先日、子猫を向かえたばかりの友人からこんな相談を受けました。
頭を大きく振って「くしゅん」とする姿、見かけたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。
とても愛らしい姿な半面、何度も繰り返したり鼻水が出ていたりすると、どこか悪いのではと心配になってしまいますよね。
ですが、人間と同様にくしゃみがでる原因はさまざま。
中には、病院で治療が必要だったり、早期発見が治療のカギとなる病気が隠れていることもあります。
さらに成猫と違って体力がない子猫にとっては、飼い主さんが早く気付いて対処してあげることが重症化を防ぐ上でとっても大切なんです。
今回は、猫ちゃんのくしゃみを見た時に役立つよう、病気の可能性を見分けるポイントやあらかじめ取っておきたい予防策についてお伝えしていきます。
猫がくしゃみをする原因
猫がくしゃみをする原因は大きく分けて『生理現象』と『病気』の2つです。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
生理現象によるもの
ほこりを吸ってしまって、くしゃみを連発することってありませんか。
猫も同じように、ほこりや猫自身の毛を吸い込んでしまった時、鼻の粘膜が刺激されることでムズムズしてくしゃみが出ます。
また、暖かいお部屋から急に寒い廊下に出た時などにも、冷たい空気に刺激されて出ることもあるんですよ。
他の症状は見られず、単発で終わることが多いのが特徴です。
生理現象によるくしゃみは、何も心配はいりません。
病気にかかっている
何度もくしゃみを繰り返したりしている場合は、なんらかの病気が原因となっている可能性があります。
くしゃみの他にこんな症状があったら要注意です。
- 目ヤニや涙がでている
- くしゃみが連続して出ている
- 何日もくしゃみが止まらない
- 食欲が低下している
- くしゃみをすると鼻水が出る
- 鼻血が出ている
- 鼻水が黄色や白色で膿のようになっている
- 鼻の辺りが腫れて見える
もし当てはまるものがあれば、早めに動物病院で診てもらうことをお勧めします。
猫がくしゃみをしている原因を見分けるポイントは次の通りです。
【生理現象の場合】:単発で終わることが多い。症状はくしゃみのみ。
【病気に罹っている場合】:くしゃみを頻発したり、鼻水など他の症状も見られる。
子猫が特に気を付けたい主な病気
病気を悪化させず治せるかどうかは、免疫力が大きなカギとなります。
成猫にとっては軽く済んでしまう病気でも、まだ生まれたばかりの小さな子猫は特に免疫力が低く、重症化してしまう可能性も。
子猫の場合、生まれてすぐの頃は母猫から初乳を通して受け取った「移行抗体」と呼ばれる免疫に守られています。
ですが、この抗体は生後2~3ヵ月でなくなってしまうんです。その頃体調を崩す子猫が多いと言われています。
また保護猫の場合は、母猫の初乳を飲めていない可能性もあります。
かなり免疫が低い恐れがありますので、他の猫との接触を避けるなど注意が必要です。
だからこそ、子猫の体調の異変には、いち早く気が付いて対処してあげたいですよね。
同時に見られる症状や、病気の原因などと合わせて解説していきますね。
猫風邪
病気が原因の場合、一番多いと言われているのが猫風邪。
鼻の粘膜にウイルスや細菌が付くことで炎症が起きる感染症で、人間の風邪の症状とよく似ていることからこう呼ばれます。
くしゃみの飛沫やよだれなどが付くことで、猫同士で簡単に移しあってしまうんです。
そうですね。成猫で症状が軽い場合は、自然に治ることもあります。
ですが、先ほどもお伝えしたように子猫にとっては決して甘く見てはいけない病気。
なぜかというと、体力に余力がないので、食欲不振になるとどんどん衰弱していってしまうからです。
猫風邪が疑われる場合は、なるべく早めに動物病院に連れていきましょう。
猫風邪はいくつかの病気の総称で、原因になるウイルスや細菌によってそれぞれ違った病名があります。主なものを紹介しますね。
猫カリシウイルス感染症
【原因】カリシウイルス
【特徴】口の中に症状が出やすい・2~3ヶ月前後の子猫に多い
- くしゃみ
- 鼻水
- 発熱
- 食欲低下
- 口内炎
- 舌の炎症
口内炎により、よだれが増えたり口臭が強くなる場合もあります。
昔飼っていた「しゅり」が口内炎になり、食事を上手く取れなくなってしまったことがありました。
その時の経験から、こちらの記事で口の中に痛みがある猫の食事をサポートする方法をお伝えしていますので、ぜひご覧ください。
ノロウイルスと同じくらい強い感染力を持っているため、他の猫を撫でた手で触るだけでうつってしまうこともあるんです。
猫ウイルス性鼻気管炎
【原因】ヘルペスウイルス
【特徴】目に症状が出やすい・2~3ヶ月前後の子猫に多い
- くしゃみ
- 鼻水
- 咳
- 発熱
- 食欲低下
- 角膜炎
- 結膜炎
一度感染すると体内にウイルスが残ってしまい、症状が治まっても免疫が落ちると再び体調を崩してしまうことがあります。
猫クラミジア感染症
【原因】クラミジアという細菌
【特徴】目の充血や腫れ・ネバネバとした目ヤニがでる
- くしゃみ
- 咳
- 鼻水
- 結膜炎
特に感染力が強いので、多頭飼いの場合は注意が必要です。
猫風邪の治療は、目の症状があれば目薬を、鼻の症状には点鼻薬を用いるなど対症療法を中心に行われます。
抗生物質の投与や、薬剤が充満した箱の中で息を吸うことで肺まで薬を届ける吸入治療、またインターフェロンの注射でウイルスの増殖を抑えるという方法も一般的に行われる治療です。
”風邪”だからと言って、人間用の風邪薬を与えるのは絶対にやめましょう。
インターフェロンは歯の治療にも使われる薬なのですが、その効果をこちらで詳しく解説しています。
クリプトコッカス症
クリプトコッカスという真菌(カビ)を吸ってしまうことで感染する病気です。
この菌は元々自然界には多く存在していて、鳥類、特にハトの多くが保有していると言われています。
ベランダにハトが来ていて、糞をされてしまったことで罹ってしまうというケースもあるんですよ。
クリプトコッカス症では、腫瘤(しこりやコブ)が出来やすくるのが特徴です。それに伴った次のような症状が多く見られます。
- くしゃみや鼻水がでる
- 鼻が腫れてくる(腫瘤ができるため)
- 目ヤニが出やすくなる(同じく腫瘤によるもの)
- 皮膚などにも腫瘤ができることがある
- 体の動きがおかしくなる(麻痺や痙攣のため)
※腫瘤(しゅりゅう)とは、できものやコブなど、体内外にできるかたまりのことです。
そうなんです。通常健康な成猫であれば、感染したとしても発症することはほとんどありません。
ですが、免疫力の低い子猫にとっては要注意。
他にも高齢の猫や、猫エイズ・猫白血病を患っていたり、ストレスなどで免疫が落ちている時にも気を付けなければなりません。
クリプトコッカス症は、人にもうつる可能性がある病気です。排泄物などの取り扱いには注意しましょう。
アレルギー
実は猫にも花粉症の子がいるんですよ。ハウスダストやダニなどに対してアレルギーを持っていることもあります。
アレルギーが原因になっている場合は、
- くしゃみがでる
- 毎年時期が決まっている
- 透明でサラサラとした鼻水が出る
- 皮膚が赤くなるなどのアレルギーを起こしている場合がある
といった症状がでることが特徴です。
副鼻腔炎
今まで見てきた病気などで鼻炎の状態が続くと、さらに鼻の奥にある副鼻腔というところにまで炎症が広がってしまう病気です。
- くしゃみがでる
- 黄色っぽいネバネバした鼻水が見られる
- 鼻筋が腫れる
- 鼻が詰まって呼吸が苦しそう
上記のような症状が見られます。
そうなんです。鼻が詰まってしまうと、においを感じにくくなることも。
そうすると、食欲が落ちてしまう猫ちゃんもいるんです。食欲が落ちてしまっては免疫力も下がってしまい悪循環。
早めに気付いて悪化するのを防いであげましょう。
くしゃみの原因から子猫を守る対策法
ここからは、愛猫を守るためにわたしが調べてきたことを基に、あらかじめ取っておきたい予防策をお伝えしていきますね。
できることは主に2つです。
- 環境を整える
- 予防接種をする
一つずつ詳しく解説していきます。
環境を整える
免疫力の低い子猫のため、体調を保ち、外からの刺激を極力減らしてあげましょう。
栄養状態を管理する
子猫は生後4週間の間はミルク、その後離乳食期を経て、生後2ヵ月頃からは子猫用フードを食べて大きくなります。
それぞれの期間に子猫の月齢に合わせて適切な食事を与えなければ、栄養失調や栄養過多になってしまい体調を崩す原因にも。
母乳や子猫用ミルクだけを与えましょう。
初乳に含まれる免疫抗体は子猫にとって何より大切です。
子猫用ウェットフードやふやかしたドライフードを与えましょう。
生後8週までの離乳を目指します。
子猫用の総合栄養食(※)を与えましょう。
バランス良く栄養素を取ることが、骨格がつくられていくこの時期には欠かせません。
※総合栄養食とは、他に水だけあれば必要な栄養を全てまかなうことができるペットフードのことです。
適量がわかりにくい子猫のミルクの与え方について、こちらで詳しくお伝えしています。
https://www.shiawasegift.com/kitten-milk-howtodrink-amount-2-2/
気温を適切に保つ
一日中寒いところにいたら風邪をひいたなんて経験、誰しもありますよね。
体が冷えると免疫力も下がりがち。子猫も体の機能が低下してしまいます。
自分で心地よい場所に移動できないほど小さい子猫は、飼い主さんが適温を保ってあげる必要があります。
- 子猫が外に出られない高さの段ボールなどの箱を用意します。
- 湯たんぽやホッカイロなどを入れ、上にタオルや毛布を敷きましょう。
- 箱の中が28度くらいを保ちましょう。
この湯たんぽは電子レンジで温められるので、すぐに用意してあげられます。
コードがなく、噛みにくいファスナーが使われているので猫の側に置いても安心なんです。
子猫が暑く感じた時の逃げ場を確保するため、全面に敷き詰めないように気を付けてくださいね。
子猫が過ごす場所を綺麗に保つ
掃除をする。これがとても大切です。
単純ですが、ほこりを吸って出るくしゃみやハウスダストアレルギーによるくしゃみを防ぐにはかなり有効なんですよ。
また、ベランダやお庭のお掃除も忘れないようにしたいですね。
ハトの糞から感染するリスクが高いクリプトコッカス症から猫ちゃんを守りましょう。
予防接種をする
怖い猫風邪も、予防接種をしっかり受けることで防ぐことができます。
お家から出ない猫ちゃんでも、ウイルスを含んだ風が窓から入ってきたり、飼い主の服や靴に付いていて持ち込んでしまうことで感染する場合があります。
猫用ワクチンは種類がいろいろありますが、室内飼いの猫は3種混合の摂取を受けると安心です。
3種混合ワクチンとは、猫カリシウイルス感染症・猫ウイルス性鼻気管炎・猫汎白血球減少症の特に感染力が強い病気に対応するものです。
動物病院により費用は異なりますが、1回3000円~5000円程度です。
生後2~3ヶ月頃、その1か月後、さらに成猫になってからは1年に1回の摂取が推奨されています。
まとめ
猫のくしゃみはよくあることです。
ですが、病気の症状としてくしゃみが出る場合もあるとお伝えしました。
体が小さく免疫力の低い子猫にとっては、このサインに気付いてあげることがとても大切なんです。
- 目ヤニや涙がでている
- くしゃみが連続して出ている
- 何日もくしゃみが止まらない
- 食欲が低下している
- くしゃみをすると鼻水が出る
- 鼻血が出ている
- 鼻水が黄色や白色で膿のようになっている
- 鼻の辺りが腫れて見える
子猫がくしゃみをする時に注意したい主な病気は以下の通りです。
病名 | 特徴 |
猫風邪 | 人間の風邪症状と似ている |
クリプトコッカス症 | 人にもうつる可能性がある |
アレルギー | 皮膚炎を併発することもある |
副鼻腔炎 | 食欲不振を招きやすい |
病気の可能性に気付いたら、なるべく早く動物病院を受診しましょう。
適切な処置を受ければ、重症化を防ぐことができますよ。
- 栄養状態を管理する
- 気温を適切に保つ
- 子猫が過ごす場所を綺麗に保つ
- 予防接種をする
まだまだ体が弱い子猫を守ってあげられるのは飼い主さんだけ。
健康で楽しい毎日を過ごす参考になれば嬉しいです。