友人からこんなメールが届きました。
準備する物は一通り伝えて、最後に一番大切なことを伝えました。
それは子猫にワクチン接種を受けさせてあげること。
猫のワクチン接種は犬の狂犬病ワクチンとは違い、法律で定められているわけではないので受けさせていないという飼い主さんも多くいます。
今回は予防接種を受けさせるか迷っている方、いつ受けさせたらいいかなど、疑問を持っている方に安心してワクチンが受けられるよう、解説していきたいと思います。
これを読んだらワクチン接種にもっと前向きになれると思います。
猫にワクチンは必要?
日本の猫のワクチン接種率は20~30%。
そう思われている方もいます。それに最近、猫の完全室内飼育が推奨されていて、外に出ない猫も多く、外との接触がないから必要ないと思われている方も多いです。
たしかに外との接触がなければ感染症にはかかりません。
でも猫は外に行かなくても、飼い主さんはやっぱり外に出ますよね。
じつはこんなところからも感染してしまうことがあるんですよ。
- 飼い主が外で他の猫と接触をした(手で触った、足にまとわりついてきた等)
- 飼い主が外猫の排泄物を踏んで帰ってきた
- 外猫からの空気感染
そうですね。
外に出ないようにしていても空気で感染するとなると完全に防ぐのは難しそうですね。
そこで万が一に備えて打つのが予防接種です。
子猫はいつからワクチンが受けられるの?
子猫はいつからワクチンを受けられるのでしょう。
人はお腹の中にいるときに、母親からへその緒を通して免疫を受け取っています。
生れたばかりの赤ちゃんでも風邪にかかりにくいと言われているんですよ。
それに対し、病気に対しての免疫力がすごく弱い状態で生まれる子猫。
母猫の母乳、それも出産してから16~24時間以内の母乳である初乳(しょにゅう)を飲むことで免疫を受け取ります。
母猫から受け取った免疫は生後2~3ヶ月持続します。
この期間にワクチンを打っても免疫があるため、体の中でシャットアウトされてしまいワクチンの効果が得られません。
なので、ワクチンを打つのは母猫からの免疫力がなくなる頃である生後2ヶ月以降とされているんです。
子猫を引き取った場合は、まずお家や家族に慣れたら早めに健康診断を受けることをおすすめ。健康診断の時に今後のワクチン接種のスケジュールの相談をしましょう。
ワクチン接種スケジュールについてはのちほどご紹介しますね。
子猫がお家に慣れるために気をつけたいことをこちらで紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
ワクチンで防げる7つの病気
ご存じの方もいるかと思いますが、ワクチンを打っていても完全にかからなくするとは断言できません。
ですが、ワクチンを打っていることで軽く済ませることが可能ですよ。
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫ウイルス性鼻気管支炎
- 猫汎白血球減少症
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫クラミジア感染症
- 猫免疫不全ウイルス感染症
- 狂犬病
猫のワクチンで防げる病気は7つです。
それぞれどんな病気か説明していきますね。
見たいところだけのチェックも出来ますよ。もちろんワクチンの打ち方を読みたいという方は飛ばして読んでください。
感染力の高いウイルスで『猫風邪』といわれる病気の一つ。
猫カリシウイルスが原因。
生後2~3ヶ月の頃に発症しやすく、死亡率は約70%。
【症状】
鼻水、くしゃみ、発熱、食欲不振、口の中が荒れるためよだれが増える。重症化になると肺炎となり命を落とす。
【感染経路】
感染した猫との接触
空気中にウイルスが舞い、それを吸い込むことでの空気感染
こちらも『猫風邪』の一つ。
猫ヘルペスウイルスが原因。
6~12週の子猫がかかりやすい。子猫の感染の場合の死亡率は70%以上
【症状】
くしゃみ、咳、発熱、目の充血、目やに、呼吸困難。重症化すると肺炎となり命を落とす。
【感染経路】
感染した猫との接触、感染した猫のくしゃみなどからの感染。
母猫がこのウイルスを保有している場合は、授乳やグルーミングで感染。
猫汎白血球減少(ねこはんはっけっきゅうげんしょう)ウイルス(または猫パルボウイルスともいう)が原因。
感染力が非常に高く、子猫がかかってしまった場合の死亡率は75~90%。
【症状】
食欲不振、下痢、嘔吐(吐くこと)などの消化器症状、発熱。白血球が減少することで、外部への抵抗力がなくなり、さまざまな病気にかかりやすくなる。
食事が摂れないことや消化器症状のため脱水となり命を落とす。
【感染経路】
感染した猫の排泄物を口にした、一緒の器からゴハンを食べたなどからの感染
猫白血病ウイルスが原因。
【症状】
初期は発熱、元気がない、口内炎、食欲不振といった風邪のような症状
進行すると白血病やリンパ腫といった血液の癌(がん)になり命を落とす。
【感染経路】
感染した母猫から胎盤や授乳をとおして感染。
感染した猫の排泄物が口に入ったり、唾液などがついた食器を共有することからの感染。
『猫風邪』の一つ。
クラミジアという細菌が原因。
1才以下の子猫がよくかかる。
【症状】
目が充血、目がむくむ、目やに、鼻水、くしゃみ。生れて間もない子猫は重度の結膜炎になってしまったり、抵抗力が減少するので気管支炎や肺炎になりやすく命を落とす。
【感染経路】
感染した猫との接触
感染した母猫からの感染
通称『猫エイズ』
猫免疫不全ウイルスが原因。
【症状】
かかってすぐ~数ヶ月:発熱、下痢、全身のリンパ節が腫れる
無症候(むしょうこう)期:感染しているのに症状がでない時期。このまま症状が出ない猫も いる。
最終段階:エイズ*が発症することで免疫が働かず、さまざまな病気に抵抗できなくなる。多くは数ヶ月で死亡。
エイズとは体を病気から守るための免疫力を壊してしまう病気。
通常の健康な状態であればかからないような病気にもかかってしまう状態になる。
【感染経路】
感染した猫に噛まれる
ラブドウイルスが原因。
犬だけではなく猫にも人にも感染してしまう病気。
感染した場合死亡率は100%
【症状】
顔つきが変わる、性格が攻撃的またはうつ状態のようになる。進行すると、痙攣や呼吸不全を起こし命を落とす。
【感染経路】
感染した動物に噛まれることで感染
日本では1957年以降、狂犬病は発症していませんが海外では流行している地域もあります。海外に連れて行く場合にはワクチン接種を検討しましょう。
ワクチン接種の方法
死亡率の高い病気もワクチンで防げることがわかりましたね。
7回受けさせるとなると、飼い主も子猫も大変ですよね。
じつは1回で複数のワクチンを一緒に打てる混合ワクチンというのがあるので、猫の負担も少なくできるんですよ。
混合ワクチンでまとめて接種
【混合ワクチン】
防げる病気 | 3種 | 4種 | 5種 |
猫カリシウイルス感染症 | |||
猫ウイルス性鼻気管支炎 | |||
猫汎白血球減少症 | |||
猫白血病ウイルス感染症 | |||
猫クラミジア感染症 |
【単体ワクチン】
猫免疫不全ウイルス感染症、狂犬病
特に3種混合に含まれているワクチンは特に感染力が高い病気のワクチンになります。小さい体に一気にたくさんのワクチンを接種させるのは心配という方は、3種混合がおすすめ。
3種混合3,000~5,000円、5種混合5,000~7,000円ほど。
単体ワクチンの場合だと、4,000~5,000円ほどです。
子猫の接種スケジュールを立てる
子猫を迎えたら早めに動物病院を受診しましょう。
動物病院受診の目安をご説明しますね。
月齢 | 行うこと |
1ヶ月~ | 健康診断、ワクチン接種のスケジュールを立ててもらう |
2ヶ月~ | 混合ワクチン1回目 |
3ヶ月~ | 混合ワクチン2回目 |
1才~ | 年に一回 混合ワクチンの追加接種 |
一度ワクチン接種を受けている場合、追加で接種することで、より免疫力を高める効果のことをブースター効果って言います。
ワクチンの効果も一生続く物ではないんです。免疫力の持続は1年ほど。その免疫力が下がってくる頃に追加で接種することで、この効果が得られる仕組みなんですよ。
ワクチン接種前後に気を付けたいこと
ワクチン接種の前後は必ず子猫の体調チェックを行うようにしましょう。
- いつも通りの元気があるか
- いつも通りゴハンを食べたか
- いつも通りのおしっこは出ていたか
- いつも通り便は出ていたか。下痢や便秘になっていないか
いつも通りであることを確認してから接種するようにしましょう。
そして打った後の観察点についてはこちらです。
- 顔の腫れがないか
- 皮膚をかゆがっていないか
- 注射したところは腫れていないか
- 嘔吐(吐くこと)、下痢はしていないか
- 発熱はないか
- 食欲はあるか
- 呼吸が苦しそうじゃないか
ワクチン接種翌日ぐらいまでは元気がなく、食欲も落ちていることもあります。
ワクチン接種後1週間ほどは興奮させないようゆったり過ごせるような配慮してあげましょう。
接種してから数分~30分ほどはアナフィラキシーショックといって重度の副作用を起こす場合があります。30分ほどは動物病院の中にいたり、すぐに受診できるようなところで子猫の様子を見ておくことをおすすめします。
また明らかにいつもと違うと感じたときにはすぐに動物病院を受診し、診てもらいましょう。
1週間様子を見るといっても仕事に行っていたりでずっとは見れませんよね。
そんなときにも安心なのがペットカメラです。
番外編:いい動物病院を選ぼう
そんな方に今後の参考になるよう、良い獣医さん、良い動物病院の選び方について説明したいと思います。
- 丁寧に説明してくれる
- 専門外の場合はしっかり伝えてくれる
- きちんと子猫を触って診察してくれているか
- 休診の時間帯に急変があったときなどの対応をしっかり教えてくれる
動物病院のホームページを診ると獣医さんの紹介が書いてある病院もあります。
そこをみるとわかるのですが、獣医さんにも得意分野があるのです。ご自分の専門外の病気の場合にきちんと専門の先生を紹介してくれる先生は信頼出来ますね。
- 口コミを調べる
- なるべく多くの人から情報を得る
- 通院のしやすさ(自宅からの距離、駐車場の有無など)
- 待合室や診察室がきれいか
- 子猫を丁寧に扱ってくれるか
口コミや人からの情報はかなり役立ちますよ。
そしてこれらを踏まえた上で動物病院を決めますが、一番のポイントは一回で判断しようとしないこと。
例えばたった一回の健康診断やワクチン接種の受診で、良い獣医さんかどうかを判断出来る方はそうそういないと思います。
まずは2~3回通ってから判断してみましょう。
まとめ
子猫を迎えると決めたらまずは物の準備と一緒に、ワクチン接種について考えておくことが大切とお話しました。
これはお家に慣れてきたら、はじめての健康診断を受けて、生後2ヶ月からはワクチン接種を受けていくためでした。
ワクチン接種で防ぐことが出来る病気は全部で7つでしたね。
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫ウイルス性鼻気管支炎
- 猫汎白血球減少症
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫クラミジア感染症
- 猫免疫不全ウイルス感染症
- 狂犬病
感染力が強く、致死率の高い病気がたくさんありました。これらから子猫を守るためにわたし達飼い主が出来ることがワクチン接種です。
小さくても大切な家族。すくすく元気に育ってもらうためにワクチンを接種しましょう。