今日は愛猫の初めての去勢手術日。手術を終えた猫ちゃんを病院へお迎えに行くと、まだ麻酔から覚めたばかりで少しぐったり。ですが、こちらに気付くと「にゃー」と、か細い声で甘えてきます。
獣医さんから、今後の流れや食事の与え方の注意点の説明を受け、帰宅。お気に入りのクッションの上でしばらく寝ていたのに、突然黄色い液体を吐いてしまいました。
その様子にびっくりしましたが、当の猫ちゃんはケロッとした様子。その後は吐くこともなく、元気になりました。
これは、以前飼っていた愛猫「しゅり」の去勢時のお話です。知人からもよく聞くのですが、去勢手術後は、嘔吐(おうと)や下痢をしてしまう猫ちゃんが多いのです。
なぜ嘔吐や下痢をしてしまうのか、その原因と、動物病院への受診の目安についてまとめたので、これから去勢手術を受ける方はもちろん、術後の嘔吐や下痢に悩んでいる皆さんの役に立てたらと思います。
去勢手術後の嘔吐や下痢の原因
術後見られる、嘔吐や下痢の、主な原因はこちらです。
- 空腹に耐えきれず、胃液を吐く(透明、もしくは黄色い泡状)
- 麻酔が切れる前に食事を与えたことによる消化不良(固形物が多い嘔吐物)
- 環境変化のストレスによる体調不良
- 化膿止めや抗生物質が合わない
去勢手術後に猫が吐いたり、お腹を壊しているのを見たら手術に失敗したのか不安になりますよね。
ですが、術後に嘔吐したり下痢をする原因は、決して手術に失敗したわけではなく、慣れない病院に長時間居たというストレスの場合が多いです。理由は去勢手術の内容を見るとわかります。
去勢手術の内容をおさらい
猫の去勢手術は、全身麻酔をかけて行います。メスを使って切る場所は睾丸の部分。しかも1㎝程度しか切開しません。時間にするとわずか20分ほどで終わる、とてもシンプルな手術です。
この際、大きくお腹を切開したり、他の内臓を触ったりは一切しないので、手術に失敗して嘔吐や下痢をする理由になるとは考えにくいのです。
嘔吐の場合と下痢の場合を分けて説明していきますね。
吐く原因
術後の嘔吐の原因は
- 空腹によるもの
- 麻酔が切れる前に食事をした
- ストレス
- 処方された薬が合わなかった
の4つの理由があげられます。
1.空腹によるもの
麻酔をかけている間、嘔吐物で気管がふさがるのを防ぐために、去勢手術の前日、最低でも12時間の絶食が基本です。去勢手術を受ける時は、事前に必ず獣医さんからの説明がありますよ。
その際、病院によって異なるのが「水」について。食事はダメだけど水は飲んでもいい場合や、食事も水も与えてはダメと、異なる場合があるので事前に確認しておきましょう。
空腹時の嘔吐物の特徴は、透明~黄色い泡状の液体。これは胃液や胆汁が混ざったものです。術後、このような嘔吐をした場合の原因は空腹ですので、心配しなくても大丈夫です。
長い間、胃の中が空だと胃酸や胆汁が逆流。絶食の時間は最低でも12時間で、その後も麻酔が切れるまでの間は食事を与えないように説明があります。
しかし、この麻酔が切れるまでの時間も病院によって様々。しゅりの場合は、帰宅後3時間ほどで食事OKでしたが、知人の猫ちゃんは、帰宅後6時間経ってからと言われたようです。
2.麻酔が切れる前に食事をした
胃液を吐いた後、お腹が空いて可哀想だからと麻酔が切れる前に食事を与えると、今度は、いきなり胃の中に食べ物が入ったことで消化不良を起こし吐いてしまう原因に。
消化不良を起こすと嘔吐物は、食べたものがほとんどそのままで出てきます。たくさん食べた後の嘔吐物は、2㎝くらいの太さの棒状になっていて、食道を通ってきた形のまま吐き出されるといったこともあります。
術後の食事は、いつもの半分以下の量でふやかしてから与えると、消化が良くなるので吐き戻しが少なくなります。キャットフードのふやかし方についてはこちらに詳しく書かれているので、参考にしてくださいね。
3.ストレス
動物病院が大好き、なんて猫ちゃんはあまりいないですよね。多くの場合、入っただけで震えたり、おびえている子がほとんど。わたしの飼っていた歴代の猫たちはみんな大嫌いな場所でした。
そんな恐怖を感じている場所に長時間居ることになるので、猫にとってはストレスの塊。帰宅して安心な場所にいても、術後の痛みで緊張状態は続きます。
もしストレスが原因で吐いている場合は、術後3日ほど落ち着くまでに時間がかかりますが、無理にかまったりせずに、見守ってあげましょう。
4.処方された薬が合わなかった
稀に処方された薬が合わずに吐いてしまうこともあります。何度も吐いてしまう場合は、一度薬をストップして様子を見ましょう。もともとアレルギーがある猫は薬が合わない場合があるので、獣医さんに連絡し、薬を変えてもらうのがおすすめ。
薬をやめても嘔吐が続く場合、原因は他にあります。傷口からばい菌を入るのを防ぐためにも、できるだけ処方された薬は飲み切りましょう。
- 透明~黄色の泡状の嘔吐物は空腹による胃液。食事を再開すれば治まるので、心配しなくても大丈夫。
- 麻酔が切れる前に食事をすると消化不良の原因に。消化しやすいように、ふやかした餌を少量与えましょう。
- 長い時間病院にいたり、痛みでストレスがかかっている場合も嘔吐します。落ち着きが戻るまでそっと見守ってあげましょう。
- 処方された薬が合わない場合もあります。一度薬をやめてみて嘔吐が治まるなら、獣医さんに相談して薬を変えてもらいましょう。
去勢後、猫ちゃんに元気がない場合はこちらを参考にしてみてくださいね。
下痢する原因
術後、下痢をする原因はこちら。
- ストレス
- 処方された薬が合わなかった
- ホルモンバランスの乱れ
こちらの3つが主な理由です。
1.ストレス
嘔吐と同様、去勢手術を受けたことによるストレスで下痢になってしまう場合があります。この場合も嘔吐の時と同じで、ストレスがなくなると落ち着いてくるので、様子を見ましょう。ストレスから消化不良を起こして、下痢になっているケースもあります。
しかし、食事もとらずに下痢をしている場合は脱水症状になる可能性があるので、早めに動物病院へ行きましょう。
2.処方された薬が合わなかった
こちらも嘔吐同様、下痢になる場合があります。一度薬をストップして様子を見てみましょう。わたしの経験上、薬が合わないときは腸内環境が悪くなるので、やわらかい泥状のうんちになる場合が多かったです。
この時、下痢をしているからといって人間用の下痢止めを飲ませたり、餌を与えないのは絶対にしてはいけません。余計に下痢が悪化し、猫ちゃんを苦しめる原因になります。
3.ホルモンバランスの乱れ
去勢手術は、いくら他の臓器を触ってないとはいえ、もともとあった臓器(精巣)がなくなるのでホルモンバランスが乱れます。このバランスが乱れると、一時的に下痢の症状が見られます。
ストレス同様にだんだんと普通の便に戻っていきます。ですが、見分けるのが難しいので、しばらく下痢が続く場合は病院を受診した方が安心ですね。
- 術後のストレスで下痢を起こしている場合、消化不良のケースもある。ストレスがなくなると落ち着くので様子を見ましょう。
- 処方された薬が合わずに下痢をしている時は、やわらかい泥状のうんちになる場合が多い。一時的に薬をストップして様子を見ましょう。
- 手術を受けたことによってホルモンバランスが乱れた時も、下痢を起こす場合があります。ホルモンバランスが整うと徐々に治ります。
去勢手術後は下痢になるだけではなく、ストレスからトイレに行かない猫ちゃんもいます。そんな場合の対処法はこちらに書いてあるので参考にしてみてくださいね。
ここまでは嘔吐や下痢の原因、対処法をお話ししましたが、次の症状の場合は早めに動物病院を受診しましょう。
受診の目安
- 水も飲まずに何度も吐き戻している
- 吐いたものやうんちに血が混ざっている
- ぐったりして震えている
何度も嘔吐を繰り返すと、胃酸で食道が傷つき、食道炎を起こしてしまう可能性があります。この場合、ひどくなると痛みで水も飲めない状態になり、吐いたものに血が混ざるようになります。
術後2日経っても餌を食べないで嘔吐を繰り返すようなら、すぐ病院へ行きましょう。
ぐったりして震えている場合は、とても稀なケースですが、使用した麻酔との相性が悪かった、または処方された薬のアレルギー症状が出ている可能性があります。
歴代の猫たちが長年お世話になっている獣医さんから聞いたことがあるのですが、麻酔との相性が悪く死んでしまう子はかなり少ないですが、ゼロではないとのこと。
最悪の場合死に至ることがあります。ぐったりしていたり、様子が変だなと感じた場合は必ず受診しましょう。たとえ何でもないとしても、受診した方が飼い主さんも安心できますよね。
動物病院を受診する際のポイントは、嘔吐物やうんちを一緒に持っていく事。症状が分かりやすく、スムーズに診察ができるのでおすすめですよ。
まとめ
去勢後の嘔吐や下痢は、去勢後のストレスでよくあること。1~2回程普度なら心配しなくても大丈夫です。
- 嘔吐の場合は、食事を再開するタイミングが重要。獣医さんの指示に従い、消化の良いふやかしたキャットフードを与えるといいでしょう。
- 下痢の場合は、心配だからと猫ちゃんを必要以上に触ったり、声掛けをせずにそっとしてあげましょう。
- ぐったりしていたり、いつもと様子が違う場合は動物病院へ。最悪の場合死んでしまうことがあるので、早めの行動を心がけましょう。
去勢手術を受けるのは分からないことが多いので、不安になるのは当たり前。少しでも心配な事や疑問に思うことがあれば、すぐ相談できる獣医さんとの関係も大切になります。
電話対応可能のところもあるので、かかりつけ医を見つけておくのがおすすめ。素敵な関係を築いて、猫ちゃんの健康を守っていきたいですね。