先日、友人が家に遊びに来ていたときのこと。わたしの愛猫「ゆね」のある行動で、友人をとても驚かせることが起きました。
それは、猫の「歯ぎしり」
猫を飼っていても、しない猫はしないので、見たことがないという人もいるかもしれません。わたしの友人も猫を飼っていますが、「初めて見た」と言って目を丸くしていました。
猫の歯ぎしりは、別名「チャタリング」や「クラッキング」とも呼ばれ、理由は病気だったり猫の本能だと言われたり、とってもさまざま。
今回は、初めて猫の歯ぎしりを見て驚いたという人や、原因が知りたいとお悩みの人に向けて、歯ぎしりをテーマにまとめました。
特に、老猫になってからの歯ぎしりは健康にも直結している猫からの「サイン」かも。まだ若い猫を飼っている飼い主さんにも、ぜひ最後まで読んでほしいです。
猫が歯ぎしりをする原因と対策
猫が歯ぎしりをする主な理由5つ
- 歯の生え変わり時期
- 口の中の病気
- ストレス
- 甘えたい
- 舌に絡まった毛が気になる
番号順に見ていきましょう。
1.歯の生え変わり時期
猫は、個体差はあるものの、一般的には生後3カ月~6カ月からが歯の生え変わり時期と言われています。そのため、乳歯がグラグラしてきたり、新しい歯が生えようとしている時は歯がムズムズするもの。
新しい歯が生えるまで、歯の噛み合わせが悪くなったり、口の中が何かと気になるこの時期は、歯ぎしりをよくするようになります。
子猫の場合で、歯ぎしりを頻繁にしている時は、歯の生え変わりがないかチェックしてみてください。
そして、この場合の歯ぎしりは、歯の生え変わりが終わると同時におさまる場合がほとんどのためご安心を。
2.口の中の病気
こんな場合は、口の中にトラブルがある可能性が。病気が隠れているサインかもしれません。
【代表的な口内トラブルと症状】
病名 | 症状 |
|
|
口の中の病気は、症状が共通しているものが多いため、少しでもこの症状に当てはまる時は早急に動物病院を受診するようにしましょう。
特に、歯周病菌は口の中以外にも、細菌が血流にのって体全体に行き渡ってしまい、心臓・腎臓・肝臓などで病気を引き起こす原因に。
また、猫の口内炎は人間のものとは比べ物にならないほどに激痛だと言われています。そのため、痛さのあまり餌を食べたがらなかったり、いつもと食べる時のしぐさが違う場合が。
3.ストレス
環境の変化に弱い猫は、ストレスが溜まると歯ぎしりをする場合が。人間でも疲れが溜まっていると、寝てる時に歯ぎしりしちゃう人っていますよね。
猫は言葉が話せないため、飼い主さんに不満を訴える手段として歯ぎしりをしているんです。
猫によってストレスの種類もさまざまですが、よくあるストレスの原因と対処法について表にまとめました。
【ストレスの原因・対処法】
ストレスの原因 | 対処法 |
引っ越しによる環境の変化 | できるだけ新しい家に早くなじめるよう、お気に入りのマットやおもちゃで安心させてあげる |
部屋が暑すぎる・寒すぎる | 猫が快適に感じる気温は、25℃~28度ぐらいのため、留守の時もエアコンなどで室内温度を管理してあげる |
トイレが汚い | 猫は臭いに敏感なため、消臭スプレーなどを使ってこまめに掃除する |
その他にも、おやつが欲しくて「カチカチ」歯ぎしりして飼い主さんの気を引こうとしている場合も。一度でもおやつが貰えたら、「おやつが貰える方法」として、歯を鳴らすようになる猫もいます。
催促されるがままに、おやつをあげてしまうと歯ぎしりがクセになる場合も。こちらが反応しなければ、そのうちおさまるため様子を見ましょう。
ストレスで歯ぎしりをしている場合は、他のストレス行為も併せて見られる場合がほとんど。歯ぎしり以外にもこんな行動はないか、振り返ってみましょう。
- 毛づくろいを過剰に行っている
- 食欲がない
- いつもと違う場所でオシッコをしてしまう など
ストレスが溜まらないように、日ごろからおもちゃなどでストレス解消できると良いですよね。
最近では、お留守番する時間にも猫に楽しんでもらえるこんなグッズも。お仕事で家を留守にしがちという人は、試す価値ありです。
4.甘えたい
飼い主さんにかまってほしいときや、甘えたい時に歯ぎしりをする場合があります。
特に、同居人が増えたり(赤ちゃんが生まれた)、新しく犬や猫を飼い始めたという場合は「甘えたい」という気持ちが強い表れということも。
もっとかまってほしくて「シャリシャリ」や「カチカチ」といった音を鳴らして飼い主さんの気を引こうとします。
この項目を読んで思い当たる節がある人は、今すぐ猫ちゃんをギュッと抱きしめてナデナデタイムを満喫してください。
5.舌に絡まった毛が気になる
猫は定期的にグルーミング(毛づくろい)をして、自分の毛をメンテナンスすることはもう知っている人も多いと思います。
ただ、毛が長いほど舌によく絡まってしまうため、口の中に違和感を感じてしまい、歯ぎしりをするということがあります。
そのため、飼い主さんがこまめにブラッシングしてあげるようにしましょう。それだけで、猫がグルーミングをした時に抜ける毛の量を、グンと減らすことができます。
他にも、歯に挟まった餌が気になるあまりに「カチカチ」「ギリギリ」と歯ぎしりをすることも。こういう歯ぎしりを防ぐためにも、猫の「歯磨き」ってとっても重要なんです。
老猫の歯がギシギシ鳴る場合
こんな風に、食事中に老猫の歯が「ギシギシ」鳴っているのは、健康に深刻な問題が起きている場合が多いと言われています。
わたしが昔飼っていた猫「しゅり」も、15歳ぐらいのとき、ご飯タイムに突然「ギシギシ」と歯ぎしりをするように。
気になったのですぐに病院に連れて行ったところ、歯石が少しついているとはいえ歯そのものに問題はなく、慢性腎不全が影響していると言われました。
お医者さんによると、腎不全になると口の中が渇きやすくなってしまい、歯が擦れ合って「ギシギシ」という音が鳴りやすくなるとのこと。
猫は腎臓の病気にかかりやすいと言われているため、老猫になってから歯ぎしりが激しくなったと感じた場合は要注意。症状がかなり進行しているケースがあるので、すぐに病院に行くようにしてください。
また、食欲が落ちているようであれば、餌を食べやすくしてあげるために工夫が必要。わたしは餌をチキンスープでふやかして与えたり、餌皿からではなく直接手からあげるなどして、どうにかご飯を食べさせていました。
- 老猫が歯を「ギシギシ」する時は病院へ
- 原因は歯ではなく腎臓の病気かも
- 餌は食べやすいように最大限工夫を
対策不可能?猫のチャタリング
上の項目でお伝えした、猫が歯ぎしりをする理由5つ以外にも、猫が「シャリシャリ」と歯を鳴らす場合があります。
今から説明する理由の場合は、歯ぎしりという言い方よりも「チャタリング」や「クラッキング」などという言い方をします。
【チャタリングとは?】
英語の「Chatt(チャット)=簡単なおしゃべり」が語源。短く「カカカ」「ケケケ」などと鳴く声は、猫がおしゃべりしている様に見えることから使われる。
【クラッキングとは?】
「クラッキング=機械がカチカチ・カタカタと動く」という意味を持つことから、猫が歯を「カチカチ」と打ち鳴らす音をクラッキングという。
【猫がチャタリング(クラッキング)をする理由】
- 獲物を見つけて興奮している
- 見たことのないものを見つけて警戒している
- 獲物の鳴きマネをしている
猫によって理由はさまざまですが、これらの理由のように猫の本能から歯を鳴らしている場合がほとんど。
1.獲物を見つけて興奮している
わたしの愛猫「ゆね」のチャタリングに友人が驚いた時のシチュエーションはこうでした。
「ゆね」が窓際でボンヤリ外を眺めている時、突然歯を「シャリシャリ」「カチカチッ」と鳴らし始めました。
恐らく、窓から見える木の上に止まっている鳥を見て、獲物だと本能が感じ取ったんでしょう。「ゆね」の場所からじゃ獲物を見つけても捕まえられないため、その苛立ちや興奮が歯ぎしりとなって表れたんです。
2.見たことのないものを見つけて警戒している
猫がこれまでに見たことのない、正体の知れないものを見つけたとき、警戒をする意味でチャタリングをする場合があります。
例えば、先日わたしが家の中で手鏡を見ていたときのこと。ちょうど外の光が鏡に反射し、天井に白く明るい光が映ったことがありました。
それを見た瞬間、「ゆね」は「シャリシャリ」「カカカカッ」と天井を見上げながら早速チャタリング開始。どうやら光の正体が分からずに、怖がっていた様子。姿勢を低くして、狭いところに逃げながら警戒態勢でした。
3.獲物の鳴きマネをしている
あくまで一説なので、猫の本当の心情までは分かりませんが、猫は獲物を見つけて警戒している訳ではなく、単純に獲物の「鳴きマネ」をしているだけという説もあります。
また、今みたいな”ぼうちゃん”と”たろう”の掛け合いのように、多頭飼いの場合、他の猫につられてチャタリングしている場合も。
多頭飼いの人は、猫同士でよく「ミャー」などと言い合っているのを見たことがあるかもしれませんが、この場合は歯をカチカチと鳴らしているわけではないため、チャタリングとは呼びません。
また、チャタリングをする猫は、実は「飼い猫」だけなんです。
野生の猫は、相手に居場所を知らせることにもなるため「チャタリング」は滅多にしません。野生の猫でチャタリングをする猫というと、獲物を見つけて興奮を抑えられない幼い猫(子猫)が行うと言われています。
猫のクラッキングは幽霊との会話…?
ここからは、ちょっと番外編。本当かどうか定かではありませんが、一説では猫って「霊感が強い」動物だと言われているんです。
例えばこんな愛猫の行動に、「えっ」と思ったことはありませんか。
- 天井を見ながら「カチカチカチ」とクラッキングをする
- 何もないところをジッと見る
- 何もないところに威嚇(いかく)する
わたしは猫を飼い始めたばかりの頃、猫の不思議な行動を見るたびに幽霊か何かがいるのかと思って、心臓がドキドキバクバクした記憶があります。(笑)
ただ、これらの行動は全てちゃんとした理由が。ドキドキバクバク怖がらなくても良かったんです。
猫の謎行動を解明
猫は人間の何倍も優れた聴覚・嗅覚を持ち合わせています。そのため、20mも遠く離れたネズミの足音を聞き取れると言われているほど。
つまり、家の中にいてもわたし達には聞こえないような外の音や、お隣さんの家の音が猫には聞こえているんです。
また、優れた嗅覚でわたし達には感知できないような匂いも嗅ぎ取って、突然威嚇(いかく)したり警戒するような行動を取ったりもします。
【猫の苦手なニオイ】
- スパイス類
- メントール・ハーブ類
- 柑橘類
- 他の動物のニオイ
そう考えると、猫ってとっても敏感な世界で生きていますよね。
なぜ霊感が強いと言われるのか
ではそもそも、どうして猫は「霊感が強い」などと言われるようになってしまったんでしょう。諸説ありますが、昔から猫にまつわる「怪異」が多いことから、今もそのように言われているのかもしれません。
怪異その①「猫又(ねこまた)」
尾の先が二股に分かれている猫の妖怪。年をとった飼い猫が変化した妖怪で、人に呪いをかけるとき、猫がまたいで呪いをかけるから、猫又(猫またぎ)という。
人の言葉を理解し話をすることができる。踊り好きで、手ぬぐいをかぶり仲間を誘って踊りに出掛ける民話が多く残されている。
人を喰い殺して、その人に成り代わることもある。
出典:ORIGAMI、猫の妖怪『猫にまつわる怪異と伝承・迷信』化猫、猫又、猫神など
怪異その②「金花猫(きんかねこ)」
栃木県塩谷郡藤原町独鈷沢には、「金花猫大明神」という供養塔がある。
江戸時代、会津西街道を行く参勤交代の大名行列が独鈷沢を通りかかった時、殿様の駕籠を横切った猫を無礼打ちにした。猫は尾も真っ二つに切り裂かれ絶命。死体から流れ出たおびただしい血は小沢を赤く染めた、と伝えられる。
江戸へ着いた殿様は、原因不明の高熱にうなされ重篤状態が続いた。祈祷師にみてもらったところ、猫の祟りであることが判明。独鈷沢に供養塔を建立しねんごろに弔った、と言われている
出典:ORIGAMI、猫の妖怪『猫にまつわる怪異と伝承・迷信』化猫、猫又、猫神など
怪異その③「金華猫(きんかびょう)」
金華猫は自在に変化ができ、その目的は人間を惑わすことです。女性に会うと美男に、男性に遇うと美女に変化して魅了してしまいます。金華猫は人の家に侵入する事があります。家の中に入るとまずは水桶の中に小便をします。人々がこの水桶の水を飲むと、金華猫の姿が見えなくなると言います。そしてこの猫の禍に遭ってしまった者の身体は段々衰弱し、最後には病に臥せり起き上がれなくなります。
出典:プロメテウス、金華猫(きんかびょう jin1hua2mao1 ジンフアマオ)
これらはあくまで古くからの言い伝え。猫がよく妖怪として登場するようになってしまった理由としては、猫が本来持っている性質に由来しているためだと言われています。
- 夜行性で目が鋭く光る
- 瞳(虹彩)のかたちが変わる
- 足音を立てずに歩ける
- 爪が鋭く足が器用
などなど、とても魅惑的なキャラクターのためだとも言えますね。猫が本当に幽霊が見えるのか、昔話は本当なのかは誰にも分かりませんが、物語の一つとしては面白いかも。
まとめ
【猫が歯ぎしりをする理由5つ・その対処法】
原因 | 対策 |
歯の生え変わり時期 | 生え変わるまで様子を見る。ひどい場合は病院で相談してみる。 |
口の中の病気 | 口臭が強い・ご飯を食べたがらない・よだれが多いなどの症状がある場合はすぐに病院を受診する。 |
ストレス | 最近猫の周りに環境の変化がなかったかどうか、ストレスの原因を解消してあげる。 |
甘えたい | 猫とのスキンシップ時間を増やして、甘やかしてあげる。 |
舌に絡まった毛が気になる | 口の中をチェックしてあげる。毛づくろいの時、抜ける毛を減らすためにも日ごろからブラッシングをこまめにする。 |
そして、何よりも注意してほしいのが、食事中に老猫の歯が「ギシギシ」とよく鳴る場合。これには、健康に大きな問題が隠れているサインかもしれません。
口の中のトラブルだけが原因ではなく、腎臓などの臓器が弱っている可能性が高いため、早急に動物病院で診てもらうようにしましょう。
これらの原因とは別で、猫が歯を「シャリシャリ」「カチカチ」と鳴らすのは、猫の「チャタリング」または「クラッキング」と呼ばれる行動。飼い猫に多く見られますが、全ての猫がする訳ではありません。
【猫がチャタリング(クラッキング)をする理由】
- 獲物を見つけて興奮している
- 見たことのないものを見つけて警戒している
- 獲物の鳴きマネをしている
また、今まで歯ぎしりなんてしなかったのに、愛猫が突然チャタリング(クラッキング)を始めたという場合は、幽霊でも見えているんじゃないかと怖く感じるかもしれません。
でもそれは、猫の鋭い嗅覚や聴覚のせいであり、幽霊が必ず見えているというわけではないんです。わたし達には感じ取れない些細な音やニオイにも、猫は反応しているということ。
動物って予想外の行動を取りますが、そこがまた一緒に暮らす上で楽しいところですよね。みなさんも、愛猫ちゃんの色んな表情を知りながら、猫ライフを楽しんでくださいね。