよだれ』と『ぐったりしている』いう言葉を聞いて、いくつか考えられる病気が思い浮かんだので、手遅れになる前にと、救急で診てもらうように勧めました。
猫は痛みに強く、我慢できてしまう動物なので、注意深く見ておかないとなりません。
万が一難病だった場合、気づいたときにはもう手遅れなんてことも起こりえるんです。
よだれが茶色い、口臭が気になるなどの症状があれば、何かあると疑った方が良いですね。
この猫ちゃんは、重度の歯周病でうまく食事が出来ずに、元気がなくなってしまっていたそうです。
きちんと治療をして、今ではご飯も食べれるようになったんですよ。本当に良かった!!
トラブルにいち早く気付いてあげることが出来れば、猫も苦しまずに済みますし、飼い主さんも怖い思いをしなくて済むかもしれません。
猫のお口のトラブルで、一番可能性の高いと言われている歯周病は、避けられる病気であり、猫の歯についてきちんと知ることで、ケアの負担も少なくすることができます。
ゆねみたいに、健康で美しくいたい子は、ついてきてにゃ~!
お悩み解決は、みぽりんとゆねの最強コンビにお任せあれだにゃ♪
猫のよだれが茶色い原因とは?
通常、猫は犬と違って、日常的によだれを垂らすことはほとんどありません。
でもあごの骨格によって、自然と出ちゃう子もいるみたいだにゃん。ベロが出ちゃうかわいい子、見たことないかにゃ?
基本的に、透明なさらっとしているよだれの場合は心配いりません。
透明なよだれは、
- 嬉しいとき
- お腹がすいたとき
- 誤って洗剤などの刺激物をなめてしまった時に流すため
- お薬など苦みのある時に和らげるため
こういった場合に、よだれの分泌を増やしている場合がほとんどです。
しかし一方で、ドロッとしていたり、茶色かったり匂いがきつかったりしたら、何か問題があることを疑った方が良いですよ。
様々な原因が考えられますが、まず猫の口内トラブルで一番多いものというのが『歯周病』です。
身近にあるトラブルでありながら、油断のできない病気ですので、詳しく見ていきましょう。
歯周病
歯周病とは、歯垢(しこう)の中の細菌が原因となって起こる炎症です。
進行してしまうと歯肉だけでなく、歯や歯の周囲にある靭帯(じんたい)、歯を支えている骨にも影響が出てきます。
- 歯肉の腫れや出血
- 歯がぐらついている
- 口臭(アンモニアのようなきつい匂い)
- 傷みによって、物を食べづらそうにする
歯肉からの出血による茶色いよだれや、口臭があれば歯周病を疑うべきです。
歯磨きを怠ることで、歯垢(プラーク)が蓄積して歯石に変わり、簡単にはよごれを落とすことが出来なくなってしまいます。
猫は人間に比べると、歯垢が歯石に変わるのがとても速く、一度歯石がつくと簡単にはとれないんです。
歯石取るのって、とっても大変なんだよね~
それでは、歯科衛生士の顔も持つわたくしみぽりんから、どのようにして歯周病が進行してしまうのか、ご説明していきますね。
歯周病は、進行具合で呼び名も変化し、軽度の場合は『歯肉炎』、症状が進むにつれて『歯周炎』になります。
【軽度:歯肉炎】
歯肉(歯茎)が炎症を起こし、赤みが出たり、腫れてきたりします。
ブラッシング時には、出血がある場合もありますが、これは歯ブラシが届いている証拠です。
丁寧なブラッシングを毎日きちんとするようにすれば、改善の余地は十分にあります。
【中度:歯周炎】
症状が進むと、歯周ポケットの奥の組織である『歯周靭帯(ししゅうじんたい)』や『歯根膜』という、歯を歯槽骨にしっかり固定している組織にまで炎症を起こします。
歯がグラグラし始めたり、軽く歯肉に触れるだけで出血し、早急に改善しなければならない状態です。
歯槽膿漏(しそうのうろう)とも呼びます。
【重度:歯周炎】
歯周病は最終的に、歯を支えている歯槽骨が溶けてしまい、歯がグラグラして最終的にこの歯は抜けてしまいます。
口臭もひどくなり、膿のようなものが出ることは少なくありません。
溶かすのは歯槽骨だけでなく、目の下や口や鼻へ貫通することもあり、食事も出来なくなるとやがて衰弱していってしまい、最悪の場合死に至る場合もあります。
一度、歯の周辺組織がこわれてしまうと、完全に元にはもどらないことが歯周病の怖いところ。
また、歯周病をきっかけとして、他の病気をも併発する可能性もありますので、症状が軽い場合でも軽視できません。
体質にもよりますが、免疫力が著しく落ちないように、寒さや環境変化等のストレスに備えて体調管理をしっかりすることが重要です。
うわ、まじまじ聞くと怖いにゃ…。
歯周病って聞くと、お年を召した猫の印象が強いかもしれないけど、歯がある猫全員に可能性があるということにゃ。子猫なんかでも、十分可能性はあるんだにゃ。
そう!!だから猫に歯磨きはとっても大切なこと。
ちなみに子猫の歯は、生後3か月ごろから生え始めますので、このころから歯ブラシに慣れさせるためにも、たくさん触れさせておくと良いですよ。
治療方法
歯周病になってしまった猫は、病院で治療することが可能です。
治療方法としては、
- 全身麻酔をして、スケーリング(歯石取り)
- 必要であれば、抜歯
- お薬投与
人間と違って、猫はじっとしていることが出来ないので、全身麻酔をして手術扱いになりますから、費用はかかります。
歯周病の状態により、金額は前後しますが、約4万円~6万円ほどです。
手術は猫の負担になり、さらに高齢になるとリスクも伴います。
避けることが可能な病気は、日ごろから予防してあげてください。
にゃ~!!ゆねみたいにお口がきれいな猫には全く心配ないにゃ♪
うん♪ゆねはわたしがいる限り、歯周病は心配ないよー!
でも実は、猫の茶色いよだれの原因は、歯周病だけではないの。
まれなケースですが、他に考えられる原因はこちらです。
口腔腫瘍
猫の口の中に腫瘍が出来てしまった場合、『扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)』という悪性の腫瘍の可能性が高いです。
このがんは、皮膚や粘膜にできる腫瘍で、耳の先端や上まぶた、鼻や指先などにもできることも。
がんの進行は極めて速く、1~3か月で深部の組織や骨にまで広がっていきます。
口腔内に出来た場合は、部位は歯茎にできることがほとんどです。
- 赤くなって化膿し、ジュクジュクとしてくる
- 腫瘍ができて、どんどん大きくなる
- 常に舌が出ている状態になり、出血やよだれが出る
- ご飯を食べるとき痛みで食べにくそうにしている
歯頚部吸収病巣
歯の歯頚部(しけいぶ)、歯茎の根元から溶けて、あごの骨に吸収されてしまうという猫特有の病気です。
本来なら歯を溶かすのは、乳歯から永久歯へ生え変わる時だけに働きます。
それは乳歯を溶かしながら、永久歯に吸収されることで強い歯を生やすためです。
この溶かすための細胞『破歯細胞(はしさいぼう)』が異常増殖してしまうのがこの病気です。
別名『破歯細胞性吸収病巣』とも言います。
- 歯と歯茎の間が欠けたようになっている
- 歯石が付きやすくなり、よだれや口臭がある
- 傷みで食事を食べづらそうにする
難治性口内炎
中・高齢の猫に多く、激しい痛みを伴う慢性の炎症性疾患です。
過剰免疫や低下、アレルギー、猫白血病ウイルスや猫カリシウイルスなど、様々な因子が複雑に作用し、口内炎になることがあります。
人間のように簡単に治る口内炎とは違い、治療が難しい病気です。
また、歯周病が原因で口内炎になる場合もあります。
- 赤く腫れ、出血
- ひどい口臭や膿のようなよだれ
- ご飯が食べられないほどの痛み
どれもすごく辛そうにゃ…猫の病気は、原因とか治し方がはっきりわからないことがまだまだたくさんあるんだにゃー。
そうだね。それに症状もどれもよく似ていて、判断も難しいね…。
とにかくよだれの色や口臭が気になったら、重症化のリスクを下げるためにも早めに病院へ連れて行くことが。
そして、異常にすぐ気づいてあげるには、普段からの健康チェックがとても重要!!
猫のお口のトラブルを予防するには
猫のお口のトラブルを防ぐためには、口の中を清潔に保つことが大切です。
猫のお口の中を清潔にすることで、様々なトラブルを取り除いてあげることができますし、異常があった場合にはいち早く気付くことができます。
普段から、ぜひ清潔を保つために、歯磨きをしてあげてくださいね。
正しい歯磨き
正しいブラッシングは、猫の歯を知ることから。
猫の歯は、こんな風に生えているよ。
実は猫は、虫歯になることがないんです。
ですが、歯垢が悪さをして歯周病になる心配はありますから、ポイントをおさえてみがいてあげましょう。
猫のブラッシングについて、ポイントは2つあります。
まずは、上あごの一番奥の歯の外側、頬側面(きょうそくめん)がブラシが届きにくく、一番よごれが付きやすい部分になります。
これが一つ目のポイント!ほっぺが邪魔してみがき辛いと思うけど、頑張ってみがいてくださいね!
上手にみがくコツは、猫の口を閉じたまま、ほっぺの内側(歯の外側)に指を入れてしっかり位置を確認すること。
前歯や犬歯からスタートして、奥に向かって指を添わせると、奥歯を見つけることができますよ。
ここに歯垢が溜まってしまうと、歯石になりやすいので、気をつけてくださいね。
この部分のそばには唾液腺があり、歯石がつきやすいんです。
また猫は、3日ほどで歯垢から歯石へと変化してしまいます。
歯石とは、唾液に含まれるカルシウムが歯垢に沈着(石灰化)して、石のように固くなったもの。
また、黒い歯石は『縁下歯石』と呼ばれ特に固く、歯茎の下の歯周ポケットに出来ます。
そして、もう一つのポイントは、歯と歯茎の部分をみがくことです。
歯と歯茎の間に歯垢がつきやすく、歯周ポケットに細菌が入り込むことで歯周病の原因となります。
また、意識してみがかないとブラシが行き届かず、みがき残しができてしまいます。
コツは、歯と歯茎に向かって斜め45度にブラシを垂直に当てて、優しく細かく動かすようにみがくこと。
軽度の歯肉炎になっていたりすると出血する場合がありますが、それは問題ないので気を追わずにしっかりとみがいてあげてくださいね。
歯石になってしまうと、固くてブラシでは取り除くことが出来なくなってしまいます。
ですから、歯石になる前にしっかりと歯磨きをして、猫のお口を清潔に保ってあげることがとても大切です。
ぜひ、毎日歯磨きしてあげることを心がけましょう。
猫の歯磨きのやり方が、文章だとわかりづらいなという方は、こちらも見てみてみると分かりやすいですよ。
猫が嫌がってしまってブラシが難しい場合は、デンタルシートを使うとハードルも低く、やりやすい場合もありますよ。
シートからはじめて、徐々にブラシへ変えていく作戦もおすすめです。
歯の健康を考えた食生活
はみがきの他に、もう一つ歯を清潔に保つための方法があります。
それは、歯の健康を考えられた食事。
猫は、ドライタイプのキャットフードを食べた方が、どちらかというとよごれが付きにくく、飼い主の負担が少なく済みます。
猫缶などのウェットキャットフードは、歯によごれが付きやすく、こまめなケアが必要です。
ドライキャットフードの中でも、『デンタル』と書いてあるものが、猫の歯の健康が考えられたものなんです。
わたしもお気に入りのデンタルドライキャットフードで、お口の健康を保っているにゃ。
いつも食べているのがこちらだにゃん♪
歯の表面に付着した歯垢を取り除くためには、噛むものと歯の表面との間で擦れ合いが起こらなくてはなりません。
しかし通常のドライフードの場合、歯の先端がフードに触れた途端カリッと音を立ててバラバラになってしまいます。
一方、『歯磨き効果がある』とか『歯の健康を促す』といった表現が記載されたデンタルフードは、フードの表面と歯の表面との接触面積を増やし、また接触時間がなるべく長くなるような工夫が施されています。
食べると同時に、よごれもこそぎ取ってくれるイメージですね!
猫の歯の状態によって、食事面も検討してみるのも良いかもしれません。
まとめ
今回は、猫のよだれが茶色く匂いもあった場合についてお話ししました。
考えられる要因はこちらです。
- 歯周病
- 口腔腫瘍
- 歯頚部吸収病巣
- 難治性口内炎
可能性が高いのは、歯周病だということがわかったにゃ!!
免疫力を下げないように体調管理をしっかりすること、子猫のうちから歯磨きをしてお口の中を清潔に保つことが、とても大切だって改めて思ったにゃ♪
歯の側面に沿わせて、指を奥まで入れて、奥歯をチェック。
奥歯の頬側面(外側)と歯頚部(歯と歯茎の間)をしっかりとみがく。
毎日みがくようにする。(最低でも歯石が形成される3日に1回は忘れずに)
食事面は、デンタルドライキャットフードを選ぶと良い。
愛猫に合った方法で、トラブルを未然に防いで、健康で充実した生活を送りましょう♪