先日、友人からある相談を受けました。
「すでに生後6ヶ月の時に、去勢手術を終えているオスの猫ちゃんが、突然の尿マーキングをするようになり困っている」と。
実は去勢手術をしても、尿マーキングをする場合があるんです。その最大の理由、それはストレス。
猫がマーキングのために尿をかける、通称『尿スプレー』以外にも、猫たちによるマーキングは日常的に行われています。
こうした猫たちの行動は自分たちの感情や体調、また不安やストレスなどをマーキングで示してくれているのです。
猫はストレスに弱い動物なので、ストレスを表してくれているにもかかわらず、こちら側が気づいてあげられないとますますストレスがたまり、最悪の場合寿命を縮めてしまうこともあるのです。
なのでただ、「また、マーキングして困った子ね」ではなく、なぜマーキングをしているのか原因をさぐる必要があるんです。
猫が発信しているメッセージをしっかり受け取って対応することで、お互いに気持ちよく過ごせる環境を作っていけると思います。
今回はマーキングをする理由と種類、そして誰もが困る排泄の臭いの除去方法などを大公開しちゃいます。
猫がマーキングをする理由
そもそも猫は、なぜマーキングの習性があるのでしょう。
マーキングって聞くと、自然界で生きている動物たちが、自分の縄張りを守るために行うものという認識ですよね。
実は猫も人との生活に馴染みながら、なおかつ野生本能を残したまま暮らしています。
自分が安全に過ごせる場所である、自分の縄張りを守るためにマーキングを行っているんです。
- 自分のテリトリーのため(安全だと思える場所作り)
- 他の猫に会いたくないので、近づかないでもらうため(争いが大嫌い)
- 発情したメスを引きつけるため
本来、動物は人間よりもはるかに嗅覚に長けています。これは猫も一緒で、自分の匂いをつけて縄張りを守ったり、安心できる場所を作ったりしているのです。
驚くことに猫のオシッコには色々な情報が詰まっていて、年齢や性別、体の大きさまでわかってしまうんです。
猫たちは喧嘩が大嫌い。なので他の猫と鉢合わせにならないように、ここを今わたしが通っていますよ~と匂い付けをしながら歩いているんです。
室内飼いの猫がなぜマーキングをするの?
猫のマーキングは本来自分の縄張りを守る、他の猫との遭遇を避けるために行うことがわかりましたね。
さて、これを読んでくださっている方の中にはこう思っていませんか。
マーキングにはテリトリーを守る以外にも、様々な情報を私たちに伝えてくれる手段でもあり、その方法や理由はいくつかに分けられるんです。
1、尿スプレー
尿スプレーとは、少量の尿を、垂直なものにお尻を向けて立ったまま噴射するというものです。普段のおしっこを何倍にも濃縮させて数日間放置したような、かなり強烈なアンモニア臭がしますよ。
- 他の猫や動物、人が新たに家族に加わる。
- 引っ越しなどの環境の変化
- 窓から他の猫が見えている
- 飼い主の態度が冷たくなった、留守が増えた
- 多頭飼育
- 繁殖期
猫はストレスに弱い動物だとお話しました。
家族に動物が増えると言うことは、猫にとって縄張りを荒らされるかもしれないと大きなストレスになります。2匹目以降を迎えるときには慎重に行いましょう。
猫は「いつもと同じ」を好む動物。
引っ越しだけではなく、ソファの配置換えやカーテンを変えただけでも、猫は縄張りが変化してしまったので不安になるのです。
いつも通りの居場所や、飼い主の匂いのついた服を近くに置くなど、猫が安心できるスペースの確保をしましょう。
繁殖期にはメスを引きつけるために尿スプレーをすることもあるんです。
ちなみに猫のオシッコにはタンパク質が含まれているのですが、このタンパク質に悪臭成分が含まれています。良質なタンパク質をとることで分泌が増量します。
そのため、「オシッコが臭い→悪臭成分が多く分泌→良質なタンパク質が摂れる→狩りがうまい→強い猫、モテモテ」なんて面白い話もあるんです。
2,爪とぎ
実は肉球から匂い(フェロモン)が出ていて、「ここはわたしの場所だぞー」と自分の縄張りとアピールしているんですよ。
よく熊が相手よりも体が大きいと思わせるために、相手より高い場所に爪で印をつけるというマーキング方法を聞きますが、猫も一緒なんです。
頑張って背伸びをして「大きいんだぞー。喧嘩だって強いんだぞー。」とアピールしているんです。
- マーキングのため
- 鋭い爪の維持
- 気分転換
- 飼い主にかまって欲しいとおねだり
3,顔すりすり
よく猫は飼い主の足や、ソファ、壁などにすりすり顔をこすりつける行動をしてますよね。
猫は自分の縄張りに自分の匂いをつけて、安心していたいのです。頬やあごからでる匂いをすりすりとこすりつけることで、匂いを縄張りの至る所につけていくのです。
そのため飼い主が仕事から帰ってきた際や、お風呂あがりといったいつもと違う匂いをさせていると、安心するために自分の匂いをつけにくるのです。
それ以外にもこのすりすりは、仲間への挨拶や飼い主へのおねだりで行うこともありますよ。
マーキングとはいえ、飼い猫ゆねがすりすりしてくるとやっぱり嬉しいもので、ついつい話しかけたりしてしまいます。
尿スプレーと不適切な排泄の違い
尿スプレーと不適切な排泄、一見どちらもトイレ以外での排泄ですよね。オシッコの量やウンチはどこでしているかなどで違いがわかります、説明していきますね。
特徴 | 尿スプレー | 不適切な排泄 |
姿勢 | 立ったまま | 座って、または体を曲げて |
量 | 少量 | 多量 |
トイレの使用 | ウンチはトイレ | ウンチもオシッコもトイレ以外 |
場所 | 垂直面、決まった場所 | 好みの場所(素材) |
不適切な排泄の原因として以下が考えられます。
- トイレへの不満・・汚れていたり、猫の砂や容器が変わった、トイレの数が足りない等
- トイレへの嫌悪感・・安心できる場所じゃない、以前トイレで嫌なことがあった(排泄中大きな音がして驚いた、排泄時に痛かった)等
猫のマーキングで困ったときの対処法
尿スプレーはかなり強烈な臭いだとお話しましたが、ソファやお気に入りの服にかけられたらひどく落ち込んでしましますよね。
わたしも高校時代、引き取った捨て猫しゅりが去勢手術をして尿スプレーをやめるまでは、何度も家族みんながその臭いに悩まされていました。
今の我が家ではゆねが、壁や柱にガリガリした爪とぎのあとがちらほらありますよ。なので今以上にひどくならないように対策をしています。
猫にとってマーキングが必要なことであることがわかりましたが、実際家の中でのマーキングは困りもの。そんなときの対策として考えられるものをあげてみましょう。
1、尿スプレーへの対策
マーキングの中で一番困るのがこの尿スプレーですね。
しかし尿スプレーは縄張りが荒らされるかもという、不安や性的な理由で行っているものなので、これを「しつけ」でやめさせるのは残念ながら不可能です。猫にとって大きなストレスになってしまいます。
尿スプレーへの対策としては次のポイント。
- 去勢手術(尿スプレーを始める生後6ヶ月頃が目安)
- 多頭飼いに対するストレスを取り除く
- 飼い主に対するストレスを取り除く
- トイレの数を増やしたり、場所を変えるなどの環境整備
- 尿スプレーをしたら徹底的に臭いを除去
- キャットタワーなどを使って縄張りを広げてあげる
なんと去勢手術をすることで、90%の猫が尿スプレーをやめたというデータがあるほど効果があります。しかし中には去勢後も尿スプレーをやめない猫もいるのです。やめない原因はストレス。
猫にとっての最大のストレスは、縄張りが荒らされることです。中でも『室内での多頭飼い』は猫にとって、一番のストレス環境といえるのです。縄張り争いや喧嘩、トイレの共有といったストレスが多いと考えられます。
- ストレス性胃腸炎を起こす
- 胃腸炎により食欲がなくなる
- 食欲がなく食べられないことによる肝リピドーシス(タンパク質不足により肝臓に脂肪が溜まってしまう病気)
- 肝リピドーシスは治療しないと死んでしまうことも
これはあくまで一例、ストレスは免疫力を下げてしまうなど万病のもととなるんです。
キャットタワーなどを設置して、猫が安心できる場所を作ってあげると良いでしょう。
トイレの数は「猫の数+1」が基本です。多頭飼いだとトイレを置く場所の確保は大変ですが、猫と猫との縄張りがかち合わないように注意が必要になります。
飼い主との関係がストレスとなっていることもあります。
例えば新しい家族が増えてそっちに構ってばかりいる、旅行に行く回数が増えて留守がちになったなど、飼い主とのスキンシップが減ってしまうことも、猫にとって大きなストレスです。
さて、ここまでの対策は尿スプレーをされないようにするためのものでした。次に尿スプレーをされたときの対策です。
まず第一に尿スプレーをしたことを叱らない。なぜなら尿スプレーの原因は猫のせいではなくストレスだから。
尿スプレーにはクエン酸
そして尿スプレーをされたときその処理が一番やっかいですよね。わたしも長年猫のオシッコの臭いと格闘してきました。使ってきた中で一番効果があったのはクエン酸です
アルコール性のものを使ってみたり、オシッコの臭い消しスプレーなどいろいろ試してみましたが、臭いは結構残ってしまうものです。
尿汚れは「アルカリ性」なので、「弱酸性」のクエン酸が中和して、汚れが落ちやすくなるんです。興味があれば是非お試しあれ。
2,爪とぎの対策
壁と手すりなどに爪とぎされると、いくら可愛い愛猫の野生の本能とわかっていてもショックですよね。
この爪とぎも猫にとって当たり前の行動なので、やめさせることは不可能。しかし爪とぎは決まったところで行うように、「しつけ」で解決できるものなんですよ。
まず、専用の爪とぎを準備しましょう。
いろいろな種類のものがありますが、何を買えば良いのか迷ってしまいます。そこで、まずは愛猫を観察してみましょう。愛猫はどんなところで爪とぎをしていますか。
愛猫が気に入るような爪とぎを準備してあげると使ってくれますよ。たとえば、
- 背伸びをして壁をガリガリ・・同じくらいの高さに、同じような素材のものを設置
- カーペットをガリガリ・・床に固定するタイプ
という感じで設置場所と素材で選ぶといいですよ。さらに猫が好む爪とぎポイントです。
- 安定感があり、激しく爪を研いでも動かない
- 適度な抵抗があり、爪が掛かる(木材や段ボール素材)
- 適度な高さがある(大きい猫は十分に背伸びができる高さがいい)
うちのゆねは壁をガリガリするタイプなので、壁の角(コーナー)に貼れるものを使っています。壁にしっかり固定できるので、猫ちゃんも安心して爪とぎができていますよ。
まとめ
猫は自分が安全、安心に過ごせるよう縄張りを守る本能があり、そこは家の中でも同じということがわかりました。
マーキングには種類があり、その原因によっても使い分けがありましたね。
- ストレスによるマーキング・・尿スプレー
- 縄張りを守るためのマーキング・・爪とぎ
- 安心できる場所を作るマーキング・・顔すりすり
その中でされて困るマーキングが尿スプレーと、壁やカーペットでの爪とぎ。
ただし、本能で行うマーキングをやめさせることは不可能ですが、本能以外のマーキングの解決策はストレス解消。
- 去勢手術(尿スプレーを始める生後6ヶ月頃が目安)
- 多頭飼いに対するストレスを取り除く
- 飼い主に対するストレスを取り除く
- トイレの数を増やしたり、場所を変えるなど、環境を整える
- 尿スプレーをしたら徹底的に臭いを除去
- キャットタワーなどを使って縄張りを広げてあげる
爪とぎについては、愛猫にあった爪とぎの設置が鍵でした。その他にも選ぶときに見るポイント。
- 安定感があり、激しく爪を研いでも動かない
- 適度な抵抗があり、爪が掛かる(木材や段ボール素材)
- 適度な高さがある(大きい猫は十分に背伸びができる高さがいい)
猫とこれからもお互い気持ちよく生活していくために、以上のポイントを参考にしてもらえたら嬉しいです。