猫の行動範囲がどのくらいか知っていますか。
完全に室内飼いされている猫は家の中だけですが、田舎では猫を放し飼いしている家庭もよく見かけます。そんな猫たちは、いつも遠くまでお出かけしているのでしょうか。
猫が家と外を自由に出たり入ったり。気ままな猫にはぴったりの暮らしのようにも見えますが、都会に住んでいる飼い主さんにとっては、そんな飼い方は全く理解できないかもしれません。
そこでふと疑問がわきました。猫ちゃんが、毎日家から出て行っても、ちゃんと家に帰ってくるのはなぜなのかな。もしかしたら、帰ってこない場合もあるのでしょうか。
都会では「迷い猫」という言葉があるように、うっかり家から逃げ出して、そのまま行方不明になって二度と会えない、なんて悲しいことも起こります。
田舎の放し飼い猫と都会で暮らす室内猫。行動範囲や行動パターンの違いはどんなところにあるのでしょう。
今回は、田舎暮らしの猫と都会暮らしの猫の特性についてお話します。
猫の行動範囲は?
猫の行動範囲はどのくらいなのでしょう。
「オス猫」を基準でみていくと、だいたいこのような範囲とされています。
野良猫 | 半径500m前後 |
放し飼い猫(去勢済み) | 半径200m前後 |
完全室内猫(去勢済み) | 半径100m前後 |
野良猫は広範囲ですが、飼い猫は狭い範囲で活動しているのがわかりますね。
去勢していないオス猫の場合は、餌を探す以外に、繁殖のためにメス猫を探して活動するので、もっと行動範囲が広くなります。
またメス猫の行動範囲は、オス猫の10分の1ととても狭いです。警戒心が強く、母として子猫を育てる役割があるため、危険を避けようとして狭い範囲での行動を繰り返します。
ここでひとつ、猫の行動範囲に関しておもしろい調査結果を見つけたのでご紹介しますね。
アメリカ主体で「キャット・トラッカー」という大規模な国際プロジェクトが行われています。
これは、飼い猫にGPS付きの首輪をつけて、猫たちが毎日外で何をしているのかを調べるというもの。なんとこの調査、6年間も続けられていて、6ヶ国で900匹を超える猫をそれぞれ1週間調査したんだそうです。
そしてついに、2020年3月11日に学術誌「Animal Conservation」でその結果が発表されました。その結果でわかったことは、「大半の猫が、全ての時間を自宅の庭から100メートル以内で過ごしていた」ということ。
これだけの大プロジェクトが行われていることにもびっくりですが、猫ちゃんの行動範囲の狭さにも驚きでした。
飼い猫は遠くに行くことを好まず、家の周りでウロウロしたり、居心地のよい場所で日向ぼっこしたり、のんびり過ごしていることがわかります。
猫の行動範囲はどのように決まる?
では、同じ猫でも住んでいる環境によって行動範囲が違ってくるのはなぜでしょうか。
田舎の放し飼い猫
田舎の放し飼いは、半分野良猫のような生活です。朝ごはんを食べたら家から出て行き、一日を外で生活し、お腹が空いたら帰ってきてご飯を食べて寝る。
外では、くつろげる場所を探して寝ていることも多いですが、大半は、足りない餌を探すため、自分のテリトリー内でうろうろしています。
家の近くでちゃんと餌を確保できれば、行動範囲はそれほど広くありません。逆に、ド田舎で周りに何もなければ、餌を探して広範囲を歩き回ることになります。
つまり、「食料が充分に確保できるかどうか」で行動範囲が決まってくるのです。
室内猫
室内猫の行動範囲は、当然ながら家のみ。いつでも餌をもらえて、他の動物に襲われる心配もなく、何かあれば飼い主さんが守ってくれます。こんな安心な場所はありません。
餌の心配をする必要がないので、行動範囲は家の中のみで満足できるのです。
わたしも長く猫を飼っていて、こんな狭い家の中だけで窮屈じゃないのかな、と何度も思いました。家の外に行きたくないのかな、と。
でも猫は、餌をきちんと食べられる安全な場所があればそれが一番なんですね。
野良猫
飼い猫ではなく野良猫の場合もみていきましょう。
・田舎の野良猫
田舎の野良猫は、ほぼ野生です。人間の残した食べ物を得るチャンスも少ないため、毎日が狩猟生活です。もちろん、定期的に人から餌をもらえる野良猫もいますが、それでも毎日必ずもらえる保証はありません。
常に餌を探して行動するので、行動範囲はとても広くなります。
・都会の野良猫
都会の野良猫は、田舎の野良猫の生活とは比べ物にならないほど食料が豊富。
近隣住民から餌をもらえるチャンスも多く、飲食店の残飯なども食べることができます。そのため、食料が豊富なエリアを拠点として、そこからの行動範囲はとても狭いのです。
- 猫の行動範囲は、食料が充分に確保できるかどうかで決まる
- 近場で確保できれば狭い範囲内で行動するが、確保できない場合は広範囲を移動する
猫が家に帰れる理由
犬はどんなに遠くに連れていっても必ず家に帰ってくる、とはよく聞く話。それに比べて、猫はその気ままで自由な習性ゆえ、一度はぐれたら家に戻ってこられない、と思っている人も多いです。
ですが実は、猫にも犬と同じように帰巣本能があるので、田舎の放し飼い猫もちゃんと家に帰ってきます。
猫は自分のテリトリー内を動き回るとき、いろいろな場所に自分の匂いを付けながら(マーキングといいます)行動する習性があるので、その決まったテリトリー内であれば、マーキングを頼りに自分の家に帰ることができるのです。
また、縄張り意識も強く、毎日そのテリトリー内を歩き回るため、地図が頭に入っているんだそうです。方向音痴のわたしからすればうらやましい限り。(笑)
だから、放し飼いでも、ご飯の時間になれば、ちゃんと家に帰ってくるんですね。
猫が家に帰れなくなる理由
次に、家に帰ってこられない理由を、放し飼い猫と室内猫に分けてそれぞれみていきます。
放し飼い猫の場合
田舎の放し飼い猫が帰ってこない場合は、なんらかの理由でテリトリーから出てしまったという可能性が高いです。
危険な目に合ったり、急に驚いたりしてテリトリーから出てしまうと、マーキングによる帰る手がかりがなくなり、戻れなくなってしまうのです。
帰れなくなった猫ちゃん。路頭に迷って途方に暮れているのか、というと実はそうでもなかったりするんです。
最初はマーキングを探して帰る努力をしますが、猫は常に自分にとって快適な環境を選ぶ生き物。その性質は帰巣本能よりも上回るので、無理に帰るよりは、新しい場所でまたテリトリーを作る、という選択をします。
飼い主さんからすれば少し寂しい気もしますが、もともと放し飼い猫は、半分野生猫のようなもの。またふらっと帰ってくるのを待つか、新しい場所で無事に暮らしていることを祈るしかないのです。
室内猫の場合
では、室内猫が外に出てしまった場合に戻ってこられないのはなぜでしょうか。
これは、室内という安全な場所で暮らすことによって、本来の帰巣本能が薄らいでしまったためです。特に幼猫時代から人に飼われ、狭い家の中でのみ暮らしているので、マーキングの習慣もありません。
そんな猫が、うっかり外の世界に出てしまったら、もう大パニック。知らない人、見慣れない風景、におい、音など多くの情報に戸惑い、家がわからなくなるのです。
このときの猫ちゃんの心境を考えるととても苦しくなります。
うっかり外に出てしまった猫ちゃんは、恐怖でいっぱいなので遠くには行けません。そんなときは、家の近くに隠れている可能性が高いので、できるだけ家の近くを探してください。
わたしも一度だけ、愛猫ゆねが窓から出て行きそうになり、心臓が止まるほどビックリしました。あんな思いは二度としたくないので、それ以来とっても気を付けています。
猫の活動時間は?
猫は一日をどのように過ごしているのでしょうか。
睡眠時間が長い
猫はなんと1日に14~16時間程度眠るそうです。わたしの睡眠時間は6~7時間なので2倍も。1日くらいなら、ゆねと入れ替わってみたいな(笑)。
子猫はさらに長くて、20時間近く眠ることもあります。「寝る子は育つ」と言いますが、寝ている間にどんどん成長しているんですね。
ゆねも今は子猫期。数ヶ月前はほとんど寝ている日もありました。寝ている姿もかわいいのですが、わたしの相手をしてくれないので起こして遊びたくなることも。さすがに起こしてはいけないので、グッと我慢しましたよ。
こんなに長く寝てはいますが、そのうちの大半は浅い眠りで熟睡はしていません。脳は活動しているので、少しでも物音がすれば飛び起きます。これも自分の身を守る野生の本能です。
猫は夜行性?
猫は夜中に走り回ることがあるので夜行性と思われがちですが、本当のところはどうなのでしょう。
これについても、放し飼い猫、室内猫、都会の野良猫で少し違いがあったんです。
・放し飼い猫
猫は本来、夜行性ではなく、明け方と夕暮れの時間帯に一番活動的になります。これは、明け方と夕方の時間に、猫の獲物であるネズミなどの小動物が活発に動くため。つまり狩りを成功させるために、ネズミの生活に合わせて活動しているというわけです。
放し飼い猫は、この野生の名残が強く残っているので、明け方と夕暮れの時間帯が活動的であると言われています。
飼い主さんから餌をもらえるとはいえ、日中は自分のテリトリー内で餌を探し回っています。そのため、本能的に獲物を探しやすい時間帯に体が動いてしまうのです。
・室内猫
では、完全に室内で暮らしているわたしたちの愛猫たちはどうでしょう。
ねこは気まぐれで自由、わがままという印象を持たれることも多いのですが、実は飼い主さんの生活パターンに合わせられる柔軟性を身につけています。
そのため室内猫は、人間と同じように昼に活動する傾向が強くなります。自分で狩りをする必要がないので、明け方や夕方に急に活動的になることもありません。
個体差はありますが、一日中穏やかに過ごしている猫が多いようです。
確かに、亡くなった愛猫も完全にわたしと同じ生活リズムだったように思います。夜中に起こされることはなかったし、ごはんの時間も、わたしが与えるペースを守ってくれました。
今考えてもとってもいい子ちゃんでしたね。ゆねもそんなふうに素直に育ってくれるでしょうか。将来が楽しみです。
・都会の野良猫
都会に住む野良猫は、夜中に活発に行動する、という調査結果があるそうです。つまり夜行性。これも、本来の持っていた「明け方と夕暮れに活動的」とは異なりますね。
その理由は、都会暮らしでは、昼よりも夜の方が安全に生活できるからです。
都会は田舎と違い、昼間は人や車、騒音などがあふれています。猫にとってはストレスだらけ。わざわざ活動する気になりません。
また餌の確保の点でも、飲食店の残飯を目当てにするには、夜間の方が好都合です。
野良猫にとって、餌の確保がなによりも大切なので、自分の身を守りつつ餌を探し周れる夜間に活動するのは、当然かもしれません。
まとめ
今回は、田舎暮らしの猫と都会暮らしの猫の特性についていろいろ調べてみました。
- 放し飼い猫は、日中は餌を求めて行動するので、餌が充分に確保できるかどうかで行動範囲が決まる
- 猫本来の帰巣本能が働くため、自分のテリトリー内であれば家に帰ってこられる
- 放し飼い猫は、野生の名残で、獲物が活発に動く明け方と夕暮れに活動的になる
- 完全室内猫は、自分で餌を探す必要がないため、行動範囲は狭くなる
- 完全室内猫は、本来の帰巣本能が薄れていて、外に出ると帰ってこられない
- 完全室内猫は、人間の生活リズムに合わせられるので、昼に活動する
このように、同じ猫でも、育ってきた環境や現在の環境によって、行動パターンが全く違うことがよくわかりました。
どんな猫も、それぞれの環境で精一杯生きています。
わたしたち飼い主は、家族の一員として愛猫を受け入れた以上、しっかり特性を理解し、責任を持って育てていかなければいけませんね。