ある日、愛猫「ゆね」の定期健康診断のために動物病院へ訪れたときのこと。
病院の壁に貼られたチラシに、ふと目がいきました。そこには「猫の歯周病に注意」という文字が大きな赤字で書かれており、猫のデンタルケアの重要性を知らせるものでした。
と思ったあなた、わたしもチラシを見たときに同じことを思いました。ちょうど健康診断のあとに、獣医さんと話す時間があったので詳しく聞いてみることに。
結果としては、その日を境に”毎日歯磨き“を習慣づけるようになりました。
今回は、猫の歯が抜ける怖い原因や、予防に最適な猫のデンタルケアをご紹介。
キャットフードなどには気を遣っていても、意外とお口のケアについては見落としがちになっている飼い主さんは多いんじゃないでしょうか。
あなたの猫ちゃんの歯は本当に健康かどうか、この機会にぜひ見直してみましょう。
猫の歯が抜ける原因
猫の歯が抜ける原因は3つあります。
- 乳歯からの生え変わり
- 歯周病などの病気
- 老化による衰え
1.乳歯からの生え変わり
人間も、乳歯から永久歯へと歯が生え変わるように、猫にも「歯の生え変わり」があります。
猫によって個体差はあるものの、一般的には月齢3か月~6か月ほどで乳歯から永久歯へと生え変わると言われています。
猫は人間の何倍ものスピードで成長していくことが、歯の生え変わり時期を見てもよく分かりますよね。
2.歯周病などの病気
【歯周病とは?】
主に食べカスが歯に蓄積していき、ガンコな汚れとなってへばりついてしまうことが原因となり、歯の周り(主に歯ぐき)の組織全体が炎症を起こす。炎症が進むと、歯がグラグラして抜ける原因に。
成猫になってから、歯が抜けてしまう原因のほとんどがこの「歯周病」なんです。ただ、この病気が原因で歯が抜けてしまうということは、かなり症状が進行している可能性が。
また、歯周病以外の病気でも、「腫瘍(しゅよう)」が口の中や顎にできてしまった場合、歯が抜ける原因に。人間の癌(ガン)と同じようなもので、悲しいですが健康に気を付けていても、病気になってしまう猫が一定数います。
3.老化による衰え
人間でも、歳を重ねるごとにだんだんと歯が弱くなってきますよね。猫でもそれは同じで、歯を支える土台部分(歯ぐき)が緩くなってきます。
そのため、シニア猫と言われる7歳以降は、キャットフードの種類も見直してあげる必要が。
老猫になってから、自然にポロリと抜けてしまった歯については大きく問題はありませんが、歯ぐきが腫れていたり猫が痛そうにしている場合は要注意。
特に、老猫になってからは噛む力も弱まることから、ウェットフードまたは柔らかくふやかしたフードに切り替えている人も多いと思いますが、水分の多いフードは歯に詰まりやすく、歯周病の原因に。
猫の歯が抜けた時の対処法
歯が抜けた原因によって、対処法は異なってきます。
様子を見て過ごす
歯が抜けた原因が次の二つだと考えられる場合
- 乳歯からの生え変わり(生後約3か月~6か月)
- 老化による衰え(7歳~8歳以降)
この場合は、心配せずに猫の様子を見て過ごしてください。乳歯が生え変わるのも、老化によって歯が抜けてしまうのも自然の摂理。特に問題ないでしょう。
但し、歯ぐきの出血や腫れがひどい場合は、病院に相談しましょう。
抜けた歯に血が…ほんとに大丈夫?
生え変わりや老化のために歯が抜けてしまった場合、大丈夫と分かっていても抜けた歯に血が付いたりしていると、気になってしまいますよね。
でも、心配しないでくださいね。歯が抜ける時に少し血が付いてしまうのは正常な範囲。歯ぐきからの出血も、ほぼ無いかすぐに止まるケースが多いので、様子を見てあげましょう。
ただ、「抜けた部分の歯ぐきから出血が止まらない」場合は異常なサイン。歯ぐきが赤く腫れたり、猫の仕草に違和感がないかチェックしてから、病院で診てもらいましょう。
動物病院を受診する
永久歯なのに突然歯が抜けてしまったという場合で、次の症状が見られる時は早急に動物病院を受診しましょう。
- 強い口臭がする
- ご飯を食べにくそうにしている
- 歯ぐきが赤く腫れあがっている
これは、歯周病やその他口内トラブルが起きているときに見られる症状です。歯周病菌は口の中だけにとどまらず、細菌が血流にのって身体全体に行き渡ってしまい、心臓・腎臓・肝臓などで病気を引き起こす原因に。
グラグラしている歯は無理に抜かない
もしグラグラしている歯に気づいた場合は、これから抜けてしまう可能性があるとはいえ、飼い主さんの判断で無理に抜いてしまうことは大変危険です。
きちんと抜歯の処置を施さないと、化膿してしまったりばい菌が入る可能性大。気になっても、絶対に無理に抜いたりしないでください。
その代わり、早めに動物病院を受診し、獣医さんの診察を受けましょう。抜歯するならば、全身麻酔で行われることになります。
歯が抜けるのを防ぐために!欠かせないデンタルケア
できることなら、歯が抜けたりすることなく、お口の中も清潔に保ってあげたいですよね。そこで日ごろからできる猫のデンタルケアについてご紹介していきます。
歯が抜ける前に今すぐチェック!
まずは、現時点であなたの愛猫に歯周病などの疑いがないか、チェックしてみましょう。
【歯周病・その他口内トラブルチェック】
- ご飯を食べるのにかなり時間がかかる
- 硬いものを食べたがらない
- 強い口臭がする
- 歯ぐきが赤くブヨブヨとしている
- 口の中(歯ぐき)から出血している
- 歯がグラグラとしている
これらの症状が出たら、歯周病・腫瘍(しゅよう)など病気の可能性があるため、歯が抜けていなくても早急にお医者さんに診てもらいましょう。他にも気になる仕草があったら、併せて伝えてくださいね。
【病院で伝えること】
- 猫の年齢
- 口の中の症状
- その他気になる仕草など
歯磨きを習慣化する
歯磨きをすることで、飼い主さんも猫の歯をチェックする習慣がつくため、お口の中の異変にもいち早く気づくことができるでしょう。
特に、老猫になり歯への負担が少ない柔らかいフードがメインになっている場合、歯に食べカスが詰まりやすくなっているため、「毎日歯磨き」を目標にしたいところ。
ただ、最初は歯磨きに慣れていないため嫌がる猫が大半だと思います。そこで、歯磨きは次のステップで行ってみてください。
【猫の歯磨き手順】
ステップ1 | 猫の頬を優しく撫でる。慣れてきたら徐々にお口周りを指でモミモミする。お顔のマッサージをしてあげるように、優しく。 |
ステップ2 | 慣れてきたら、唇をめくる。触らせてくれたお礼に、ほめながらご褒美をあげる。 |
ステップ3 | ステップ2で機嫌が良さそうにしていたら、猫の歯を触る。指で、歯を優しく撫でるように。 |
ステップ4 | 歯磨き用ペーストを指につけて、猫の歯に直接塗る。そっと優しく。 |
ステップ5 | 猫用歯ブラシに歯磨き用ペーストをつけて、歯の外側から順番に優しく磨く。※小刻みに動かすと汚れが落ちやすい。 |
もちろん、一気にステップ1から5まで進めなくても大丈夫。わたしはステップ1から3までをみっちり時間をかけて、一週間程度は行いました。
今はすっかり歯磨きに慣れてしまったので、毎回ステップ1から順番に行っていません。参考までにですが、わたしが愛猫「ゆね」の歯磨きをするまでの流れは次の通り。
- 「ゆね」がリビングでくつろぎモードなのを確認
- 近づいて顔をナデナデわしゃわしゃを数分間(わたしの癒しタイム)
- お口を優しく開いて歯磨き開始
「口に触られても大丈夫」という、猫の絶対的な信頼を得られると、後はこちらのもの。猫も慣れてくれて、最後までスムーズに歯磨きが進みますよ。
しかも、最近ではステップ3まで進めたら、指にはめれるタイプの歯磨きグッズに切り替えるだけで、歯磨きができちゃいます。
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ただ、指に巻き付けるタイプだと、どうしても太くなってしまって小さな猫ちゃんの口には入りづらかったり、猫にとってストレスになることも。
そんな場合は猫用歯ブラシを使うことをおすすめします。
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- 口に触られることに慣らす
- 嫌がったら無理に続けない
- 猫がリラックスしているタイミングを狙う
デンタルケア商品に頼る
もちろん歯磨きをする方が猫の歯は綺麗になりますが、歯磨きがなかなかうまくいかない時ってありますよね。
わたしも最初の頃、歯磨きを習慣化させるまでとても苦労しました。本音を言うと、「もう面倒くさいな」と感じたこともしばしば。
ただ、そういう時は無理に歯磨きを続けるのではなく、デンタルケアグッズを使っていました。
飼い主さんも息抜きをしながら続けられるように、わたしのおすすめグッズをご紹介しちゃいます。
これは「またたびの実」が入っていて、猫の食いつきもなかなか良く、愛猫もわたしもお気に入りのアイテム。
小さいネズミのぬいぐるみ感が可愛くて、歯磨き目当てというよりもおもちゃにどうかなと購入。楽しく遊んでくれてるし、ついでに歯の汚れも防げるため一石二鳥です。
歯が悪い猫におすすめの食事方法
どんなに気を付けていても、病気になってしまったり、老化で歯が悪くなってしまうことはありえますよね。
そこで、歯が悪い猫へ向けた食事方法をご紹介します。
歯周病の場合
歯周病が原因で歯が悪くなってしまった猫は、口の中が痛いことからあまり食事を取りたがらない傾向にあります。
まずは、歯周病の治療を開始することが大前提ですが、治療が終了するまでの食事は出来るだけ水分を多く含んだ、柔らかいフードを与えるようにしましょう。
- ウェットフード中心にする
- ドライフードをすり潰す(ミキサーなどで砕く)
- ドライフードを水やミルクをかけて柔らかくする
ウェットフードを購入するときは、「総合栄養食」という表示のものをきちんと選べば、ウェットフードだけでも栄養が不足するということはありません。
これまでドライフード派だった人は少し抵抗があるかもしれませんが、治療が終わるまでの間と考えて取り入れてみるのも良いかもしれませんね。
また、ドライフードを水やミルクでふやかしてあげるというのも、簡単にできる方法の一つ。餌をふやかす手順については次の通りです。
- 人肌ぐらい(約35度~約37度)のぬるま湯(またはミルク)を用意
- ぬるま湯をフードが浸るぐらいまで入れる
- しばらくするとフードがぬるま湯を吸ってふやけてくるので、柔らかさが足りない場合は少しずつぬるま湯を追加
- 指で押してみて完全にフードが柔らかくなったら完成
- ミルクは必ず猫用のものを使用する
- ミルクを入れる分、カロリーオーバーにならないよう気を付ける
口の中が痛いせいで、食事を取らない期間が続くと、次は猫の胃腸や身体に負担がきます。できるだけ餌を食べるように、工夫してあげましょう。
老猫の場合
噛む力が弱くなってしまったり歯が悪い老猫には、できるだけ食べることが負担にならないような食事を用意してあげなくてはいけません。
また、食べやすさを考えてあげるのはもちろんのこと、栄養面でもさらに気を遣ってあげる必要が。そのため、猫の成長に合わせたキャットフード選びが重要です。
【老猫用フードの特徴】
- 老猫は代謝が低いため、ローカロリー
- 消化吸収を助ける原材料を使用
- 腎臓の負担を軽くする栄養バランス
- 粒が小さい
まだ歯が残っている猫
ふやかした餌や、ウェットフードなど水分の多い柔らかい餌が食べやすくてオススメですが、歯がある場合はできるだけ「ドライフード」をあげましょう。
ドライフードは、歯に食べカスが残るのを防ぐ役割があります。また、全てウェットフードにしてしまうと、噛む力がどんどん弱まる一方に。
歯がほとんど無い猫
猫は元々、あまり食べ物を噛みつぶさずに丸呑みする習性があることから、歯が全くなくなってしまっても、ご飯を食べることはできます。
でもやっぱり、歯が悪くなってしまうと、健康だった時のようにドライフードをカリカリと食べることは難しいですよね。
そのため、歯が無い猫にはウェットフードや、ふやかした餌を中心に食事を用意してあげましょう。
最近では、高齢猫用のウェットフードの種類も充実しています。無理をしてドライフードをあげ続けるのではなく、猫に合った食事に切り替えてあげてください。
老猫になり、ご飯を食べなくなったからといって食べやすい「おやつ」ばかりあげてしまうと、栄養バランスが乱れる原因に。一度に食べる量が減ったのならば、餌を与える回数を増やすなどの工夫をしてみましょう。
まとめ
猫の歯が抜ける原因3つ
- 乳歯からの生え変わり
- 歯周病などの病気
- 老化による衰え
子猫の歯の生え変わりは、月齢3か月~6か月ほどで始まります。また、老猫と言われる7歳以降の猫も、老化が原因で歯が抜けることが。
それ以外の場合は、なんらかの口内トラブルが原因で歯が抜けている可能性が高いため、動物病院で診てもらいましょう。病院を受診するか悩んだら、次の症状を判断基準にしてください。
- 強い口臭がする
- ご飯を食べにくそうにしている
- 歯ぐきが赤く腫れあがっている
また、日ごろから猫のデンタルケアを心掛ければ、健康な歯を保つことができます。この機会に、歯磨きを習慣化させましょう。
ただ、どんなに気を付けていても病気や老化などが原因で、どうしても歯が悪くなってしまう場合もありますよね。今すでに歯が悪いという猫に、おすすめの食事方法はこちら。
- ウェットフード中心にする
- ドライフードをすり潰す(ミキサーなどで砕く)
- ドライフードを水やミルクをかけて柔らかくする
ただ、柔らかいフードは歯に残りやすくなってしまうため、「毎日歯磨き」を目標にして、愛猫の健康のためにもきちんと管理してあげましょう。