先日、猫を飼い始めて間もない友人が、こんなことを言いました。
新米飼い主さんなので知らないのは当然のことなのですが、わたしは慌てて答えてしまいました。
わたしがこんなに慌てて止めたのには、理由があります。
それは、猫にとってヒゲは色々な役割を持つ、とても大切なものだからです。
猫のヒゲが伸びてきたからといって人間の髪の毛と同じように切ってしまっては、猫に大変なことが起こるかもしれないですよ。
猫のヒゲは猫にとってどんな役割をするのか、どうして切ってはいけないのか、もし切ってしまったらどうなるのか、詳しくご紹介していきます。
この記事を読めば猫のヒゲの大切さが理解でき、より一層猫ちゃんの気持ちが分かるようになりますよ。
猫のヒゲは切ってはダメ!その理由は?
猫のヒゲは切ってはいけません。
それは、ヒゲが猫にとってとても重要な役割を持っているからです。
まずは、猫のヒゲがどんな働きをしているかを紹介しますね。
猫のヒゲの役割
まず、猫のヒゲは大きく分けて三つの役割を持っています。
- 周辺環境をとらえるセンサー
- 平衡感覚を保つ
- 感情表現
①周辺環境をとらえるセンサー
猫はせまい場所が好きですよね。「そこ、通れる?」と思うような場所でさえ、猫がスルスルと歩いて行く姿を見たことがあるのではないでしょうか。
実は、猫のヒゲはセンサーのようなもので、空間の距離や幅を測っているのです。
また猫は夜に活動することが多いですが、暗い中でも難なく動き回れるのも、このヒゲのセンサーのおかげ。
猫のヒゲは空気の流れを察知することができるため、暗闇でも障害物にぶつかったりせずに行動ができるのです。
②平衡感覚を保つ
猫のヒゲは平衡感覚を保つこともできます。
「平衡感覚って?」と思われるかもしれませんね。
例えば、平均台に乗って歩くことを想像してみてください。
平均台の上を歩くには、細い幅の道から落ちないようにバランスを保たなければいけないですよね。
この時使うのが平衡感覚です。
猫が高いところや狭い道でもフラフラせずに歩けるのは、ヒゲで平衡感覚を保っているおかげなのです。
③感情表現
猫の感情は、鳴き声や耳の動き、仕草などで表現されますが、実はヒゲでも気持ちが読み取れるんです。
これは知らなかった方も多いのではないでしょうか。
ヒゲがVの字に上がっていると、喜んでいる証拠。
ヘの字に下がっていると怖がっている証拠など、猫のヒゲは表情豊かなのです。
他の記事に詳しく書かれていますので、ぜひ読んでみてくださいね。面白い発見がたくさんありますよ。
猫のヒゲがこんな働きをしているなんて、わたしも初めて知った時はびっくりしました。
猫のヒゲは5種類ある
ゆねの言う通り、猫のヒゲは5種類もあるんです。
種類によって違う役割をしますので、簡単にご紹介しますね。
- 眉上毛(びじょうもう)・・・目の上に生えている長いヒゲ。目の上や頭の上に迫る危険を察知するセンサーの役割をする。
- 頬骨毛(きょうこつもう)・・・目の斜め下に生えているヒゲ。顔の横の危険を察知しますが、画像でも分かりにくいようにとても短く、猫によっては生えていないことも。
- 上唇毛(じょうしんもう)・・・皆さんが想像する猫ヒゲ。危険察知のほかにも、空間把握や感情表現を行う。
- 口角毛(こうかくもう)・・・上唇毛の上に少しだけ生えている。同じく危険察知の役割をするが、中には生えていない猫も。
- 下唇毛(かしんもう)・・・あごに生えている。短いため分かりにくいが、目では見えない顔の下の危険を察知できる。
ただの毛と思っていた部分かもしれませんが、実は重要な役割を持つヒゲだったのですね。
猫のヒゲを切るとどうなる?
猫のヒゲの役割をお話ししましたので、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。
そうです。ヒゲがあったからできていたことが、できなくなってしまいます。
空間を察知できないため暗い場所や狭いところを上手く歩けなくなる。
平衡感覚が鈍るため物や壁にぶつかり、フラフラしてしまう。
感情表現ができなくなる。
わたしたちは視力に頼っているので、暗闇を歩くとき明かりが必要ですよね。
突然停電して電気がつかなくなったら、手探りでフラフラと物にぶつかりながら歩くことになってしまいます。
猫にとってヒゲは人間の目のようなものなのですね。
さて、これは友人から聞いた話なのですが、皆さんに紹介しますね。
うちの子どもがまだ小さいとき、いたずらで飼い猫のヒゲを切ってしまったことがあるんです。
すると猫は突然、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと、真っ直ぐに歩けなくなりました。
そして、いつもは簡単にせまい通路を通り抜けているはずなのに、入れそうにもないところへ入って出られなくなっていたんです。
平衡感覚、方向感覚までもが鈍くなっていたようで、暗闇で歩けば物にぶつかり、大好きなキャットタワーにもうまく登れず、最終的には新しいヒゲが生えてくるまで押し入れに入ってじっとしていました。
その様子を見て、子どもはすごく反省していました。
猫にとってヒゲはすごく大事なものだと、学んだみたいです。
猫によりますので、すべての猫がこのようなひどい状態になるとは言い切れないのですが、ヒゲを切られるとこんな風になってしまう可能性があるのですね。
実際にあった話を聞くと、本当にヒゲがどれだけ大事なものなのか、わたしも痛感しました。
猫のヒゲは伸びたら自然に抜ける
そう、実は猫のヒゲは生え変わるんです。
ヒゲがモサモサと伸びてきたなぁ、と思ったら、それは生え変わりの時期かも。
「ヒゲが一時的になくなるってこと?」と心配になるかもしれませんが、全てのヒゲが一気に抜けるということはなく、残っている古いヒゲや新しく生えてきた短いヒゲが役割を果たしてくれるので心配無用です。
抜けたヒゲをお守りにすると金運アップ?
ここでちょっと小話を。
この間部屋で掃除機をかけていたら、ゆねのヒゲが落ちていました。
そのヒゲ、捨てずに財布に入れて保管しています。
実は、猫のヒゲは金運アップのお守りになると噂されているのです。
宝くじ売り場などで、招き猫が置かれているのを見たことはあるのではないでしょうか。
これがまさに「金運を招く猫」。
昔から猫は幸運を招く動物とされ、縁起が良い生き物として知られていたのです。
ですので現代でも、大切な猫の抜け落ちたヒゲをお守りにしているという飼い主さんが多くいるようです。
中にはこんな専用ケースを使っている飼い主さんもいるという話を聞き、わたしも買おうかどうか検討しているところなんです。
皆さま、よろしければお揃いで持ちませんか。
自然にヒゲが切れる場合がある
人間が無理矢理切るのはもちろんご法度ですが、何らかの原因でヒゲが切れてしまうことがあります。
猫同士のけんかで切れる
複数猫を飼っているお家の場合や、猫が外に出られる環境にしているお家の場合、猫同士が喧嘩することも少なくありませんよね。
ヒゲだけを意図的に抜こうとすることはないのですが、体がぶつかりあったり、猫パンチが顔に当たったりすると、ヒゲが切れたり抜けたりしてしまうことがあります。
猫の様子をよく観察し、ヒゲが切れてから様子がおかしかったり体調に不安を感じるようであれば、病院で受診してくださいね。
母猫があえて切る場合がある
猫が親子で暮らしている場合、母猫が子猫のヒゲをあえて噛み切ったり抜いてしまうことがあります。
これは野生の頃の名残りで、子猫が母猫の元を離れて迷子になってしまわないようにするためです。
まだ視力が弱い子猫にとって、ヒゲが周辺環境を捉える目の代わりなので、ヒゲがなくなるとどこへも行けなくなるのです。
この場合は慌てず、母猫に任せて猫たちの様子を見守りましょう。
ヒゲはまた生えてきますし、母猫が子育ての一環として行っていることですので、あまり心配はないでしょう。
まとめ
それではまとめに入ります。
猫のヒゲは、
- 周辺環境をとらえるセンサー
- 平衡感覚を保つ
- 感情表現
という重要な役割をしているため、切ってはいけないものです。
- 暗い場所や狭いところを上手く歩けなくなる
- 平衡感覚が鈍るため物や壁にぶつかり、フラフラしてしまう
- 感情表現がうまくできなくなる
生活している中で、猫同士の喧嘩などで自然に切れてしまうことがありますが、まずは様子を見て、様子がおかしかったり体調に不安を感じる場合は病院へ。
母猫が野生の名残りで子猫のヒゲを切ってしまうことがありますが、子育ての一環なのであまり心配する必要はありません。様子をしっかり見守ってあげましょう。
大切な猫の体を守るため、ヒゲのことまで詳しく知れましたね。
猫自身が大事にしていることを飼い主さんも知ってあげれば、猫も安心ですね。