先日、家族そろってリビングでテレビを見ていた時のこと。
ゆねが夫の足元に近づき、足の裏や指をくんくんとにおい始めました。
一生懸命においをかいでいるなぁと思っていた次の瞬間、ゆねは顔を持ちあげて目をまん丸にして口をあんぐり開け、驚いたような、呆然としたような表情を見せてくれたのです。
その時の顔を見て、息子が「パパの足がくさかったからびっくりしてる!」と大爆笑。それにつられ、娘もわたしも爆笑。
夫は「そんなことない」と言い張っていましたが、その後再び足のにおいをかいだゆねに再度同じ顔をされ、少し落ち込む様子が。
猫に足のニオイをかいだあとに臭そうな顔をされたという話は、他の猫好きさんのお宅でもよく耳にします。
しかし実は、猫がこの顔をしてしまうのは、人間が思っているよりも深い事情があります。
今回の記事では、猫から臭そうな顔をされて傷ついてしまった方のために、あの顔をする本当の理由をしっかりお伝えします。
この記事を見て、自分のにおいについて悩む飼い主さんが一人でも多く減りますように。
猫の変な顔をするのは生理現象だった
突然ですが、猫ちゃんがにおいをかいだ後に「臭い!」と言いたいような表情をされた経験はありませんか。
あの表情を見てしまったら、「わたし、臭いのかな?」と、思わず自分のにおいを確認してしまった人もいらっしゃるかもしれませんね。
冒頭の話の後、夫はお風呂でいつもよりも念入りに体を洗ったそうです。
実は、あの表情の正体は「フレーメン反応」と呼ばれる生理現象なのです。
いつでも見られるとはいきませんが、貴重な顔を見れるチャンスが増えることは間違いないでしょう。
まずは、このフレーメン反応についてお話ししていきます。
フレーメン反応とは
先程もお話しした通り、フレーメン反応とは哺乳類に起こる生理現象の一つで、他にも馬や犬、トラなどにも見られます。
特に馬は、頻繁に唇を引き上げて笑っているような顔でフレーメン反応をするので、わかりやすい動物として有名です。
このフレーメン反応は生理現象のため、感情との結びつきは全くありません。
なので、猫ちゃんがにおいをかいだ後に「臭い」と言っているような表情をされたとしても、臭いわけではないのでご安心を。
ここまで読んで、すでに安心していただけた飼い主さんも多いと思います。
しかし、なぜ猫はあんなにも一生懸命ににおいをかぐのか、気になった方もいらっしゃるかもしれません。
猫はなぜフレーメン反応をするのか
猫は人間よりも嗅覚が優れている、ということはご存知かと思いますが、どのくらい優れているかを知っている方は少ないのではないでしょうか。
なんと、人間の数万~数十万倍の嗅覚を持っていると言われています。
そのため、人間よりもはるかに多い情報量をニオイから取り入れているのです。
人間にはかぎ分けることができないニオイの情報の中に「フェロモン」があるのです。
<猫のフェロモン>
フェロモンとは同種の動物同士で情報を伝えあい、特有の行動を引き起こすニオイ物質のことです。
猫には頬や額、尻尾の付け根や肛門周囲など複数箇所からフェロモンが分泌されていますが、マーキングや発情の時以外にも、甘えたい時や怯えている時におい付けなど、自分の気持ちを表す時にも分泌されます。
嗅覚が優れている猫だからこそ使える、コミュニケーションツールの一つと言えるでしょう。
なぜ変な顔になってしまうのか
いくら嗅覚が優れているとはいっても、フェロモンは分子がとても小さいので普通にニオイをかいだだけではしっかりとかぎ分けができないのです。
猫の口の中の前歯の裏側に、鋤鼻器(じょびき)という器官があり、その部分ににおいを取り込むことで、フェロモンの持ち主や性別、発情の有無を分析しています。
あの呆然としたようにあんぐりと口を開けている時は、より多くのフェロモンを感じようと口の中に空気を送っています。
人間でも、たくさん周囲のにおいを確認しようと思ったときは、口も開けてしまうということがあると思います。その感覚に似ているのかもしれませんね。
なので、あの顔は「臭い」と思っているからなるのではなく、フェロモンが誰のものなのかを一生懸命分析している顔なのです。
フェロモンは猫にとって自己紹介シートのようなもので、フレーメン反応はその自己紹介シートを読む作業だと言えるでしょう。
猫がフレーメン反応をする瞬間とは
生理現象とは言え、とても愉快で、見ると思わず笑ってしまうあのお顔。チャンスがあれば見たいと思う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、猫がどんなものに対してこの反応を見せてくれるのかを紹介していきます。
1)自分のにおい
フレーメン反応の主な役割は、においの元が自分のものであるかを確認することです。
もちろん、自分の身体は自分のものであるのは分かりきっているのですが、念のためにやってしまうようです。
特に最近では、完全室内飼いが主流になっていることもあり、同居猫以外の猫のニオイをかぐ機会がほとんどありません。
そのため、自分のフェロモンを確認することがもはや習慣になっている猫も多いようです。
2)他の猫のにおい
同居猫がいる場合、同居猫のフェロモンをチェックをするためにフレーメン反応が起きます。
よく同居猫のお尻のにおいをかいだあとに見られますが、その様子はまるで「こいつのおしり、臭い!」と言っているようです(笑)
ほかにもトイレについた他の猫のおしっこのニオイをかいだあとにも起こります。
しかし、これは本当に臭いと思っているのではなく、フェロモンから他の猫が入ってきていないかの安全確認のためなのです。
また、オス猫にとってはメス猫が発情しているかどうかもフェロモンで確認しています。
3)フェロモンが付いていそうなものや場所
ほかにも、猫は興味を持ったものに対して、とりあえずフェロモンを確認する習性があります。
人の汗にも猫のフェロモンに似た成分が含まれているので、服や床のにおいをかいだあとにフレーメン反応が見られた場合は、飼い主さんの汗に反応している可能性が大きいと言えそうです。
繰り返しにはなりますが、ここでも「臭い」と思われているわけではないので、あまり気にしないようにしてくださいね。
その他)ハッカ系のにおい、マタタビ
ハッカ系のにおいには猫のフェロモンと近い成分があると言われており、時々においをかぐとフレーメン反応が見られるようです。
キャットニップ(ハーブの一種)やまたたびにも似た成分があるため、フレーメン反応が見やすいようです。
気になる方は、ぜひともお試しください。
愉快なフレーメン反応の動画を紹介
ここまでフレーメン反応がどういうものかについてお話しました。
でも、まだ愛猫がフレーメン反応をするのを見たことがないという人もいらっしゃるかもしれないので、個人的にお勧めの動画をここでいくつか紹介させていただきます。
まるでお手本のようなフレーメン反応を見せてくれているのは、茶猫の「ちゃい」ちゃん。同居猫さんのにおいをかいで、この表情です。
「よほどくさかったのね…」と思わせてくれる表情に思わず笑ってしまいます。
こちらの動画では、同居猫さんとにおいをかいで起こるものと、自分の毛づくろいをして起こるフレーメン反応など、たくさんの面白い場面が切り取られています。
猫ちゃんたちの表情はもちろんのこと、投稿者様の字幕のコメントもシュールでとても面白い動画です。
こちらの動画は、飼い主さんの足のにおいをかいだ猫ちゃんが見せるフレーメン反応を集めたものです。
どの猫ちゃんも、一生懸命足のにおいをかいだあとに、あの表情。
「なんという臭さだ!」と言いたそうなお顔で、フェロモンを確認しているだけとは思えません(笑)
まとめ
今回は猫がにおいをかいだ後に見せる表情の正体についてお話しました。
- 猫がにおいをかいだ後の表情は「フレーメン反応」によるもの
- フレーメン反応とは、哺乳類に起こる生理現象の一つ
- フレーメン反応でフェロモンのかぎ分けを行っている
- 「臭い」と思っているのではない
- フレーメン反応は、自分のにおいや他の猫のにおい、フェロモンがついていそうなものに起こる
- キャットニップやまたたびのにおいでも起こる場合がある
あの「臭い!」の顔は、そう思っているのではないと分かっただけでも、多くの人が安心されたかもしれませんね。
表情豊かで愉快な反応であるフレーメン反応は、間違いなく猫の魅力だと言えます。
みなさんもお宅の猫ちゃんのフレーメン反応が見られた時は、「今日もフェロモンの確認をしているんだな」と、暖かく見守ってあげてください。