猫を飼っている人ならば誰もが一度は恐れたことのある『室内での尿マーキング』。わたしも以前飼っていた「しゅり」の尿マーキングには悩まされた一人です。
しゅりは動物病院で尿マーキングに対して相談したところ、去勢手術が効果的だ、と勧められて手術を受けてからは本当にしなくなりました。
しかし一方で、去勢手術の説明時に、去勢手術を受けた猫のうち、1割は尿マーキングがなくならず、繰り返してしまうという話も聞きます。
対策をしているのにマーキングをされた、いつになってもマーキングをやめず、ひどいと感じている飼い主は多くいるのではないでしょうか。
これは悲しい。猫も人も安心して過ごせるように、今回はマーキングの中でも尿マーキングにスポットを当てて、猫飼育歴30年のわたしが説明していきたいと思います。
猫のマーキングはどんなもの?
猫のマーキングの理由や、種類について説明します。
- 自分の縄張りを主張するため
- 安心できる場所づくりのため
- 不安やストレスのため
- 異性の猫にアピールするため
そしてマーキングには尿マーキング以外にも種類があるのです。
- 尿スプレー(尿マーキング)
- 爪とぎ
- 顔すりすり
爪とぎは自分の縄張りを主張するために、顔すりすりは飼い主に自分の匂いをつけ、安心するために行っているんです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
尿スプレーとはどんなもの?
まず、尿スプレーはトイレ以外での不適切な排泄とは違うんです。不適切な排泄は、トイレへの不満からトイレを使用しない。オシッコもウンチもトイレ以外でするというもの。
それに対し、尿スプレーの場合はウンチはちゃんとトイレでします。オシッコの量も少なく、特に尿スプレー時の姿勢に特徴があるんですよ。
①尿スプレーの特徴
尿スプレーというのは、猫がしっぽを立て、垂直面に向かって立ったまま後ろ向きに、少量のオシッコをスプレー状に噴きかける行為です。
そしてその臭いが通常のオシッコよりも強烈であることが最大の特徴なんですよ。
②なぜ尿スプレーをするの?
って思いませんでしたか。それにはこんな理由があったんです。
- 縄張りが荒らされた(ほかの猫が縄張りに入った)
- 知らない人が家に来た
- 新しい家族が加わった(人、動物)
- 新しい家具やトイレなどの環境が変わった
- 飼い主が冷たくなった、留守が多くなった
- 繁殖期で異性の猫を引き付けるため
異性の猫を引き付けるためという性的な理由の場合は、去勢手術で尿スプレーを防ぐことが可能です。
しかしほとんどの場合、猫にとってストレスを感じることが原因となることが多いんです。それをしつけとして治すことは困難ですし、猫にも大きなストレスになってしまいます。
そうなんです。だから去勢手術をしても尿スプレーをしてしまうんです。一体どうゆうことなのか、それを次の項目で説明していきますね。
去勢手術後もマーキングを繰り返す理由
ほとんどの猫が去勢手術をすることで尿マーキングが改善されるのに、1割の猫はどうしてやめないのか。飼い主からしたら、「うちの子はやめない子だったか~」と、がっかりしてしまいますよね。
それにはやめない理由があったんです。
- 高齢になってからの去勢手術
- 多頭飼育
- 生活環境へのストレス
- 窓から他の猫が見える
順番に説明していきますね。
①高齢になってからの去勢手術
去勢手術は発情期を迎える前、生後6か月ごろ受けるのが理想です。ただし、何度も発情期を繰り返し迎えてきた、成熟した大人の猫になってからの去勢手術は、尿スプレーの改善が難しいのです。
②多頭飼育
多頭飼育の場合、猫たちはお互いに自分のテリトリーを守ったり、他の猫よりも自分の優位度を上げたいという欲求が生まれます。これはオス猫に限らず、メス猫の場合も起こります。
単独飼育だと25%の猫が尿スプレーを行うのに対し、10匹以上の多頭飼いでは100%の猫が尿スプレーを行うというデータがあります。
また、新しい猫を迎え入れた際には、飼い主を取られてしまう不安や、縄張りが荒らされるかもしないという不安がスプレー行為の引き金になるのです。
③生活環境へのストレス
生活環境へのストレスは様々なものがあげられます。
- 引っ越しをした、または家具の配置換えや買い替えをした
- トイレを新しくした(砂や場所を変えたなど)
- 飼い主に家族が増えた、構ってもらえる時間が減った
といった生活環境の変化に猫はストレスを感じやすいのです。
なぜなら猫は「いつも通り」であることを好む習性があるからです。自分のニオイで安心する猫は、新しい知らないニオイではソワソワしてしまうので、自分のニオイをつけるためにマーキングをしてしまいます。
そしていつも信頼していた、大好きな飼い主が急に自分に構ってくれなくなったとなったら、猫は自分に興味を持ってほしい、注目してほしいと気を引くために尿スプレーをすることもあります。飼い主が反応することで、余計ひどくなることも。
④窓から他の猫が見える
猫はよく窓から外を眺めていますよね。
室内飼育で他の猫との接触がなくても、窓から見えていることで、自分の縄張りが脅かされると不安になることもあります。
また、発情中のメス猫の鳴き声を聞いたり、メス猫が窓から見えたりと気配を感じることで発情し、尿スプレーが誘発されることがあります。
繰り返すひどい尿スプレーのやめさせ方
いいえ、大丈夫。去勢以外にも猫に尿スプレーをやめさせる方法はあるんですよ。わたしの友人が試して効果があった対策を、これから詳しくご紹介していきますね。
- 縄張りを作ってあげる
- 尿スプレーをする場所からしない場所へ変える
- ニオイを徹底的に除去
- ストレスを取り除く
- フェリウェイを使用する
詳しく説明しますね。
①縄張りを作ってあげる
まず、多頭飼いの場合は広さだけではなく、高低差があることもポイントになります。キャットタワーを設置して、猫たちの縄張りの範囲を広げてあげましょう。
そして尿スプレーをする猫が、安心して過ごせる場所(その子のニオイがするものを置くなど)を作ってあげることをおすすめします。ただし、隠れる場所を作りすぎると、隠れてばかりいる子が出てくるのでほどほどにしましょう。
トイレに関しても、『猫の数+1』というのが基本になります。また、ゴハンの器も猫の数分準備しましょう。
②尿スプレーをする場所からしない場所に変える
猫がどんなところに尿スプレーをするかお話しましたが、逆にこんなところにはしないという場所もあるんです。決まった場所で尿スプレーをする場合には、次の対策がオススメ。
- その場所を嫌な場所にする
- その場所を食事場所や寝床にする
その場所を嫌な場所にする
これはそこに行って尿スプレーをすると、嫌なことが起きるとインプットするんです。
例えば、
- シワシワのアルミホイルを敷く
- 粘着テープを貼る
といった方法があります。これらは猫が上を歩くのを嫌がるので、尿スプレー場所に置いておくと近づかなくんです。
その場所を食事場所や寝床にする
猫はきれい好きなので、食事場所や寝床の近くで排泄はしません。なので、いつもを尿スプレーをする場所に、これらを設置してみるのも対策になるんですよ。
③ニオイを徹底的に除去
猫のオシッコのニオイはなかなか取れないですよね。わたしもこれが苦痛の時間です。ですが、しっかり取り除いておかないと、繰り返しオシッコをするようになったり、部屋中が臭くなったりといいことは一つもないんですよ。
ここは気合いを入れて徹底除去あるのみ。
【洗濯可能なものの場合】
- 酸素系の洗濯洗剤をオシッコのついた場所に塗り込む
- ぬるま湯(40度ほど)に酸素系洗剤を入れる
- ②に①を入れて30分浸す
- 洗濯機で洗濯
これで臭いは大抵とれますよ。
【洗濯できないものの場合】
- オシッコの水分をぞうきんで叩くように吸い取る
- 熱湯やスチームで拭き掃除
- 拭き取った場所にクエン酸水をかけ30分放置
- トイレシートを乗せて足で踏み踏み
- 水をかけてクエン酸水を洗い流し乾かす
クエン酸は100均でも売っているので、すぐに手に入れられる身近なものですよね。それから「クエン酸水」を作っていくのですが、作り方はとっても簡単。面倒くさがりのわたしでもすぐ作れちゃいます。
- まず水100ml用意
- そしてクエン酸を小さじ1(5g)入れる
- よく溶かす
はい、出来上がりですよ~。
これでも取れないときには消臭スプレーを一緒に使うのも手ですよ。こちらは細菌や有機物に触れることで水に戻るので、猫が舐めても大丈夫なんです。安心して使うことができますよ。
④ストレスを取り除く
ストレスは尿スプレーの理由の大きな一つです。まずどんなストレスを抱えているかを把握しないといけません。といっても猫に「悩みがあるなら言ってごらん」と聞くわけにもいきませんよね。
ここ最近のうちで
- 部屋の中で変わったことはあるか(模様替えをした、引っ越したなど)
- トイレ環境は変えてないか(位置や砂など)
- 外に野良猫の姿が見えていないか(縄張りが荒らされる不安)
- 猫とのスキンシップは減っていないか
といった、ストレスになりうる原因を考えてみてください。そして原因がわかったらそれを取り除いてあげることが重要です。
そんな時は、猫のニオイがついたものをそばに置いたり、猫が慣れるまで気を付けてあげることが大切です。
そして、スキンシップが減っているかなと感じたらグルーミングをしてあげたり、抱っこして撫でてあげたり思いっきり可愛がってあげましょう。
外の猫が見えるという場合、曇りガラスに変えたりする方法もあります。が、窓ごと変えることは賃貸ではできませんし、高額になってしまします。そこで賃貸でも便利な、水で貼れる窓ガラスフィルムがおすすめ。
⑤フェリウェイを使用する
猫の口周辺から出ているニオイ物質を、実はフェイシャルフェロモンといいます。
よく飼い主に、猫が顔すりすりするのは、このフェイシャルフェロモンをこすりつけていたのです。猫にとってこの匂いは安心感を与えて、気持ちを落ち着かせてくれる効果があるんです。
このフェリウェイは、人工的に猫のフェイシャルフェロモンを作ったもの。空気中にまくことで、ここは安心できる匂いで満たされてるから、もうマーキングをしなくていいんだよ~と思わせてくれる効果があるんです。
このフェリウェイを使った結果、約85%前後の猫で尿スプレー回数が減ったという研究データも出ていますよ。
ただし、フェリウェイは即効性のあるものではなく、猫がその変化に気付き、ストレスレベルが下がるまで時間を要するものになります。
まとめ
去勢手術を受けた後も尿スプレーを繰り返してしまう原因と対処法についてお話してきました。
猫が尿スプレーを繰り返す原因は
- 高齢になってからの去勢手術
- 多頭飼育
- 生活環境へのストレス
- 窓から他の猫が見える
これらに対策をとることが尿スプレー改善の鍵になります。
そしてその対策として挙げたのが5つの方法でした。
- 縄張りを作ってあげる
- 尿スプレーをする場所からしない場所へ変える
- ニオイを徹底的に除去
- ストレスを取り除く
- フェリウェイを使用する
いますぐできるものも紹介しているので、ぜひ今日から試していただけたらなと思います。
思い切って去勢手術を受けさせたのに尿スプレーを繰り返していることで、憂鬱な日々を送っている飼い主さんと、猫たちがお互いにハッピーになれるようこれらが少しでも参考になってくれると嬉しいです。