ある日、段ボールに入れられた小さいメスの子猫を拾い、飼い始めました。迎えてから数か月経つのですが、最近早くも発情し始めてしまったようで、困っています。
夜中にひっきりなしに鳴いているし、小柄なのに声も大きいので苦痛で…ご近所さんに迷惑がられていないか、不安です。早くどうにかしないといけないと思うのですが、手術しかないのでしょうか?
このようなご質問をいただいたのですが、飼い主さんは本当に辛そうですね。
猫の発情期によって飼い主さんは寝不足になったり精神的に参ってしまったり、辛い思いをするかと思います。
猫の発情期はびっくりするほどひっきりなしに鳴くし、粗相はするし、落ち着きないし困ってしまいますよね。
ですが、猫も同じように辛い思いをしているんです。
発情期を迎えているのにも関わらず、交尾が出来ない状況は人間には想像もできないほどのストレスを感じています。
その辛い環境を打破するための、飼い主さんと猫の双方でストレスをなくす方法は、ただ一つ。
『去勢手術、避妊手術をすること』
子猫をたくさん産んでもらって、育てられる環境があるとしたら話は別ですが、そうではない場合は、手術という方法が一番良いとはっきりと言えます。
手術を受けさせるのは可哀想と感じる方もいるかもしれませんが、逆にそのままにして対処しない方が断然可哀想ですし、手術を受けることで得られるメリットの方が圧倒的に多いです。
今回はそんな発情期について詳しく説明していきますので、問題解決まで一緒に頑張っていきましょう!
猫の発情期、一番の解決策は『手術』
しかし、去勢手術や避妊手術はかわいそうとか、体への負担が心配、などもしかしたらマイナスなイメージを持たれている方もいらっしゃるかも知れませんね。
ですが、
- 手術をすることでのメリットが多い
- 発情期をそのまま放っておくことは飼い主にも猫にも苦痛
なんですよ。
想像してみてにゃ、「トイレに行きたいのに一生行ってはだめ!!漏らしてもダメ!!」と言われているのと同じなんだにゃ…拷問なんてもんじゃないにゃー
飼い主さんのストレスと猫のストレス、両方改善していくためにもまずは、『手術をすることが最善策』ということがわかりました。
さらに紐解いていくために、猫がどういったメカニズムで発情するのか、解説していきますね。
猫の発情が辛い理由は?時期とメカニズム
それでは、猫がどういったメカニズムで発情期を迎えるのか、説明していきましょう。
猫の発情期は2~4月の春と、6~8月の夏がピークとなります。そして、日照時間が14時間以上で発情期を迎える準備が整います。
これは、暖かくてエサの多い時期に子供を産むための動物学的習性によるものです。
じゃあ、メス猫を近寄せなければ、オスは発情しないんじゃないの?
そして発情期中のメス猫は大きな声で鳴いたり、スプレー行為をしたり、とにかく落ち着きがなく問題行動を繰り返す場合も少なくありません。
繰り返す理由は、1回目の発情期が来てから目的とする交尾を終えることが出来ないと、すぐにまた時期に関係なく発情が始まったりするためです。
人や犬など多くの哺乳類は『自然排卵動物』で一定期間の周期で排卵がありますよね。
猫に関しては交尾をした刺激で排卵をする『交尾排卵動物』なので、交尾をしないと排卵しません。
そして交尾をしたら高確率で妊娠をし、やがて発情期は治まりますが、産後にまたやってきます。
ウサギ・フェレット・ラッコ・コアラなどが当てはまります。
よってこれらの動物は生理がありません。
そうなると、猫は夜行性というのも追い打ちをかけて夜中もずっと泣き止まず、飼い主さんはとても辛い思いをしますよね。
しかも、暖かい暖房や照明がついている環境ですと、季節とは関係なく発情する回数も増える傾向があるんです。
手術をする際のメリットとデメリット
まずデメリットからご説明しますが、こちらはどれも解決方法があります。
3つのデメリット
去勢、避妊手術のデメリットは3つあります。
1.子孫繁栄が出来ない
手術をすれば、子孫繁栄はできません。
子供が作れなくて可哀想というのは、人間の勝手な価値観なのかもしれません。
【解決策】
飼うことのできない猫たちを増やしてしまうのを防げます。
2.手術による体への負担
オス猫もメス猫も、全身麻酔をして手術を行うので、当然体への負担はあります。
【解決策】
術後の飼い主さんのケアで、精神的ストレスから守ってあげることは可能。
3.費用がかかる
手術の費用の相場は15000円~30000円ほど。
去勢手術、避妊手術のための保険などはおそらくないと思われます。
【解決策】
市や自治体によっては、飼い猫でも一部助成金が出るところもあります。お住まいの市や自治体がどうかを事前に調べてみましょう。
5つのメリット
手術をする際のメリットは5つほどあります。
1.飼い主のストレス軽減
発情期の大きな鳴き声や、スプレー行為をなくすことが出来て、ストレスのない生活を送ることができます。
2.猫のストレス軽減
発情した猫は交尾を終えるまで、活発な発情行為はなくなりません。
子猫を迎える環境でない場合は、手術するということが適切な改善方法になります。
手術も出来ない、交尾も出来ないという状況は最大のストレスになります。
3.病気の心配が減る
メス猫の場合、避妊手術を受けることで、婦人系の病気を予防できることになり、その分寿命が延びる可能性も高くなります。
オス猫の場合、去勢手術を受けることで、前立線がんの発症率を低下させることが出来て、精巣腫瘍を予防することが出来ます。
4.性格が穏やかになる
手術を行うことで、ホルモンバランスの乱れを軽減でき、性格が穏やかになったり、子猫のような可愛らしさがいつまでも残ったりするのもメリットと言えるでしょう。
5.家のよごれや傷みを減らせる
家の壁などにおしっこをしてしまう『スプレー行為』。
オス猫だけでなく、メス猫もするのですが、壁が傷んでしまったり、なにより匂いがとても気になりますよね。
おしっこをしてしまった後にしっかりと掃除をしたり、予防のためのフィルムをしたりするしか対策がありませんが、手術をすることで行為自体なくすことが出来ます。
- 子孫繁栄が出来ない
- 手術による体への負担
- 費用がかかる
- 飼い主のストレス軽減
- 猫のストレス軽減
- 病気の心配が減る
- 性格が穏やかになる
- 家のよごれや傷みを減らせる
スプレー行為については、知りたい方はこちらをご覧ください。
おすすめしない方法
まず1つ目は、夜泣きをやめさせるために、マタタビを与えて気を紛らわせる方法です。
効果がほんの一時的にしか期待できないどころか、猫の体に負担がかかってしまうので、おすすめはできません。しかも、与え過ぎると呼吸困難を引き起こしてしまう可能性もあります。
そして2つ目は、メスの場合ですが、湿らせた綿棒で陰部を刺激するというやり方です。
こちらのような疑似交尾は効果が期待できるか定かでなく、専門家の間でも意見が分かれるそうです。粘膜を傷つけたりしてしまう恐れもあったり、素人が行うのは大変危険です。
以上の2つのやり方は、本能である発情期の行動を強制的にやめさせたりするもので、効果があったとしても一時的にしかなく、猫にとっても飼い主にとっても問題解決にはなりません。
去勢・避妊手術の注意点
手術をする際の注意点もありますので、知っておく必要がありますよ。
手術を受ける適切な時期
発情期が始まるとされる月齢は、メス猫は6か月~12か月(1才)ごろ、オス猫は早くて3か月ごろと言われています。
他の猫と関わりがあるかどうかや、生まれた季節、そしてまた短毛種に比べて長毛種が比較的遅めであったりとムラがありますが、発情期が始まる前に手術をするのが一番良い方法だと言えます。
怒らない
手術前の発情行動に対して、もちろん怒ってはいけません。余計に気が立って、攻撃的になったり、とてつもなくストレスになってしまいます。
また術後も、猫の個体差はありますが、だいたい半年から1年くらいは発情期と同じような行動をすることも。その行動は徐々に徐々に、時間とともになくなっていきます。
そのため長期戦ですが、落ち着くまでは決して怒ったりしてはいけません。
徐々にホルモンバランスが整い、大きな声で鳴いたりスプレーなどの発情行為は見られなくなりますので、愛猫の様子に合わせて、対応を考えてあげましょう。
手術直後のフォローは特に必要
みぽりんはずっと体を気にしてくれて、落ち着くまでぎゅーしてくれたんだにゃ~
言葉で伝えられないからこそ、態度で存分に気遣ったり精神的にもしっかりフォローをしてあげましょうね。
去勢・避妊手術までの段取り
予約
生後5~6か月から手術できる病院が多いと思いますので、近くの病院に問い合わせてみましょう。
病院のお話を伺うときに、術後につけるエリザベスカラーを使用するのか、縫う糸は吸収糸かどうかなど、病院によって様々ですので聞いておきましょう。
吸収糸とは、時間の経過(半年ほど)によって体内に吸収される糸の事。
抜糸の必要がなく、猫の負担が軽く済みます。
愛猫の負担にならないようにするために、詳しく聞いたり要望を伝えたりしてから手術をお願いして下さいね。
手術の流れ
内容としては、メスは卵巣のみの摘出の場合ですと、オスと同様に、2か所それぞれ1センチずつ切開します。
子宮摘出する方法も選べますが、傷口は大きくなり負担は多くなります。
- 前日19時ごろの夕食後から絶食をする。
- 手術当日は、絶水も加わる。
- 手術前に検査をして、麻酔が問題ないか確認。(※)
- 麻酔をかけてお腹の毛を刈る。
- 手術終了。その日は誤嚥を防ぐため、絶食が続きます。
※初診日や手術の数日前に検査する場合と、手術当日にする場合と病院によって異なります。手術前の血液検査については任意ですが受けることが一般的です。費用は4000円~10500円程度かかります。
手術当日の持ち物
- 手術費用
- 一泊入院するときは、キャットフードなど病院で指示されたもの
- いつものお気に入りのおもちゃやタオル
- キャリーバック
まとめ
猫の発情期の辛い困った行動には、去勢手術・避妊手術をすることが一番の策だということがわかりました。
手術のメリットとデメリットはこちら。
- 子孫繁栄が出来ない
- 手術による体への負担
- 費用がかかる
- 飼い主のストレス軽減
- 猫のストレス軽減
- 病気の心配が減る
- 性格が穏やかになる
- 家のよごれや傷みを減らせる
そして、発情中の問題を解決するために手術をする際の、大切なことを知って心構えを整えましょう。
- 手術の適切な時期は、発情が始まる前の6か月前後。
- 手術前も後も、猫に対して怒ったりせずに、発情行動が改善するまでは穏やかに対応する。
- 手術日の猫の精神的ケアをしっかりする。
- 愛猫の好きなグッズや落ち着くためのタオルなど普段から利用しておくと良い。
発情行動が完全に改善するまでは、日中の遊ぶ時間を増やした方が気が紛れますし、ストレス発散になりますよ。
また、夜は疲れて眠れるようになりますし、猫にとっても人間にとっても、健康的な生活習慣になります。
猫の発情期の辛い状況を改善して、お互いにストレスのない生活を手に入れましょう。