オス猫と暮らす上で欠かすことのできない去勢手術。
こんな声はよく聞かれますよね。
オス猫は性ホルモンの影響で、自分の縄張りを主張するためのスプレー行為をする習性があります。去勢手術をすると、その性ホルモンがなくなるのでスプレー行為がおさえられるんです。
他にもケンカが減ったり、特定の病気リスクを下げるメリットもあります。
ただ、必要な手術とはいえ、体にメスを入れるわけですから猫にとっては大きなストレスです。
多くの場合、手術そのものはトラブルなく終了しますが、手術後には、いろいろと問題が発生してしまうことも。
そんな中で、飼い主さんを困らせるのが、去勢手術後に「おしっこをしない」、「うんちが出ない」、「トイレを失敗してしまった」などのトイレの問題です。
排泄のトラブルは、猫にとって命に係わる危険性があるため、十分に注意をしなければいけません。
今回は、トイレ問題が発生する原因とその対処法についてお伝えしていきます。
去勢手術後にトイレに行かない原因は?
去勢手術後、どんなことが原因でトイレに行かなくなってしまうのでしょうか。
手術のストレス
去勢手術後のトラブルは、精神的なストレスである場合がほとんどです。
去勢手術は、比較的負担の小さい手術ではあるものの、当日は全身麻酔で処置を行います。さらに、もともと猫は他の動物と比較しても、とても敏感で繊細な生き物。
そんな猫が、一時的ではあっても飼い主のもとを離れて手術を受けるというのは、心身ともに大きなストレスに違いありません。
それにより、一時的におしっこをしなくなってしまうケースはよくあるのです。
実は亡くなった愛猫しゅりも、去勢手術後はなかなかトイレに行ってくれなかったんです。
かなり昔のことなので少し記憶は曖昧ですが、手術は午後からで、自宅に帰ってきたのは夕方ごろ。あまり元気もなく食欲もないようでした。
手術後なのでそういうものかな、と思い様子を見ていたのですが、夜になって全然トイレに行っていないことに気づき家族中で大慌て。
試しに無理やりトイレに連れて行って座らせてみたのですが、やはりおしっこはしてくれず、逃げてしまいました。
病院はもうやっていないので、やれることはやってみようと思い、水を飲ませたり、汚れてもいないトイレを掃除してみたり、抱っこしてリラックスさせたり、トイレをしゅりの近くに持ってきてみたり。
いろいろ試しましたが、結局その日はそのまま寝てしまったんです。
翌朝、今日もトイレに行ってくれなかったら病院へ行かなきゃ、とハラハラしていましたが、前日に比べると元気になり、ごはんも食べてくれて、その後、無事におしっこもうんちもしてくれて、心からホッとしました。
後日、病院でこの話をしたら、獣医師さんいわく、「手術後はストレスでよくあることなんだよ」とのこと。
本当に猫は繊細なんだな、と実感する出来事でした。
今までのトイレ習慣を忘れてしまう
実はこれもストレスが原因なのですが、手術のショックでトイレのしつけ前に戻ってしまう場合もあります。
つまり、手術前にはちゃんと出来ていたことができなくなり、トイレでおしっこをしないで、家じゅうのいろいろな場所で粗相をしてしまうのです。
こうなってしまう理由として、「去勢手術は生後1年未満の子猫時期に行う場合が多い」、ということがあげられます。
トイレ習慣が身について間もないうちに手術を受けたことで、そのショックにより元の状態に戻ってしまったのかもしれません。
エリザベスカラーが邪魔
去勢手術後、獣医師の指示のもとでエリザベスカラーを使用している場合は、このエリザベスカラーが気になって、トイレに行かなくなる場合もあります。
エリザベスカラーは、手術後の傷口を守るために必要な道具ですが、猫にとっては動きが制限されて邪魔なアイテムでもあります。
使用しているトイレが、フードがないオープンタイプであれば問題ありませんが、フード付きやドーム型だと、エリザベスカラーがどこかに触れてしまうので、落ち着いてトイレができません。
その結果、トイレを使うことを嫌がる=排泄をしない、ということにつながってしまうのです。
病気の可能性はある?
去勢手術後すぐのトイレ問題は、ストレスによるものがほとんどなので、あまり病気の心配はありません。
ただ、このようなおしっこトラブルから、病気につながったり、病気を発見することができるので、いざという時のために、泌尿器系の病気について知っておくとよいでしょう。
猫がかかりやすい泌尿器系の病気は、「膀胱炎」と「尿結石」です。
【膀胱炎】細菌などで膀胱に炎症が起る病気
症状:トイレの回数が増える、血尿、排尿時に痛みで鳴く
【尿結石】尿路に結晶や結石ができる病気
症状:トイレに行っても尿が出ない、血尿、排尿時に痛みで鳴く
特に尿結石は、去勢して尿道が狭くなっているオス猫は、発症リスクが高いと言われています。もし気になる症状がみられた場合は、すぐに病院へ行きましょう。
どのくらいトイレに行かなかったら危険?
そうですね。そこは気になるところですよね。
おしっこが出ない場合
一般的に、24時間以上おしっこがでなかったら危険とされていますので、この「24時間」を目安に考えてください。
もし24時間以上おしっこが出なければ、体になんらかの異常が起きている可能性が高いですし、さらに48時間以上その状態が続くと、命の危険性も出てきます。
このレベルになると、わたしたち飼い主ができることはありません。大至急、病院へ連れていってください。
愛猫しゅりの場合、病院に行く前の13時ころにおしっこをしたあと、翌日の7時ころまでおしっこが出ませんでした。つまり18時間、おしっこが出なかったことになります。
うんちが出ない場合
では、うんちはどのくらい出ないとよくないのでしょうか。
実は、そもそも猫の排便回数に決まりはありません。1日に2~3回する猫もいれば、2日に1回の猫もいるでしょう。
そこで大切なのは、定期的に決まった量が出るかです。
もし去勢手術後にうんちが出ない場合は、日ごろの愛猫の排便ペースと比較してください。
1日に2~3回する猫が、丸2日間しないようであれば、なにか体調に問題があるかもしれませんし、2日に1回ペースの猫であれば、丸3日程度は様子を見てもいいかもしれません。
ただ、トイレで踏ん張っているのに出ない、苦しそうにしている、という場合はストレス以外の原因が考えられますので、早めに病院へ相談してください。
こんな対策をしてみよう
ストレスを解消してあげよう
ストレスが原因の場合は、できるだけ早く愛猫の不安を取り除き、リラックスさせてあげる必要があります。
まずは自宅に戻ったら、近い場所で愛猫の様子を観察しましょう。
できれば去勢手術後の数日は、飼い主さんも外出を控え、愛猫ちゃんを優しく見守ってあげられるとベストです。
ブラッシングをしてあげるのもおすすめですよ。日ごろからブラッシングを気持ちいいと感じている猫ちゃんであれば、とても効果的でしょう。
愛猫ゆねは、ブラッシングが大好きなので、毎晩ブラッシングしてあげるのが私の日課です。
また、お風呂にはすぐに入れませんので、温めたタオルで体を包んで優しく拭いてあげてもよさそう。これもリラックス効果がありますよ。
冷え性のわたしは、「温かさ」には癒しのパワーがある、といつも思っています。温めるだけでなんだかホッとしませんか。
ゆねも温かいタオルで包まれると、いつも目をつぶって気持ちよさそうにしています。
どんな方法でもいいので、いつも愛猫が気持ちよく過ごしているやり方で不安な気持ちを癒してあげてくださいね。
トイレ環境を見直そう
エリザベスカラーが原因と考えられる場合は、トイレの形状に注意しましょう。
先ほどもお話したように、フード付きやドーム型のトイレだと、エリザベスカラーがどこかに触れてしまうので、落ち着いてトイレができません。
もしフード付きトイレを使用している場合は、フードを外しましょう。
ただ、オープンタイプだとトイレをしない猫もいますから、フード代わりに段ボールなどで囲って視線を遮ってあげるといいですね。
手術後のエリザベスカラーを嫌がる猫はとても多いので、そのストレスを解消してあげることが大切です。お困りの方はこちらの記事も参考にしてみてください。
またトイレの環境は、敏感で繊細、そして綺麗好きな猫にとっては非常に重要なポイント。普段からしっかり整えることが、愛猫の快適な生活につながります。
これを機にトイレ環境を見直したい、正しいトイレ環境を知りたい、という方は以下の記事もご覧になってみてください。
食事にも注意しよう
猫がおしっこやうんちをしない。実はこれって単純に「ごはんを食べていない」「あまり水を飲んでいない」ということが原因の可能性もあります。
去勢手術前は、ごはんをあげませんし、手術後は食欲がなくてごはんを食べていない、ずっと寝てばかりで水分も取れていない、ということもありますよね。
水分量が少ないとおしっこも出ないですし、食事量が少なければうんちも出ず、結果的に便秘につながってしまうかもしれません。
それを防ぐために、以下のような方法を取ってみましょう。
- 水を入れた食器を近くまで持っていくなど、水を飲ませる工夫をする
- ドライフードよりも水分量が多いウェットフード、おやつ、スープなどを与えて、効率よく水分が取れるようにする
一次的に栄養バランスが崩れてしまうかもしれませんが、おしっこやうんちをしないことの方が深刻なので、それほど気にしなくても大丈夫ですよ。
トイレのトレーニングをやり直そう
手術のストレスやショックが原因で、トイレのしつけ前に戻ってしまった場合は、もう一度トイレトレーニングをやり直しましょう。
せっかく覚えてくれたのに、とちょっとがっかりしてしまいますが、一度覚えているので、やり直せばすぐに思い出してくれるでしょう。
<トイレの教え方>
- 猫のトイレサインを見つけたらすぐにトイレへ連れて行く
- うまくトイレでおしっこやうんちができたら、ほめてあげる
これだけです。簡単ですね。猫はもともと同じ場所で排せつをする習性を持っているので「ここがトイレだ」と認識できれば、その後はきちんとトイレに行ってくれます。
猫のトイレサインは以下のような行動です。
- 床の匂いをかぎながらウロウロする
- そわそわして落ち着きがなくなる
- お尻をむずむずさせる
- 床を引っかく
意外と重要なのが、「ほめてあげる」こと。猫にとって飼い主さんにほめられるのはとても嬉しいこと。また喜ばせよう、ほめられようとして、とってもいい子ちゃんになってくれますよ。
逆に、トイレの失敗で怒るのはNGです。おびえてしまい、猫は排泄したことを怒られたと思い、トイレを我慢してしまったり、隠れてトイレ以外の場所で排泄してしまう恐れがあります。
まとめ
去勢手術後に愛猫が急にトイレに行かなくなったら、どうしたらいいのか心配になりますよね。
まずは原因を理解しましょう。
- 手術による精神的なストレス
- 手術のショックでトイレのしつけ前に戻ってしまった
- エリザベスカラーが邪魔でトイレを使いにくい
解決策として、以下のような方法を試してみてください。
- リラックスできる環境を作り、ストレスを解消してあげる
- トイレ環境を見直す
- 水分量の多い食事を与える
- トイレトレーニングをやり直す
これらの対策を取ってみても、24時間以上おしっこが出ない場合は、必ず病院へ連れて行ってください。早めの対応が肝心です。
去勢手術後のトラブルは、精神的なストレスが原因の場合がほとんど。手術をがんばった愛猫ちゃんのために、できるだけ一緒にいる時間を作ってあげてくださいね。
きっと愛猫ちゃんにとっては、飼い主さんの愛情が一番の癒しになるでしょう。