愛おしい猫ちゃんが、将来病気になるリスクを下げることができたり、ストレスを減らすことができる手術があると知って、去勢手術を受けることにした飼い主さん。
無事に手術を終えて帰宅したのは良いけれど、猫ちゃんのつやつやな毛並みが乱れているではありませんか。
そう思うところですが、ちょっと注意が必要です。元気もあるし、術後の経過が安定していても、実は猫ちゃんの心と体は大きなダメージを受けているのです。
心身ともに元通りになるまでの間、猫に見られる様子やお風呂に入れるタイミングなど、いくつかの気を付けるポイントを知っておけば安心です。今日は最近手術を受けた友人の体験談も交えて、お伝えします。
去勢手術を受けるメリット
メリットが大きいと言われても、一生に何度もあるわけではない手術を受けさせるのですから、納得できるものでないと嫌ですよね。
実は猫の体だけでなく精神的な部分にとっても、飼い主にとっても、良いことがたくさんあるんです。
最大のメリットは病気の予防
そもそも去勢とは、精巣を取ってしまうことです。精巣は高齢になった時に、腫瘍化してしまう精巣腫瘍になる場合があるのです。切除をすることで、その可能性をなくすことができます。
また、精巣腫瘍だけでなく、前立腺の病気の発生率も下げることができ、オスにもまれに起こる乳腺腫瘍も防ぐことができるのです。
年齢を重ねていくと、いろいろな病気にかかることも増えますよね。ホルモンの影響でかかる可能性がある病気を、子猫のうちから予防できることは、大きな安心に繋がります。
将来かかる可能性がある病気を減らすことができる
ストレスの軽減
外から聞こえてくる発情期のメス猫の声。それに誘われてドキドキしながら窓の辺りをうろうろする愛猫。
想像するだけでこちらも切なくなってしまいませんか。猫にとっては出会うことができなければ、大きなストレスになってしまいます。
不要な発情を避けることで、性的な欲求不満によるストレスをなくすことができるのです。
飼い主にとって一緒に暮らしやすくなる
発情することによって大きな鳴き声を出したり、マーキングをしたりという、飼い主にとってはちょっと困ってしまう行動だって抑えることができます。
お家の中で一緒に暮らす家族ですから、お互いに心地よく過ごせるのならそれに越したことはないですよね。
同居の猫ちゃんがいる場合、なわばり意識やホルモンバランスの乱れから、喧嘩をすることもあるかもしれません。去勢手術後は怒りっぽさが消えて穏やかになり、喧嘩が減ったという声も多く聞かれます。
発情と猫の行動について、詳しくこちらで説明しています。
去勢手術を受けるデメリット
繁殖ができない
子猫のうちに去勢手術を受けてすくすくと成長。
すっかり大人になった猫ちゃんをみて、この子の赤ちゃんを見てみたいわと思っても、残念ながら叶いません。
肥満になりやすい
オスとしてのホルモンが分泌されなくなるため、基礎代謝が落ち筋肉質な体つきではなくなり、太りやすくなります。
少しぽっちゃりしていても、可愛いから気にしないと思ってしまうところですが、肥満が原因で病気になってしまってはいけません。
フードに気を付けて体重管理もしっかりしていきましょう。
詳しくはこちらでご紹介しています。
麻酔を打つリスクがある
去勢手術は全身麻酔で行われます。100%安全な麻酔はないので、麻酔は避けたいところですが、手術の為には欠かせないものです。
麻酔薬にアレルギーをっている場合は、副作用により心拍数の乱れや、血圧の低下を招く恐れがあります。また、心臓、肺、肝臓、腎臓に疾患がある場合には、体にとって強い負担となってしまうのです。
そのため、手術前の検査がとても重要になってきます。疾患がないことを確認した上で行うことで、リスクを大きく下げることができるのです。
不安に思うことは、手術を受ける動物病院の先生に相談しましょう。納得ができるまで説明をしっかりと聞くことが大切です。
実際の去勢手術について
最近猫ちゃんの去勢手術を経験した友人から、手術を受けることに決めた日から術後まで、だいたいの流れを教えてもらいました。
まずはかかりつけの動物病院に相談。
生後6か月頃が、手術を受けるタイミングとして望ましいとのことで、心の準備と洗濯ネットに慣れる練習を始めたそうです。
急に逃げだしたり暴れたりするのを防ぐため。いつもは穏やかな猫でも、病院は緊張してしまって、いつもでは考えられない行動をとることもあります。念のために入れてくるよう、病院の先生からアドバイス。
ついにその時が訪れました。
友人の猫が手術を受けた病院は、事前に問診や触診などの身体検査があります。そこで手術当日の流れや手術内容、麻酔について、注意事項などのお話を聞きます。
食事については、前日の午前0時までに済ませるように言われたそうです。なぜなら、手術時に胃の中に食べ物が残っていると、全身麻酔をかけたときに誤嚥を起こしてしまう可能性があるからです。
入院前
朝ごはんをもらえず、緊張気味の家族の様子に異変を感じた友人の猫。これから起こることを知ってか知らずか、そわそわした様子だったとのこと。
すっかり慣れた洗濯ネットに入っていよいよ出発です。
病院につくと再度身体検査があり、血液検査も行った上で手術の可否を判断。その日の体調もあるでしょうし、しっかり判断してもらえたら安心ですね。
無事に預かってもらい、夕方のお迎えまでは心臓がバクバクして大変だった、と話していました。
病院では
全身麻酔で眠っている間に、皮膚切開をして精巣を摘出します。
猫は傷口の癒合が早く、縫ってしまうと気になって舐めてしまうことも多いため、縫合は行われないことが多いです。
手術時間はだいたい20分~25分で終了します。
退院
去勢手術の場合、術後の様子や病院によっては一泊のところもありますが、友人がかかっていた動物病院は日帰りでした。
それは慣れない病院で過ごすよりも、リラックスして過ごすことができる自宅での療養が望ましいという考えから。
わたしたち飼い主にとっても、自宅で見てあげられることはとても安心ですし、嬉しいことですよね。
友人が麻酔から目覚めた頃迎えに行くと、猫は少しぼーっとしている様子だったそうですが、割と元気だったそう。化膿止めの薬をもらって、無事帰宅です。
帰宅後に気を付けたいこと
任された自宅療養、手術を終えた猫ちゃんにしてあげられることはなんでしょう。
それは、まずはあたたかく見守ること。
猫ちゃんは、長時間家族から離れ、怖くて痛い思いをしてきました。元気そうに見えても大きなストレスを抱え、心身ともにとても疲れていることでしょう。
お家に帰っても、隅に隠れてしまって出てこないこともあるでしょう。
無事に帰ってきてくれたことが嬉しくて、ぎゅうっと抱きしめてたくさん遊んであげたい気持ち、わかります。でも、そっと様子を見ていてあげてください。
呼吸がおかしい、出血がとまらない、ぐったりしているなど、心配な症状があったときはすぐに、かかりつけの動物病院に連絡するようにしましょう。
手術後の猫に見られる様子
ずっと寝ている
疲れていますから、2、3日はずっと寝ているということも多くあります。呼吸や様子がおかしくないか、しっかりと観察しましょう。
食欲がない
入院時のストレスが大きく関係している場合があります。
2,3日様子を見てみましょう。食事の再開についてもこちらでくわしく紹介しています。
嘔吐・下痢の症状がある
こちらもストレスで起こる場合があります。また、化膿止めが体に合わないということもあるので、症状が重い場合は迷わず、かかりつけの動物病院に相談をしましょう。
傷口を舐める
舐めすぎると傷口が開いてしまう場合があります。
エリザベスカラーを使うようにお医者さんの指示があった場合は、言われた通り正しく使いましょう。
いつも通り元気
中には手術前と何も変わらず、元気いっぱいの猫もいます。
そうはいっても手術後には変わりません。傷が落ち着くまで、2,3日は激しい運動は控えるように見ていてあげましょう。
お風呂はいつから入れるの?
水があまり得意でない猫ちゃんも、多いのではないでしょうか。ましてや、6か月前後の子猫であれば、お風呂の経験が少ないという子も少なくないはず。
お風呂に入るのは、猫にとってかなり体力を使う一仕事です。手術後の疲れた体には負担も大きいので、まずは体力が回復するのを優先させましょう。
猫のご先祖は、砂漠など水の少ない地域で暮らしていたため、毛皮の油分が少なく、水をあまりはじきません。そのために、一旦水に濡れるとなかなか乾かないのです。
砂漠など寒暖差の少ないところでは、濡れた体は体温を奪われて、命の危険に直結します。そのため、水が苦手な子が多いとされています。
また人間と同じ様に、猫も大きなストレスや体のダメージは、一時的に免疫を下げてしまうことがあります。免疫力が低くなることで、感染症にかかってしまう場合があるのです。
傷口が開いてしまったり、細菌が入って病気になることがないように、お風呂は2週間程度経ってから入れてあげるようにしてください。縫合していて抜糸をする場合は、抜糸後3日程で入浴可能です。
心配な場合は、動物病院の先生に相談してからにしましょう。
手術直後は免疫力が低下しているかもしれません
友人の猫は、帰ってきたときは元気そうだったものの、疲れていたのか少し吐いてしまったそうです。
汚れてしまった被毛を綺麗にしてあげたいけれど、お風呂に入れてあげられない。そんな時に役立ったものを教えてもらいました。
それは、蒸しタオルと体拭きシート。
体拭きシートは、術後でなくてもシャンプーをするほどでもない時にも使えますよね。水が使えない災害時にも役立つので、わたしは避難持ち出しバッグにも一つ入れています。
まとめ
- 猫の病気を予防し、ストレス軽減、飼い主も助かる去勢手術はメリットがいっぱい。
- デメリットについても納得した上で手術を受けるか決めましょう。
- 手術は全身麻酔をして20分程度で終了します。
- 手術を終えた猫ちゃんをとにかくいたわってあげましょう。お風呂は術後2週間を目安に。
ずっと一緒にいたいから、予防できる病気は予防して、ストレスなく幸せに暮らして欲しいですよね。
もちろんデメリットはありますが、メリットがとても大きいのが去勢手術。手術は長い猫生のうちで、この一度きりになることを願っています。
この手術を乗り越えたのですから、飼い主さんの愛情をたっぷり受けて、心身ともにすっかり回復したその先には、きっと穏やかで楽しい毎日が待っているに違いありません。