我が家の愛猫ゆねは、窓際でひなたぼっこをするのが大好きです。
先日も窓際に登って日向ぼっこをしようとしていたのですが、なんと登るのに失敗。
大した高さではなかったのでケガはしなかったのですが、わたしがいることに気づいた瞬間、ものすごいスピードでその場を離れてしまったのです。
ちょっと心配になって追いかけてみると、部屋の隅っこで小さくなって、一生懸命毛づくろいをしていました。
ゆねには申し訳ないのですが、この一連の動作がとてもかわいらしく、とても癒されました。
その後、ネットでたまたま猫の毛づくろいの情報を見ていたのですが、その中で気になる記載が。
「猫の毛づくろいの中には猫のヘルプサインもある」
このゆねの出来事は、可愛い仕草にしか思っていなかった毛づくろいの奥深さを知るきっかけになりました。
ただの可愛いだけではない毛づくろいの秘密について、今回はたっぷりとお話します。
猫が毛づくろいをする4つの理由
気づいたら手をペロペロ。今度は足をあげてペロペロ。本当に猫はよく毛づくろいをしていますよね。
猫は起きている時間の半分以上を毛づくろいに費やすという、実はかなりのキレイ好きなんです。
まさに、猫の代名詞とも言える毛づくろいですが、グルーミングとも呼ばれ、様々な場面で見られます。
なぜそこまで毛づくろいをするのかという理由ですが、猫の身体の仕組みに秘密がありました。
猫の皮膚はとても敏感で、ダメージを受けやすいと言われています。その皮膚を守っているのが「被毛」です。
そして毛づくろいにかかせないものが、猫の舌。
猫の舌が痛いくらいザラザラになっているのは、多くの方がご存知だと思います。
あのザラザラは糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と言われる突起で、それがあるおかげで、毛づくろいの時に適度な刺激が与えられ、血流を促進させる効果もあります。
毛づくろいの目的①身だしなみ
猫の舌についた糸状突起によって、被毛についた細かい汚れやほこり、そして抜け毛をしっかりと絡みとって毛玉や皮膚炎を予防しています。
また、猫の唾液には殺菌作用もあり、そのおかげでさらに清潔に保つことができます。
毛づくろいの目的②体温調整のため
猫の体は人間と違い、汗腺がほとんどありません。なので、暑いときに人間のように汗をかいて気化熱で体温を下げるということができません。
ではどうやって体温調整をするのか。
猫は毛づくろいのときに出た唾液による気化熱で体温を下げることができます。
冬場の寒い時期には毛づくろいによって被毛の間に空気の層を作って毛をふっくらとさせ、保温効果を生み出しています。
毛づくろいの目的③リラックス効果
たとえば、猫同士でケンカをした、大きな物音に驚いた、構ってほしくない時に執拗に撫でまわされてしまったなど、猫もストレスを感じることはあります。
このように、不安や恐怖などの強いストレスを感じた時、一見無関係な行動をすることで気を紛らわします。
この行動を「転位行動」と言い、猫の場合は毛づくろいが転位行動になります。
なぜ、猫の転位行動が毛づくろいなのかというと、子猫時代に関係があります。
猫は生後1か月くらいまでは母猫が子猫の毛づくろいをします。母猫のざらざらした舌で体を舐めてもらうことでマッサージ効果もあり、子猫はそれが気持ちよくなり、安心して眠ります。
こうした記憶が影響して、毛づくろいが気持ちのよさ、リラックスにつながっていると言われています。
この転位行動ですが、何かに失敗して恥ずかしいと思ったときにも出てくるそうです。
毛づくろいの目的④コミュニケーション、愛情表現
猫同士が体をなめあう行動は「親和行動」と呼ばれています。
自分では毛づくろいをしにくい顔や首の後ろ、背中などを他の猫に毛づくろいをしてもらうのですが、これは信頼をしている相手にしかしません。
飼い主さんに対して、手や顔を舐めてくるのもこの行動からであるといわれています。猫からの信頼の証だと思って、こちらからも優しくなでかえしてあげましょう。
では、ここでポイントを振り返ります。
- 身だしなみ
- 体温調整のため
- リラックス効果(転位行動)
- コミュニケーション、愛情表現
しかし、なんでもほどほどが1番。
いくら便利だからといっても、やはりやりすぎるのはあまり良いことではなく、最悪の場合は何か病気が隠れている可能性も。
しっかりとした見極めが大切です。
毛づくろいのし過ぎは猫からのヘルプサイン!
先日結婚して、新しい家に引越しをした職場の同僚から、猫の毛づくろいについて困っているという話を聞きました。
その内容というのが、元々飼っていた猫ちゃんが、新しい家に引越しをしてからというものの、落ち着きがなく、いつもそわそわしているのだとか。
そのうち、毛づくろいが止まらなくなり、とうとう脇腹に十円ハゲができてしまったとのこと。
さらに毛玉を吐くことも増えてしまい、何か異常があるのではないかと思い、動物病院で診てもらったという話でした。
診察の結果は体や皮膚には何も異常がないとのことでした。
しかし、その時の獣医さんの話によると、猫は病気がなくても、環境の変化などのストレスが原因で毛づくろいが止まらなくなることも多いのだとか。
引越しした直後から始まったことを考えて、おそらくそれが原因だろうと言われたそうです。
それもあったのでしょうが、最近の彼女は仕事は定時にしっかりと終え、早めに家に帰って猫ちゃんとの時間をしっかりと取るようにしているそうです。
このように、毛が抜けてしまうほどの過剰な毛づくろいは「過剰グルーミング(オーバーグルーミング)」と呼ばれています。
さきほどお話したストレス以外にも、皮膚病や、アレルギーが原因のこともあります。
過剰グルーミングの原因と症状
原因
- 皮膚の病気:アレルギー、アトピー性皮膚炎、感染症(細菌、寄生虫、真菌)
- 内臓系の疾患:炎症性腸炎や膀胱炎による痛み
- 心因性ストレス:生活環境の変化、新しい家族やペット、トイレが汚い、周辺の騒音が気になる、芳香剤のニオイが変わったなど
疾患による痛みやかゆみのせいで、異変がある部分を過剰に気にしてしまうことで毛づくろいをしすぎるということがあります。
また、猫は落ち着いた環境を好み、縄張り意識も強い生き物です。
慣れた生活環境が変わってしまうのは、人間にとっても大きなストレスですが、猫も同じ。
結婚や出産、転居など、仕方ない理由はあると思いますが、生活環境が大きく変わる時は特に普段の様子と違いが無いかをよく観察する必要があります。
猫が、部屋の中を何回もウロウロ歩き回り、落ち着かない様子を見せるのもストレスサインの一つです。
この場合も放置していると、元気が無くなってしまったり、重大な病気を見逃してしまうという事態になる可能性もあります。
普段から猫ちゃんの様子を見守り、何か違和感を感じることがあれば早めに対策をするようにしましょう。
症状
過剰グルーミングとは、文字の通り「毛づくろいのやりすぎ」です。
普通の毛づくろい | 過剰グルーミング | |
毛づくろいの程度 | 身だしなみが整う程度 | 毛が抜けるまでやり続け、脱毛後も皮膚をなめる |
毛づくろいする場所 | 体全体をまんべんなく | 特定の箇所に集中する |
その他の症状 | 時々、飲み込んだ毛玉を吐きだす | 毛玉を吐きだす回数が増え、胃や食道もダメージを受ける |
※表の横スクロール可
さらに困ったことに、過剰グルーミングは飼い主が見ていないタイミングでしていることも多く、注意していないと早期発見は難しいとされています。
過剰グルーミングは、猫にとって毛づくろいしやすい部分で起きるため、下腹部、脇腹、内股などの部分に多いとされています。
その部分を特に注意してみてみると、早期発見につなげることができるかもしれませんね。
過剰グルーミングが深刻化すると…
過剰グルーミングは何度も繰り返し毛づくろいをしているうちに、毛が生えてくる前に毛づくろいを行うようになるため、最終的には毛がうすくなり、脱毛を起こしてしまいます。
ここで止まったらいいのですが、すでにクセになってしまっている猫にとっては簡単に止めることはできません。
毛が無くなった状態でもさらに皮膚をなめ続けることで、舌にある糸状乳頭の効果も重なって、皮膚が炎症、出血をしてしまいます。
そうなってしまうと、動物病院で適切な治療を行う必要があります。
過剰グルーミング対策
さて、ここからは大事な猫ちゃんの毛と体を守るためにできることについてお話しします。
ストレスの原因をなくす
過剰グルーミングの原因は心身のストレスです。
そのため、必要な対策はストレスの元を取り除くこととなります。
例えば、かゆみがある場所をかきつづけてしまい、傷ができてしまった経験ってありませんか。かきすぎてはダメだと分かっていても、無理に止めようとすると逆にイライラしてしまいますよね。
痛みやかゆさを我慢するのが辛いのは、人間も猫も一緒です。
もし、皮膚炎や内臓系の疾患が原因であれば、病気の治療をすることでストレスの原因が取り除かれます。早めの受診・治療を心がけましょう。
身体面で異常が無いのにもかかわらず、毛づくろいをし過ぎる、そわそわして落ち着きがない時は、何かストレスを抱えているかもしれません。
もし、原因が特定できるようであれば、早めに取り除いてあげましょう。
もちろん、飼い主さん自身の生活も大事にしなければ、猫を飼うどころではなくなってしまいます。
猫のストレス対策と自分の生活、それぞれを大事にする方法についても考えていきましょう。
ストレスを発散させる
ストレスの元がわからない、もしくは簡単に取り除くことができない場合はストレスを発散できる環境を用意します。
猫は高いところが好きと言われているように、高い場所や隠れられる場所など、猫が落ち着いて過ごせる場所を作ってあげましょう。
ストレスの要因となっているものから気をそらすという意味でも、飼い主さんとの遊び時間を増やしたり、好みの爪とぎを用意したり、好きなおもちゃで遊んでみるのもいいでしょう。
また、猫を撫でたり、ブラッシングをしてあげたりして、飼い主が毛づくろいをするのもお勧めの方法です。
皮膚のかゆさの大きな原因の一つに、ノミやダニなどの害虫によるものがあります。ノミやダニはこまめな掃除によってある程度予防はできますが、動物病院でノミダニ除けのお薬を処方してもらうこともできるので、早めの対策を心がけましょう
ブラッシングで過剰グルーミングを予防!
先ほどの同僚の猫ちゃんの話になりますが、猫ちゃんと一緒に遊ぶ時間を増やしたり、撫でてあげることで、以前よりも毛づくろいをしなくなった気がすると、ほっとしているようでした。
この調子だと、また元通りに毛が生えそろう日も近いかもしれませんね。
その同僚が最近心がけていることが、ブラッシングを毎日することだそうです。
彼女はブラッシングについてたくさんネットなどで調べたようで、とっておきの方法やおすすめのグッズについて教えてくれました。
飼い主が毛づくろいする意味について
猫は自分で毛づくろいをするのだから、飼い主が改めてする必要がないんじゃないかという方もいるかもしれません。
猫は、自分で行う毛づくろいだけでなく、仲のいい猫同士で毛づくろいをし、信頼関係を築いていきます。
家猫の場合、飼い主がブラッシングや爪切りなどをしてあげることで、猫との信頼関係を築くことができます。
また、高齢になってくると、どうしても毛づくろいが足りない部分も出てきますし、長毛種の場合は毛が絡まって毛玉になることも多く、そこから皮膚炎を起こすこともあります。
ブラッシングは飼い主から猫への愛情表現であり、日々の健康チェックも兼ねることもできるため、できる限り毎日することをお勧めします。
ブラッシングのポイント
ブラッシングは、可能であれば、子猫の頃から毎日少しずつしてあげるのが理想です。
飼い主の愛情表現であると猫が分かってくれれば、慣れるのも早いです。
毛玉ができたときに、無理にブラッシングをしようとすると、毛玉がブラシに引っかかってしまい、猫に痛い思いをさせてしまいます。
そんなことを繰り返してしまうと、ブラシを見ただけで逃げ出してしまう可能性もあります。
最初はコミュニケーションをとる手段の一つとして、ブラシで軽く、毛並みにそってブラッシングをするようにしましょう。
もし、猫が嫌がっているときは、無理にしようとせず、猫の様子を見ながら、できる範囲で行ってみてください。
ブラッシングがあまり好きそうではない猫ちゃんに対しては、すり寄ってきた時のようなご機嫌な時にブラシなどで1回撫でるところから始めてみましょう。
ブラッシングをする場所ですが、あごの下や頭の後ろ、首周りは触らせてくれる猫が多いですが、お腹やお尻は嫌がられることが多いそうです。
まずは首からお尻に向かって軽くブラッシングをし、そのあとにお腹や足をしていきます。お尻やお腹はあまり力を入れずに行うことがポイントです。
- 子猫の時から毎日少しずつブラッシングをする習慣をつける
- 嫌がっているときは無理をせず、機嫌が良い時に行うようにする
- 毛並みにそって、首からお尻に向かってブラッシングをする
- お腹やお尻は触られるのを嫌がる猫もいるので、あまり力をいれずにスッとする。
おすすめのブラッシング道具
ペットショップへ行くと、いろんな種類のブラシがあります。
その中で、お家の猫ちゃんにあったものを探すのはなかなか難しいもの。
そこで、今回はこれまでわたしが使ってきたものや、他の人から聞いたオススメを3つ紹介します。
毎日使いにオススメ
こちらのブラシはラバーブラシという種類で、シリコン製のため抜け毛のケアだけでなく、優しくブラシをすることでマッサージ効果も期待できます。
抜け毛がある程度たまると簡単に掃除ができるため、お手入れもしやすいです。
ちなみに我が家のゆねの毎日のケアはこれを使っています。
ブラシをした部分がとても気持ちいいのか、いつもごろごろと言ってくれますし、最近ではブラシを持ってきただけですぐにお腹を見せてくれるようになりました。
換毛期の猫には絶対にコレ!
技術特許取得済みのステンレススチール刃がついており、トップコート(被毛)の下にあるアンダーコートと抜け毛をごっそりと取り除くことができ、毛玉の予防に最適です。
素材が金属のため、扱いには十分に注意をしないと、皮膚を傷つけてしまうおそれがあり、そもそも金属が苦手な猫には使用に注意が必要です。
わたしもゆねにこの商品を使いましたが、ビックリするくらい抜け毛が取れます。必要な毛までもが抜けてしまったのではないかと心配するほどです(笑)
この商品は毎日するのではなく、抜け毛が目立ってきたころや換毛期にすると効果抜群です。
ブラッシングが苦手な猫ちゃんでも使えます
こちらはこれまでとは違い、手袋の形をしたブラシです。
ブラシに苦手意識を持っている猫に対しても、そのまま撫でるような形で使用することができます。
五本指を使うことができるので、ブラシではケアしにくい部分もしっかりとできるのが特徴です。
この製品はサイズ調整もできるとのことで、家族みんなで使うことができるのも嬉しいポイントです。
このほかにも様々なブラシがあります。
猫の毛の長さや、その子の個性に合わせたものを探して、使ってみてください。
まとめ
では、最後に今回のお話をまとめました。
- 毛づくろいには4つの目的(身だしなみ、体温調整、リラックス効果、コミュニケーション)がある
- 毛づくろいのし過ぎは「過剰グルーミング」と呼ばれ、皮膚炎の原因にもなる
- 過剰グルーミングはストレス対策をすることが重要
- ブラッシングは猫のストレス対策と健康管理もできるため、毎日するのがオススメ
わたし自身、毛づくろいについて知れば知るほど、ゆねとの毎日の過ごし方を改めて振り返るいいきっかけになりました。
ゆねにできるだけストレスをかけたり、寂しい思いをさせてしまわないように、これからも毎日の関わりを大切にしていきたいです。