突然ですが、先日保護猫を目にする機会がありました。保護猫ボランティアをしている知人を訪ねた時のことです。
保護されて間もないその猫は、やせ細り骨が浮き出ているほどでした。また、お腹からお尻にかけての毛はほとんど抜けてない状態。
とても痛々しい様子でしたが、保護されてから少しずつ食事を取るようになり回復傾向にあるのだとか。
それを聞いて一安心したものの、どうして毛まで抜けてしまっているのか気になり、知人に尋ねると「猫の栄養失調は、毛が抜けてしまったり毛ヅヤが悪くなったりする」とのこと。
栄養失調ってなんとなくやせ細るイメージはありましたが、猫の毛にも影響が出るとは驚き。そしてさらに驚きなことを聞きました。
「飼い猫でも栄養失調になることはあるから気を付けて」
飼い猫だと毎日必ず餌は貰えるし、なかなか栄養不足にはならなさそうなのに、どういうことか気になりますよね。
今回は、知人に教えてもらった猫の栄養に関する知識を始めとし、猫の栄養失調を防ぐ方法についてご紹介していきます。
猫の栄養失調とは?注意すべき症状
人間でも、栄養が偏っていると体に不調が出ますが、猫もそれは同じ。猫の栄養失調とは、どんな状態を言うのでしょうか。その症状を説明していきます。
1.体重が減る
栄養失調の猫で、丸々と太っている猫はそうそう見ないですよね。栄養が不足しているため、必要なエネルギーが足りず筋肉量もどんどん落ちていき、体重が減っていきます。
歩くときの様子も、フラフラよろよろ、力のない歩き方に。
2.抜け毛がひどくなる・毛並みが悪くなる
人でも栄養に偏りがあると体に不調をきたすように、猫も栄養バランスが乱れることによって、異常に毛が抜けるようになったり、毛ヅヤや毛並みが悪くなります。
毛を触ったときも、柔らかい感触ではなくパサパサごわごわとした手触りに。また、ストレスから毛づくろいを過剰にすることにより、余計に毛が抜けやすくなると言われています。
3.成長が止まる
成長時期の子猫が栄養不足になってしまうと、体の機能がきちんと発達しない成長障害をもたらす恐れがあります。そのせいで病気になりやすくなってしまったり、体も十分に大きくならなかったり。
また、妊娠中の猫は母猫が栄養失調になってしまうと、生まれてくる子猫も低体重で生まれてくるなど、子猫の発育に悪影響を及ぼします。わたしたち人間の場合で考えても、同じことなので想像しやすいでしょう。
子猫が元気に生まれて育つためにも、妊娠期や授乳期は特にバランスの良い食事管理が大切。妊娠期・授乳期に必要な栄養素については、次の項目で詳しく説明していきます。
では、ここまでをおさらい。
- 体重が減る
- 抜け毛がひどくなる・毛並みが悪くなる
- 成長が止まる
猫が栄養失調になる原因
実は本当なんです。この記事を読んでいる人の中にも、様子がおかしいので病院に行ったら栄養失調と診断されてしまった、という経験がある人はいるかもしれません。
一体どうしてそんなことが起きるのでしょうか。
食欲不振からくる栄養の偏り
飼い猫の場合でも、餌の食いつきが途端に悪くなってしまい、栄養が不足しがちな状態が続くことから栄養失調になる場合があります。
どうして食欲がなくなってしまうのかというと、原因は様々ですが大きく次の3つが理由として考えられます。
- 病気によるもの
- ストレスによるもの
- 老化によるもの
1.病気によるもの
食事の量が減った場合,あるいは全く食事をとらなくなることが,食欲不振です.全く食べない場合は「食欲廃絶」とも呼ばれます.病気の中には,異常に食欲が高まるもの,食べても食べても痩せるものなどもありますが,これら特殊なものを除いて,ほとんどの病気で食欲不振が起こります.
出典:一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム、猫の病気(食欲不振)
上記にも記載があるように、食欲不振は病気が隠れている場合が多いです。そのため、まずは病気の可能性を疑いましょう。
食欲不振を引き起こす病気は、慢性胃炎・急性肝炎・猫白血病ウイルス感染症・口内炎など様々。
また、この時間を超えてご飯を食べない状態が続くと、猫の肝臓機能に問題が発生すると言われています。
生後三か月ほどの子猫 | 12時間 |
生後半年頃 | 16時間 |
1歳以上 | 24時間 |
人間なら、数日間ご飯を食べなくてもすぐに生死に関わることはありませんが、猫の場合は命の危険があります。素人判断で様子を見たりせず、すぐに動物病院へ連れて行ってあげましょう。
2.ストレスによるもの
病気以外の理由で考えられるものは、ストレス。猫は環境の変化などに強いストレスを感じやすいと言われ、そのストレスは食欲にまで影響を与えるほど。
【代表的なストレスの原因】
- 引っ越しによる環境の変化
- 部屋が暑すぎる・寒すぎる
- トイレが汚い
これらが原因であれば、ストレスの種類別に対処法を考えてあげる必要があります。
3.老化によるもの
人間でも、歳を重ねるごとに若い頃のようにご飯が食べられなくなってきますよね。噛む力も衰えることから、食べられる種類も変わり、それによって好みまで変わってきたり。
老猫も同じように考えてあげると、若い成猫と同じような餌をあげ続けることは、あまり良いこととは言えません。
餌を食べるのがしんどくなって、徐々に食べる量が減り、気づいたときには栄養失調になっているということも。
あなたの猫ちゃんが、シニア猫に差し掛かる年齢であれば、この機会に餌を見直してあげてください。
ちなみに、猫は一般的に「7歳以上」がシニアと呼ばれる年代になります。この頃から、徐々に老化が始まっていくと考えて良いでしょう。
他にも、食欲不振について詳しく知りたければ次の記事を参考にしてみてください。
https://www.shiawasegift.com/catfood-kuitsukiwarui/
手作り餌は栄養が不足しやすい?
市販のフードを食べさせている場合、各キャットフードメーカーが猫が生きていく上で必要な栄養成分の研究を重ねて作った、総合栄養食さえきちんと食べていれば、まず栄養失調になることはないと言われています。
ですが、「なるべく体に優しいものを食べさせたい」という思いから、猫の餌を手作りであげている人もいることでしょう。
しかし、手作り餌は、きちんと猫に必要な栄養成分についての知識がないまま作ってしまうと、猫に必要な栄養素が不足してしまい、栄養失調の原因となってしまいます。
せっかく愛情を込めて作った餌が、栄養失調の原因になるなんて本末転倒。手作り餌に興味がある人は、正しい知識をこの記事で確認しましょう。
栄養失調の原因は、次の2つでした。
- 食欲不振からくる栄養の偏り
- 手作り餌による栄養の偏り
猫の栄養不足を防ぐには
猫の栄養不足を防ぐには、どんな栄養素が猫にとって必要かきちんとした知識が必要です。
1.猫に必要な栄養成分を知る
猫が生きていく上で、必要な栄養成分を一覧にまとめました。
栄養成分 | 特徴・働き |
たんぱく質 |
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脂肪 |
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ミネラル |
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ビタミン |
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水 |
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これらのバランスを考えて、キャットフード会社は猫の餌を作っています。そのため、わたし達にできることは、より栄養バランスの整ったキャットフード選び。手作り餌であれば、これらのバランスをきちんと考えてあげる必要があります。
他のフードと比べて極端に安価なキャットフードは、炭水化物で量を増やしており、栄養バランスが整っていないフードが多いため、できるだけ避けましょう。
妊娠期・授乳期の猫に必要な栄養は?
妊娠期・授乳期の猫ちゃんを飼っている人は、こちらを参考に食事の栄養バランスを見直してあげましょう。
妊娠期 |
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授乳期 |
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(※1)ルテイン…抗酸化作用や、免疫を作る栄養分
(※2)EPA・DHA…オメガ3系脂肪酸と呼ばれ、体組織が発達する際に大切な栄養素
【妊娠期】
妊娠期間の平均63~66日を通じて一定して体重が増える。妊娠40日目までに、妊娠後期と授乳期に必要なエネルギーを蓄える。
【授乳期】
たんぱく質・脂肪を多く含む母乳を、体重の1.5~2倍作る。よって、通常の2~3倍のエネルギーが必要。
栄養バランスの整った食事をする
きちんと餌を食べるだけでなく、栄養バランスの整った食事がとれていることが大切。猫に必要な栄養成分が分かったら、バランスの良い食事を準備してあげましょう。
栄養バランスを整えるためには、猫が一日にどれくらいの餌を食べているか、しっかり量を測ることも大切です。一日の摂取カロリーがオーバーしていないか、または不足していないかなど、飼い主さんが管理してあげなくてはいけません。
また、猫の成長度別に、必要とする栄養の量やバランスは変わってきます。年齢ごとに必要な栄養バランスを考えながら、餌をあげるのはちょっと難しそうでもありますよね。
そこで便利なのが、年齢に合ったキャットフード。子猫のときは、子猫用のキャットフード(総合栄養食)をあげていれば、子猫に必要な栄養素はきちんとカバーすることができる、ということです。
ドライフードの場合、猫の成長度別に栄養バランスがうまく配合されている「総合栄養食」のキャットフードを選んであげてください。
ドライフードは元々「総合栄養食」のキャットフードが多いですが、その他缶詰などのウェットフードは、「一般食」「副食」と呼ばれるものが多いので、表示確認は必ず行いましょう。
- 総合栄養食…栄養価の整った主食になるもの(ご飯とおかず)
- 一般食…総合栄養食のサブ的な役割(おかずのみ)
- 間食…ご褒美やご飯までの合間に食べるもの(おやつ)
2.ストレスを溜めない
ストレスが原因で食欲不振となり、餌を食べる頻度にムラが出たりして栄養が偏ってしまう場合は少なくありません。
そういった危険性を少しでも減らすために、ストレスの原因を対処していく必要があります。ここでは、原因別の対処法を一挙公開。
ストレスの原因 | 対処法 |
引っ越しによる環境の変化 | できるだけ新しい家に早く馴染めるよう、お気に入りのマットやおもちゃで安心させてあげる |
部屋が暑すぎる・寒すぎる | 猫が快適に感じる気温は、25℃~28度ぐらいのため、留守の時もエアコンなどで室内温度を管理してあげる |
トイレが汚い | 猫は臭いに敏感なため、消臭スプレーなどを使ってこまめに掃除する |
猫は環境の変化に弱い動物と言われています。特に、いつもの寝床が変わってしまっていたりすると、強いストレスを受けるため、寝る場所はいつも決まった通りにしておいてあげましょう。
気温の変化にも敏感なため、夏は熱中症や、冬は寒くて風邪を引いてしまわないように管理してあげることも、飼い主さんの役目と言えます。
また、猫は特に嗅覚が優れているため、餌皿の周りやトイレなどは、常に綺麗に保ってあげましょう。そうすることで、猫も日々ストレスを溜めることなく過ごしてくれるはず。
わたしも日々使っていますが、猫のおしっこの臭いを消してくれるような消臭スプレーは、一つあるととっても万能ですよ。
3.定期的に健康診断を受ける
猫にも、人間のように健康診断があります。動物病院によると思いますが、価格は大体5,000円~10,000円ほどで受診が可能。栄養失調は、血液検査で分かります。
- 1歳未満の子猫…毎月受診
- 1歳~6歳の成猫…一年に1回
- 7歳~…一年に2~3回
猫の年齢によっても、検査項目は変わってきますので、それによって価格も変わります。かかりつけの病院で一度問い合わせてみてくださいね。
では、栄養失調を防ぐ方法のおさらいです。
- 猫に必要な栄養成分を知る
- ストレスを溜めない
- 定期的に健康診断を受ける
猫の栄養失調は毛に影響する
最初にもお伝えしましたが、猫が栄養失調になると、皮膚や毛へも栄養が行き届かないことから、毛が異常に抜けたり毛ヅヤが悪くなりパサパサに。
美しい毛・皮膚を保つために
猫の美しい毛並み・健康な皮膚を保つためには、適度な脂肪分の摂取が欠かせません。わたしたちも、全く油分を取らない生活を続けていくと、肌や髪がパサパサしてくるのと同じ仕組みです。
また、毛や皮膚は”ケラチン”と呼ばれるタンパク質の一種から作られているため、食事から多くのたんぱく質を摂ることもとっても大切なんです。
適度な脂肪とたんぱく質が不足すると、毛が抜けたり皮膚の健康が失われる
また、猫は強いストレスを感じると、食欲が落ちると同時に過度な「毛づくろい」をするようになります。毛づくろいは、綺麗好きの猫が自身のメンテナンスとして行うのは、みなさん知っていますよね。
ただ、猫は気分を落ち着かせたい時にもこの毛づくろいを頻繁にすると言われています。そのため、しょっちゅう毛づくろいをしている姿を見かけたら、過剰に行っていないか注意して見てあげましょう。
こう感じたら、要注意です。ストレスが溜まっているかもしれないので、一度動物病院で相談してみると良いでしょう。
まとめ
【栄養失調の症状】
- 体重が減る
- 抜け毛がひどくなる・毛並みが悪くなる
- 成長が止まる
原因としては、食欲不振などできちんとした食事が摂れていないことによって、飼い猫でも栄養失調になってしまうことがあります。また、手作り餌も猫に必要な栄養素の知識がないまま作ってしまうと、栄養バランスが乱れて栄養不足の原因に。
【栄養不足の防ぎ方】
- 猫に必要な栄養成分を知る
- ストレスを溜めない
- 定期的に健康診断を受ける
特に、「たんぱく質」と「適度な脂肪」が足りていないと、猫の毛や皮膚にも影響が出てしまい、毛が抜けてしまったり本来ふわふわの毛並みがパサパサになってしまいます。
どれだけ良い餌を与えていても、それを猫がきちんと食べてくれないと栄養失調になる可能性は、どの猫にもあると言えます。