命を救うために保護した子猫がミルクを飲んでくれないと、ほんとうに焦ってしまいますよね。
これ、実はわたし自身も経験したことのある焦りなんです。
以前2匹の赤ちゃん猫を保護したときに、知識や経験、そして時間が圧倒的に足りなかったため、その子達のお世話を十分にしてあげることができませんでした。
あのときの、子猫の元気がなくなっていく姿を忘れないように猛勉強をはじめました。
今は「ミルクボランティア」としていつか活動できるように、講習会に行ったり先輩の話を聞いたりすることで、実践知識をたくわえています。
不意に猫を拾ったり預かったりした保護主さんは、不安や焦りも多いと思いますが、まずは考えられる原因をひとつずつチェックしていくことが大切です。
今回は子猫がミルクを飲んでくれないときにチェックするポイントと、対処法をまとめましたので、一緒に見ていきましょう。
子猫にミルクをあげる期間
なんとなくのイメージや思い込みで、「小さい猫だしミルクだよね」とミルクを無条件に与えようとする保護主さんは意外と多いんです。
しかし子猫の成長はとても早く、なんと生後2ヶ月でミルクは卒業してしまいます。
人間の赤ちゃんに比べるととても早く感じられますよね。
子猫の発育状態に合わせた食べ物を用意しないと、成長に必要な栄養が取れなくなったり、逆に栄養過多になってしまうことも。
まずは生まれた直後からの子猫の発育と、その時期に必要な食べ物を知っておきましょう。
授乳期の子猫には幼猫用に作られた猫用ミルクを与えてください。
牛乳や人間の赤ちゃん用の粉ミルクなどは、子猫が下痢したり、必要な栄養をとることができないため、緊急時以外は与えないでください。
生後0日〜7日(1週齢)
発育 |
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体重 |
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食事 |
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食事の回数 | 1日6〜8回、3〜4時間ごと |
この時期はまだ目があいていないため、鼻先や前足などを使って母猫のミルクを探ります。
また、自力で体温調整はできませんので、保護主さんによる保温が必須となります。
生後8日〜14日(2週齢)
発育 |
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体重 |
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食事 |
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食事の回数 | 1日6〜8回、3〜4時間ごと |
2週齢に入ると少しずつ目が開いてきますが、まだ神経が発達していないので、ハッキリとは認識できません。
また、1週齢では後ろ足はほとんど使えませんが、10日目くらいから後ろ足で下半身を支えられるようになってきます。
生後15日〜21日(3週齢)
発育 |
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体重 |
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食事 |
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食事の回数 | 1日6〜8回、3〜4時間ごと |
歯が生えてくる時期で、母猫の乳首を歯で傷つけてしまうことから、本能として乳首に吸い付かないようになっていきます。
また、体温保持もだんだん出来るようになりますが、まだ皮下脂肪が少ないため、しっかり保温をしてあげてください。
生後22日〜28日(4週齢)
発育 |
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体重 |
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食事 |
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食事の回数 | 1日4〜6回、4〜6時間ごと |
歯も生え揃い、舌をつかって皿から舐め取る動きを練習する必要が出てくる時期です。
また、肛門あたりを刺激されると排泄する反射反応が消える時期なので、トイレトレーニングも始めましょう。
トイレトレーニングの進め方はこちらにまとめていますので、参考にしてみてくださいね。
5週齢〜8週齢
発育 |
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体重 |
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食事 |
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食事の回数 | 1日3〜4回、6〜8時間ごと |
6週齢では食事のほとんどを離乳食にし、8週齢には完全に離乳出来るようにします。
また、離乳食も少しずつ噛みごたえがあるものを用意して、噛んで食事することを練習できるようにしてあげましょう。
このように見ると、子猫にミルクを与えるわずか2ヶ月の間にものすごい成長をしていますよね。
目まぐるしく成長する子猫をしっかりサポート出来るように、保護主さんが準備をしていってあげてくださいね。
子猫がミルクを飲まないときのチェック項目
ここからは、実際に子猫がミルクを飲まないときに考えられる原因をひとつずつチェックしていきましょう。
生後2週間までの子猫で8時間以上ミルクを飲んでいない場合は動物病院へ連れていきましょう。
低血糖になっている可能性があり、命に関わります。
子猫の体温
体温が低くなってしまうと体力が落ちて、子猫はミルクを飲むことができなくなります。
そして子猫は自分で体温調節する機能がまだ発達しておらず、皮下脂肪も少ないため、体温が低くなりがちです。
本来なら母猫やたくさんの兄弟とくっついていることで体温を保持するのですが、保護した子猫の場合は1匹であることも多いです。
そのため、毛布や湯たんぽなどの熱源を使って、子猫が元気でいられる環境を整えてあげてください。
【子猫の体温】
生後〜1週齢…36℃前後
2週齢以降…37℃前後
子猫の体温の保持方法
【用意するもの】
- 四方囲まれた箱(ダンボール、透明のプラケースなど)
- バスタオルや毛布(洗い替えも含めて数枚)
- 熱源となるもの(ペット用の低温パッドや湯たんぽ)
バスタオルや毛布を箱の底に敷き、箱全体の保温のため外側も包みます。
また、熱源になるものは箱の床の一部分に入れます。床全面に敷いてしまうと、子猫が熱いと感じたときに逃げ場がなくなるためです。
ペット用の低温パッドなどがなくても、50℃くらいのお湯を入れたペットボトルや、カイロを布でくるんだもので代用できます。
また、箱の中の温度が25℃くらいになるのが丁度いい環境です。夏の時期は暑くなりすぎないよう気をつけてあげてくださいね。
ミルクの温度
実はミルクの温度が低いと、子猫はミルクを「食べるもの」として認識できないんです。
特にまだ目があいていない生後〜2週齢の間は、本来は鼻先で母猫の乳首を探し当てて吸い付きます。
そのため鼻先は特に温度に敏感で、非常にわずかな温度変化でもわかるようになっているので、ミルクの温度に気をつかってあげましょう。
粉ミルクを溶いたり、数匹の子猫に授乳している間にいつのまにか冷めてしまっていたりします。
こちらのような温度計があると、ミルクの温度が手軽に計れるのでおすすめですよ。
37℃くらいが一般的に良いと言われていますが、35℃くらいのぬるめが好きな子もいます。
温度を計っていくうちにその子猫の好みもわかってきますので、慣れないうちはぜひ活用してくださいね。
ミルクを飲むときの体勢
子猫にミルクを飲ませるときは、必ず「うつ伏せ(お腹が床の方向)」の状態であげてください。
意外とやってしまいがちなのが、子猫を人間の赤ちゃんのように仰向け(背中が床の方向)で抱えてミルクをあげるやり方。
人間の赤ちゃんはお母さんに抱っこされてミルクを飲みますが、猫は当然ながら自分の赤ちゃんを抱っこしたりしません。
横たわった母猫の乳首を子猫が探し当て、自分で飲むのが本来の子猫の姿です。
それと同じ体勢を作ってあげることでしっかりミルクを飲むことが出来るというわけです。
仰向けでミルクをあげることは、誤嚥(ごえん)の危険性があるため絶対にやめましょう。
誤嚥とは、食べ物や飲み物が食道ではなく、気管に入ってしまうこと。
わたし達がたまに飲みこむのに失敗してむせる、めちゃくちゃ苦しいアレのことです。
誤嚥性肺炎という病気を引き起こすこともあるので、注意してください。
ミルクをあげるときの支え方
利き手と逆の手で、子猫の首あたりを押さえて包みこみ、顔の位置を安定させます。
そして利き手で哺乳瓶などの器具を持ち、口から胃までのラインが斜め下になるような姿勢を意識してミルクを与えましょう。
うまく吸い続けてくれるようなら、特に手で押さえ続ける必要はありません。
ミルクを飲む容器や方法が合ってない
ミルクを飲んでくれないのは、今の容器や方法がその子猫に合っていないからかもしれません。
ミルクを与える方法として、哺乳瓶やスポイト、そしてシリンジという注射器のような器具を使うことが最も多いです。
ほかにも、脱脂綿にミルクを含ませて吸わせるやり方や、吸い付く力が弱い子にはカテーテルという方法もあります。
こちらに容器や方法をまとめましたので、今の子猫の状態と照らし合わせてみてください。
哺乳瓶 |
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スポイト |
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シリンジ |
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カテーテル |
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脱脂綿 |
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基本的には哺乳瓶を使い、哺乳瓶ではうまく吸えない子猫には他の方法を試してみてください。
また、哺乳瓶は吸い口のサイズや形状が子猫の口の大きさに合わず、うまく吸えていない可能性もあります。
メーカーによっても大きさは異なりますし、哺乳瓶自体を変えてみるのも一つの手段ですね。
容器は毎回きれいに洗浄し、可能なら煮沸消毒しましょう。
おしっこやうんちが溜まっている
実は子猫は、排泄できていないとお腹が空かないためミルクを飲みません。
また、3週齢ごろまでは自力で排泄ができないので、人間の手で排泄をさせてあげないといけないんです。
小さい間は母猫がおしりをなめる刺激で排泄するという反射行動があり、その代わりを人が務めるということですね。
おしっこやうんちの促し方
ティッシュや脱脂綿のような乾いた布状の物で、お尻周りをポンポン刺激してあげます。
飛び散ることもあるので、下にはペットシートや新聞紙などを敷いておきましょう。
濡れティッシュではおしっこを吸い取ることが出来ず、子猫の皮膚を濡らしてしまうため、体温を奪ってしまうことにもなります。
また、おしっこは毎回出ますが、うんちは2〜3日に1回くらいが目安です。
授乳のタイミングが早い
ミルクをあげる間隔が短くてまだお腹が空いていないという場合もあります。
子猫はエネルギーを多く必要としているものの、胃の容量が小さいため、1度にたくさん飲むことはできません。
そのため、1日に6〜8回に分けて、だいたい3〜4時間ごとにミルクを与えます。
2時間くらいでお腹が空く子もいますし、4時間くらいあけないと飲まない子もいます。
元気な様子なのに飲まない場合は、30分〜1時間くらい様子を見て、再度ミルクを与えてみましょう。
ミルクの味
粉ミルクを作り置きしてしまうと、置いているうちに味が変わって、子猫が飲まなくなってしまう場合があります。
また、粉ミルクがお湯できちんと溶かしきれていないと、味が薄くなってしまい子猫は日によって飲んでくれなかったりします。
確かに手間はかかりますが、子猫は温度と同じように、味にもとても敏感なので、頑張って美味しいミルクを作ってあげましょう。
すでに液状になっているミルクなら溶かす必要はないので、少しコストはかかりますが選択肢として考えてみるのもいいかもしれません。
また、メーカーごとに配合も味も変わるため、ミルク自体を別のメーカのものに変えてみるというのもひとつの手ですね。
飲みきれなかったミルクは、味の問題に加え、雑菌繁殖の危険性もあるため毎回廃棄しましょう。
寝てばかりでミルクをのまない
繰り返しになりますが、子猫が8時間以上ミルクを飲まないと、低血糖状態になってしまい、命の危険にかかわります。
もし子猫がミルクを飲まず、次のような様子のときはすぐ動物病院へ連れていきましょう。
- ぐったりしてミルクを飲む力がない
- 口の中の粘膜が乾いている
- 皮膚をつまんでもすぐには戻らない
- 吐き続ける、下痢がとまらない
- 保温しているのに体温が低いまま
こういった様子が見られたら、衰弱状態だったり低体温、脱水症状を起こしている可能性が高いです。
栄養補給などの処置が必要となるので、時間の猶予はありません。一刻も早く病院で見てもらうようにしてください。
ちなみに生後1〜2週齢の子猫は一日のほとんどを寝て過ごすので、ミルクを元気よく飲むけどあとは寝ている、という場合は心配しなくて大丈夫です。
まとめ
思うように子猫がミルクを飲んでくれない時、とにかく焦ってなんとか飲んでもらおうという気持ちになりますよね。
つい哺乳瓶の口を押し込んだり、ミルクを口の中に沢山入れてしまいたくなることもあると思いますが、誤嚥につながるため無理に飲ませるようなことはやめましょう。
まずは子猫やミルクの状態などを改めて確認することが大切です。
チェックする項目を改めてまとめてみました。
子猫の状態 |
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子猫の体勢 |
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ミルクの状態 |
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ミルクを与える容器・方法 |
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沢山チェックすることがありますが、ミルクを飲むことは子猫の命を支えることです。
子猫が安心してミルクを飲めるように気を配ってあげてくださいね。
また、次のような状態ならすぐ動物病院へ連れていきましょう。
- ミルクを8時間以上飲んでいない
- ミルクを飲む力がなくぐったりと寝ている
- 口の中の粘膜が乾いている
- 皮膚をつまんでもすぐに戻らない
- 吐き続ける、下痢がとまらない
- 保温しているのに体温が低いまま
こういった異常がなく、ミルクもよく飲むようなら、無理に寝ている子猫を起こす必要はありません。
ただし8時間以上起きてこないようなら健康状態に問題がある可能性が高いため、動物病院へ連れていきましょう。
必要な資格や活動内容などが詳しく書かれていて、ミルクボランティアについて初めて知る方にピッタリです。
各自治体や保護団体によって募集内容も変わるので、具体的に知りたい方は「お住まいの地域名」と「ミルクボランティア」で検索してみてくださいね。
保護活動を支えられるように、わたしももっと勉強を続けます!
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