オスの猫ちゃんを飼っている方は、こんな経験したことありませんか。
急にじゃれてきたなと思いきや、腕の上にまたがり、がっちりホールド。そして手首をガブリ。
これは猫の「マウンティング」というもの。一般的には交尾の際に見られる行動で、繁殖を考えていない場合、去勢手術をすると治まると言われています。
ですがわたしの知人の猫ちゃんは、去勢した後もマウンティングが続いていて困っている様子でした。今飼っているメス猫「ゆね」の前は、オス猫の「しゅり」を飼っていたので、その経験から知人にアドバイスをすることに。
その際、役に立ったと喜んでもらえたので、今回は皆さんにもお伝えしたいと思います。
実はこのマウンティング、オス猫だけではなく、メス猫もする行為なんですよ。まずはマウンティングにも種類があるので一緒に見ていきましょう。
マウンティングをする理由
猫がマウンティングをする理由は主に3つです。
- 優位性誇示(ゆういせいこじ)
- 転移行動(てんいこうどう)
- 疑似発情、交尾の練習
結論から言うと、去勢手術を行うことで治まると言われているマウンティングは、3つ目の疑似発情、交尾の練習のみです。去勢手術後もマウンティングで悩んでいる方は、優位性誇示と転移行動のどちらかのマウンティングの可能性があります。
1.優位性誇示
自分の方が上とアピールするために、弱い者の上にまたがるマウンティング。これが優位性誇示です。これは猫に限らず犬や他の動物でも見られる行動で、発情期に関係なくします。
この上下関係を示すマウンティングは、多頭飼いをしているとよくみられる行動で、オス猫に限らずメス猫でも行います。
猫は単独行動をする生き物。誰かに従うということはあまりないですが、縄張りはとても強く大事なもの。他の猫に縄張りを譲らないためにも「自分の方が強いから出ていけ」という風にマウンティングをしてアピールをします。
悲しいですが、人を甘く見ている猫ちゃんは、飼い主さんにもやってしまうことがあります。
2.転移行動
あなたの猫ちゃんは、猫じゃらしで遊んでいて足を滑らせてしまい笑われた時や、高いところに移動しようとしたのにうまくジャンプできなかった時など、再度挑戦せずにふら~っとどこかに消えてしまうことありませんか。
これが転移行動。猫は少しストレスを感じると、今までしていたことをやめ、気持ちを落ち着かせるために他の行動をするのです。
気を紛らわせるために「ちょっとぬいぐるみにでも乗っかっておこうか」という感じ。
人間でいうと「ちょっとコーヒーでも飲もうかな」程度の軽い気持ちでやるのが特徴です。ちなみに、遊んでいる時に見られる毛づくろいやあくびも、この転移行動の一つなんですよ。
3.疑似発情、交尾の練習
オス猫には決まった発情期はなく、発情したメス猫のフェロモンに反応し興奮すると言われています。なので実際にはオス猫1匹しか飼っていなくても、外から入ってきたフェロモンの匂いに反応し、疑似発情している可能性があります。
そして疑似発情すると、その流れで交尾の練習に突入。飼い主さんの腕の上にまたがったり、毛布をかじりながらフミフミ。誰に教わることなく交尾の練習できる猫の本能ってすごいですよね。
一般的に去勢をすると治せるマウンティングは、この疑似発情、交尾の練習行動によるもの。性ホルモンの分泌をなくせば治まる行動です。
去勢をすると人間の都合で体を痛めるので、猫が可哀想と思うかもしれません。しかし、発情は猫にとって大きなストレスとなり、負担になることが多いです。このストレスが原因で病気になることも。
繁殖を考えていないのであれば、獣医さんと相談し、手術を受けるのも必要だと思います。去勢手術を受けると、猫ちゃんにとっても嬉しい変化があるんですよ。
去勢後、猫に現れる変化とは
- 発情時の大きな鳴き声がなくなる
- 発情期のストレス軽減
- 性格が穏やかになる
- マウンティングやスプレー行為がなくなる
ホルモンバランスが変わるため、外から聞こえる発情期のメス猫の鳴き声に反応して、大きな声で鳴くことがなくなったり、発情に対してのストレスがなくなります。結果的に性格が丸くなる猫ちゃんが多いです。
わたしの飼っていたオス猫「しゅり」も、とても穏やかな性格になったのを覚えています。
そして性ホルモンがなくなるので、オス猫がメス猫にアピールするスプレー行為や、マウンティングはしなくなります。
ちなみにメス猫もオス猫同様、避妊手術をすると変化があります。こちらに詳しく書かれているので参考にしてみてくださいね。
去勢後もマウンティングが残る確率は10%
多くの場合、去勢手術からだいたい数カ月~1年くらいでマウンティング行動はなくなります。術後は焦らずに様子を見てあげてくださいね。
しかし残念ながら去勢をしても、約10%の猫はマウンティングをやめられないんです。
去勢をしたら治るマウンティングは、性ホルモンによる疑似発情、交尾の練習とお伝えしましたが、去勢を受ける前に交尾経験があると記憶がよみがえり、本能的にマウンティングしてしまうことがあるのです。
繁殖行動は本能なので、去勢後も続く場合、やめさせることはとても難しいです。
この本能でしているマウンティングの場合、完全にやめさせることはできませんが、少しの工夫で抑えることは可能なんですよ。去勢しても治らない優位性誇示と転移行動の場合も含めて、マウンティングのやめさせ方を見ていきましょう。
マウンティングのやめさせ方
優位性誇示や転移行動の場合
優位性誇示は猫の上下関係を示すためにマウンティングをします。転移行動は上下関係ではなく物に対してマウンティングをすることが多いですが、相手が飼い主さんなら対処可能です。
この2つが特にやめさせるべきマウンティング。
- 飼い主さんに対し噛みついたり、攻撃的な態度をとる
- クッションなどを噛み、ボロボロにしてしまう
こういったマウンティングをする猫は、家の中で一番偉いのは自分だと思っています。飼い主さんの名誉を守るためにも、しつけでやめさせるべきです。放っておくとどんどんエスカレートし、手が付けられなくなるので、早いうちに解決しましょう。
飼い主さんに対してするマウンティングをやめさせる方法は、あくまでも嫌われない程度に、猫ちゃんの上からやさしく覆いかぶさるようなしぐさをすること。人が猫にマウンティングをするのです。
覆いかぶさるときに注意したいのが、嫌われないように、名前を呼びながら可愛がるようにさりげなくすること。猫に一度でも怪しいと悟られると、近づくだけで逃げられてしまいます。帰宅時のお出迎えなど、褒める時にさりげなくするのがコツです。
物を噛みボロボロにしてしまう場合は、猫にストレスがたまらないように遊んだり、体を動かしてもらうと疲れてマウンティングをする欲求が減ります。
落ち着ける場所を確保するだけでも、猫のストレスは軽減されると言われています。部屋の隅に段ボール箱などを置いて落ち着ける場所を作ると、お金もかからず猫のストレスも軽減。
疑似発情、交尾の練習の場合
先にお話しした通り、この疑似発情、交尾の練習の場合、猫が本能で行っているため、やめさせるのはかなり難しいです。
マウンティングをする対象が飼い主さんの場合は、爪や歯で怪我をする可能性があるので、まずは人から物へマウンティングの対象を移行するのがいいと思います。
以前飼っていたオス猫「しゅり」も去勢手術後、わたしに対してマウンティングをしてきましたが、その際できた傷跡はまだうっすら残っています。猫の爪痕って結構残っちゃうんですよね。
傷がひどくなる前に試したのが、わたしのにおいがついているTシャツ(捨てる前のお古のもの)に綿を詰め、腕と同じような太さに成形。それをおもちゃとしてしゅりに与える方法。
すると見事にわたしの腕からそのおもちゃにマウンティング対象が変更。次第に去勢手術の効果が表れ、マウンティングもすることがなくなりました。知人もこのおもちゃでマウンティングが落ち着いたようです。
この方法を試しても効果がなかったり、マウンティングがひどくて困っている方は、一度獣医さんに相談してみてください。
まとめ
去勢手術後、やめさせることができるマウンティングは性ホルモンの分泌による疑似発情、交尾の練習でしたが、約10%の猫ちゃんは効果が出ない事があります。
そして猫のマウンティングには種類がありました。まとめるとこちらです。
- 優位性誇示(ゆういせいこじ)→猫の上下関係や縄張りを表す
- 転移行動(てんいこうどう)→気分を落ち着かせる行動
- 疑似発情、交尾の練習→メス猫の発情期に合わせて起こるオス猫の本能
それに合わせてマウンティングのやめさせ方もお伝えしました。
- 優位性誇示、転移行動の場合、飼い主が猫よりも上だということを示す必要あり。猫の上に飼い主が覆いかぶさり、飼い主が猫にマウンティングをとる。
- 疑似発情、交尾の練習の場合、去勢手術後もマウンティングが治るまで時間がかかるので、焦らず見守るのが大事。交尾の練習の場合、爪や歯で怪我をする恐れがあるので、人から物へマウンティング対象を変換するのがおすすめ。
去勢手術は猫のホルモンバランスが乱れたり、心や体に様々な変化があります。術後の猫ちゃんの体をいたわり、見守ることも大事。
なぜマウンティングをするのかきちんと理解すると、きっと困っていた生活から、楽しい猫ちゃんとの生活に変わりますよ。