猫を飼っている方なら、誰でも一度は経験のあるキャットフード選び。
お店にずらりと並ぶフードを見ていると、パッケージの見た目が似ているので、猫用と犬用、うっかり間違えそうになったという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
また、犬と一緒に室内で猫を飼っている方は、「猫がドッグフードを盗み食いしてる!」という現場を目撃して、叱ったことはないですか。
ご飯をとられてしまったわんちゃんも可哀想だけど、ドッグフードを食べてしまった猫ちゃんのからだに問題はないのか、とても心配になりますよね。
一体ドッグフードとキャットフードって何が違うの。
見た目がそんなに変わらないからといって、猫が犬の餌を食べるのはとても危険です。猫に必要不可欠な栄養素が含まれない犬の餌を食べるのは、実は猫にとって死活問題なのです。
今回は猫がキャットフードじゃないとダメな理由と、一緒に飼っている場合でも、猫が誤って犬の餌を食べない様にする対策をご紹介します。
犬の餌と猫の関係について知り、猫ちゃんの健康を守りましょう。
猫にドッグフードはダメ!
結論から言うと、猫にドックフードを与えるのはダメです。
犬と猫は完全に違う動物なので、犬用に作られた餌を猫が食べることはできないし、反対に犬もキャットフードを食べてはいけません。
1回盗み食いしてしまった程度なら問題はありませんが、長期的に食べ続けると、恐ろしい病気を引き起こす可能性もあるのです。
なぜ猫が犬の餌を食べると危険なのか、餌の違いを知るとよくわかります。ドッグフードとキャットフードについて、次の3点で違いを見比べていきます。
- 原材料はなにか
- 栄養について
- 味付けについて
原材料はなあに?
ドッグフードとキャットフード、どちらも主原料は肉類ですが、その割合と、その他の穀物の配合が違います。
キャットフードのほうが肉や魚がたくさん含まれていて、ドッグフードにはとうもろこしや豆など、コストの低い穀物が多く配合されています。
猫は穀物を消化するのが苦手なので、原材料の観点からしても犬用の餌を与えることはできません。
特に安価なドッグフードは、穀物の割合が肉類より多いものもあります。猫が犬の餌を食べた場合、猫は消化不良を起こし、ひどいときは吐き戻してしまいます。
栄養価のちがい
猫は肉食動物です。そのため、雑食の犬よりも、多くの肉(タンパク質)を餌から摂らなくてはなりません。また、より多くのタンパク質が必要な理由として、猫の体のつくりも関係しています。
タンパク質と猫の体についての、詳しい説明がこちらです。
なぜ蛋白質でも、動物性蛋白質が必要なのかと言う理由は、猫は食物の蛋白質をアミノ酸に分解して、エネルギーとして利用しますが、前記した必要な22個のアミノ酸をすべて作ることはできません。
動物性蛋白質は、植物性蛋白質にはないビタミン、アミノ酸、脂肪酸を提供します。猫は多くのアミノ酸やビタミンを合成する能力がない(犬や人は出来る)ため、これらの栄養素は動物性蛋白質に完全に依存しています。
この説明からは、なぜ猫にたくさんのタンパク質が必要かがわかります。
栄養素を体内で合成できない猫は、完全な肉食になることでしか、生きていくことができないからです。
一方の犬ですが、人と同じように、体内で栄養素を合成する能力があるため、雑食になっていることがわかります。
味付けのちがい
猫の餌は、犬の餌と違って味や香りが濃く、食いつきがよくなるようにおいしくできています。
猫が味の薄いドッグフードを食べてしまうと、栄養がきちんと取れないだけでなく、「ごはんはあまり美味しくない」と思って食欲が落ちてしまう可能性も。
もし猫ちゃんが好き嫌いしてしまった場合、私たち飼い主にも負担がかかりますよね。
「きちんと栄養のあるものをあげたいのに、食べてくれない」や、「別のフードに変えたほうがいいかな」と悩んだり。
好き嫌いは、猫ちゃんも飼い主さんもお互いストレスになってしまうので、犬には犬用、猫には猫用。すごく当たり前のことですが、味の観点からも、とても大切だと実感しました。
おいしいキャットフードで、常に猫ちゃんを喜ばせてあげましょう。
「タウリン」不足は危険
キャットフードについて調べたことがある方は、一度は目にしたことがあるであろう、この「タウリン」。いつもは「なんか難しそうだな」とスルーしていた飼い主さん必見です。
なぜそんなに「タウリン」は重要なのか、解説します。
タウリンとは、簡単にいうと「アミノ酸の一種」です。厳密にはアミノ酸ではないのですが、似た成分をもっているため「アミノ酸の一種」と呼ばれているようです。
人にも必要な成分で、細胞を健康に保ったり、血圧の上昇を降下させてくれたりととても重要なものです。
人間はこのタウリンを体内で合成することもできます。
栄養の補助として飲まれる、チオビタドリンクやリポビタンDやなどの有名な栄養ドリンクには、主成分となって配合されています。
余談ですがわたしはちょうど昨日飲みました。
また、目の健康のためにも大切な成分で、目薬に使われることもあります。
しかし、猫はこのタウリンを体内でつくることができません。
もちろん猫にとっても重要な栄養素なので、外から摂取する必要があります。
ネコはタウリンを合成する酵素を持っていないため、ネコにとっての重要な栄養素といえる。このためキャットフードにはタウリンの含有量を明記したものが多い。
このように、体内で合成できない猫のために、キャットフードにはふんだんに「タウリン」が配合されています。ドッグフードとの一番大きな違いはここになります。
タウリンの不足によって引き起こされる病気は
- 目の病気
- 心臓の病気
などがあげられます。ひとつずつ解説していきます。
目の病気
まず一般的に有名なのは、目の病気です。病名は進行性網膜萎縮症。
進行性網膜萎縮症とは、眼の奥にある網膜が薄くなり、視力が徐々に落ちる病気です。
最近目が見えにくいよ、と猫ちゃんが教えてくれるはずはないので、気づいた時にはかなり悪くなってしまっていたということになりかねません。
最悪の場合失明してしまうリスクもあります。
ねこじゃらしに飛びつく姿、見つけたらかけよってくる姿、じっとこちらをみつめるつぶらな瞳。
あなたのかわいい猫ちゃんが、もうわたしのことが見えていない、なんて思うとあまりにも悲しいですよね。
キャットフードをしっかりあげることで、あなたの猫ちゃんの目を守りましょう。
心臓の病気
続いて、心臓の病気。正式な名前は、拡張型心筋症です。
拡張型心筋症とは、血液を循環させるポンプがうまく機能せず、血液循環が悪くなります。最悪の場合、突然死を起こすことも。
この病気の症状は、呼吸が荒かったり、食欲がなかったりなど、普段の生活をよく観察していないと見抜きにくいものです。
また、猫が突然死してからこの病気だったと気づくというケースもあり、とても怖いです。
死んでしまっては、何も対策してあげられなかったことを悔やむことしかできません。ペットの死って本当に人生が変わるくらいつらい出来事ですよね。
わたしも、昔ペットの死を経験し、絶対に同じ後悔をしたくない!と誓って今の猫ちゃんとの毎日を大切に生きています。
昔はタウリン不足=心筋症ということがあまり知られておらず、この病気で亡くなってしまう猫ちゃんが多かったようです。
現在ではキャットフードに必ず含まれるようになったため、タウリン不足によって亡くなる猫ちゃんはかなり減ったとか。
キャットフードひとつで突然死を防ぐことができるなら、絶対にきちんとあげたいですよね。
とりすぎはOK
いくら体にいいといっても、なんでも摂りすぎはよくないのでは、と思っている方も多いと思います。
実はタウリンは過剰摂取しても大丈夫なのです。体に必要な分だけを摂取して、いらなくなったら尿に混ざって体の外にでるようになっています。
多すぎるより、足りないほうが危険なのでたくさん与えてあげられるようにキャットフードを選んでくださいね。
犬と猫、一緒に飼っているときは「別々」で!
ここまでで、猫と犬の餌がまったく違うこと、お互いに食べると危険だということがわかりました。
でも、もうすでに猫と犬を一緒に飼っている方もいるでしょう。
今までずっと仲良く暮らしてきた猫ちゃん・ワンちゃんがこれからも一緒に過ごしていくには餌の環境を分けてあげるのが大切です。具体的な方法を紹介します。
場所をわける
まず、一番簡単なのは、餌をあげるときの場所を分ける方法です。別々の部屋に連れて行ったり、どちらかをゲージにいれたり、という感じです。
犬も猫もお部屋で放し飼いだと、盗み食いしても気が付かないことがあります。
原因不明の体調不良ほど焦っちゃうものはないですよね。物理的に、お互いの餌を食べられないように場所を分けるのは、簡単でとっても良い手段です。
また、犬・猫それぞれ専用の餌入れをつくり、これはあなたのもの!と覚えてもらいましょう。
時間を分ける
餌の時間を分けるのもいい方法です。
猫は犬のように「待て」ができないし、出されたキャットフードを全部きちんと食べきる時ばかりではないですよね。
なので、食事中しっかり向き合って見てあげる必要があります。
猫・犬、それぞれの様子をきちんと観察するという観点からも、時間をずらして与えるのはいいことと言えます。
まとめ
今回は猫が犬の餌を食べてしまうことの危険性と、その対策についてでした。
- キャットフードにしかない成分がたくさんある
- 病気を防ぐことにもつながる
- 犬と猫を一緒に飼っているときは餌の場所や時間を分ける
というのがポイントです。
一見似ているドッグフードとキャットフードですが、きちんと分けて考える必要があります。猫には猫の餌を与える。
すごく初歩的なことですが本当に大切なのです。これからも、正しく楽しく猫ちゃんのご飯タイムを作ってあげてくださいね。