服にまとわりつく白い毛、掃除をすると舞い散るふわ毛。
今年もとうとうやってきた、「換毛期」。
猫歴30年のわたしでも、この時期はいつも身構えてしまいます。
去年の秋、ゆねは換毛期に入るころに食欲が激増。
お皿に入れてあげたエサはぺろりとたいらげ、そのあともわたしの足元にすり寄ってきていました。
食べ過ぎてお腹を壊してはいけないと思い、どんなに欲しがってもいつも通りの量をあげていました。
しかしある日、ゆねが下痢をしてしまったのです。
エサの量は適量だったはずなのに、なぜだろうと思い調べてみたところ、なんと夫がゆねの欲しがるだけ○○ちゅーるをあげていたことが発覚。
その気持ちは分かるけど、際限なくあげてしまうことで猫の身体にとってはよくないことを伝えると、夫も反省していました。
冬が近づいた頃になると、ゆねも食欲が落ち着き、わたしは一安心。夫はどこか寂しそう(笑)
この出来事、実は換毛期が大きく関係していました。
換毛期に起こる変化を知らないと、この時期に愛猫の体調不良を見逃してしまうこともあるかもしれません。
今回は、換毛期に起こる猫の身体の変化についてお伝えします。
季節の変わり目は抜け毛が多い?猫の換毛期について
換毛期とは、猫の毛が抜け落ちて、新しい毛に生え変わる時期のことを差します。
大体季節の変わり目になると、毛の生え変わりというイメージがありますよね。
わたし達飼い主にとっては、猫の抜け毛との戦いがはじまるということもあり、少し億劫だなぁと感じてしまうかもしれません。
猫の換毛期は年に2回!
猫の換毛期は、一般的に3月頃と、11月頃の年2回あると言われています。
ちょうど、暑さや寒さが本格的になる前の時期です。
元々、猫の毛は年中抜けては生えてを繰り返しています。
しかし、換毛期になると、暑さや寒さに対応できる毛に生え変わるため、全身の毛が一気に生え替わることになります。
あまりに多い抜け毛に対して、飼い主さんの中には病気の心配をしてしまう人もいるかもしれませんが、換毛期は猫の生理現象なので、それ以外に何か変わったことがなければ問題ありません。
春の換毛期は夏にむけて、秋の換毛期は冬にむけての衣替え
ここで、春の換毛期と秋の換毛期の違いについても少しだけ説明をします。
パッと見たところでは分かりにくいかもしれませんが、実は猫の毛は、オーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)の二層構造になっています。
オーバーコートとは、猫の外側に生えている毛で、わたし達が猫をなでた時に触っている毛のことです。紫外線や汚れから皮膚を守る役割があります。
アンダーコートとは、オーバーコートの内側に生えている毛で、俗に「猫っ毛」とも呼ばれています。ふわふわしているので、保温効果がとても高いです。
春の換毛期は3月頃から生え変わり、少し固めで、通気性をよくするために、1本1本の毛の密度は低くなっています。
秋の換毛期は11月頃から生え変わり、細く柔らかい毛が密集して生え、冬の寒さから身を守ります。この柔らかい毛の正体がアンダーコートで、一つの毛穴から4~6本もの毛が生えてくるそうです。
そして冬が終わり、暖かくなってくるとごっそりと抜け落ちます。
<室内飼いの猫には換毛期が無いの?>
ほとんど外に出ず、完全室内飼いの場合は換毛期がやってこない猫もいます。
この原因としては、元々エアコンで温度調整された室内で過ごしているため、季節による大きな気温差が無いので、夏場と冬場の気温の変化に対応する必要が無いからだと言われています。
よって、室内飼いの猫には換毛期がほとんどなく、季節に関係なく毛が生え替わり続けるといった具合になります。
そのため、換毛期に集中して大量に毛が抜けるということは少ないですが、それでも季節の変わり目は普段よりも毛が多く抜けるようです
換毛期は体調を崩しやすい時期です
季節の変わり目、特に春や秋は気候の変化に身体がなかなかついていけず、体調を崩した経験はありませんか。
実は猫も、季節の変わり目になると体調に変化を起こしやすく、様々な不調が出てくることがあります。
そしてこの時期は換毛期とも重なってくるので、さらにいつも以上に体調管理については気を付けなければいけません。
ここからは換毛期になると出てきやすい体の不調についてお伝えします。
お宅の猫ちゃんにあてはまるかどうか、ぜひチェックしてみてください。
①食欲不振 or 食欲が増す
猫は自分に必要な食事量が本能的にわかっており、放っておいても食べ過ぎたり、拒食症のようになることはないと言われています。
しかし、それでも食欲が変動する要因が3つ存在します。
- 季節によるもの:「春=普通」→「夏=小食」→「秋=普通」→「晩秋~冬=大食」というサイクルで変動する。
- 老化によるもの:10~12歳で必要栄養量が上昇し、12歳以降はさらに増える傾向があるが、食欲が減る猫もいる。
- 繁殖期によるもの:オス猫は食欲が減り、メス猫は妊娠すると食欲が激増する。
この3つは多くの猫に見られるので、この時期の食欲の変化は正常の範囲内と考えられています。
猫は暑さに弱いので、春から夏にかけては食欲が減る傾向にあります。
逆に秋から冬にかけては、寒さに耐える体力を蓄えるため、食欲が増します。
また、このほかにも高齢だと気温差に身体がついていけずに調子が悪くなることもありますし、持病がある猫は症状が悪化することも珍しくありません。
②下痢・吐く
猫は、雑食性の動物に比べて腸が短いため、消化不良をおこしやすく、結果としてちょっとしたことからすぐに下痢をしやすい傾向にあると言われています。
また、猫は簡単に吐き戻しをしますよね。
もともと肉食動物である猫は、子育てをするときに自分で食べて半分消化したものを吐き戻して離乳食として与えるために、簡単に吐くことができるような体の作りになっています。
夏から秋にかけて涼しくなり、エサをたくさん食べるようになったと安心していると、夏の暑さで弱っている胃腸に負担がかかり、下痢や嘔吐などを起こしやすくなります。
また、季節の変わり目は猫にとってもストレスが多く、そのことが下痢や嘔吐の原因になっていることもあります。
換毛期ならではの病気「毛球症」
換毛期になると、自然と毛づくろいも普段よりも多くなるため、たくさん毛を飲み込んでしまいがちです。
飲み込んだ毛の量によっては毛玉を吐く回数が増えたり、食欲不振などの消化器症状の原因になります。
このように、自分が飲み込んだ毛玉を吐きだす状態を「毛球症」(もうきゅうしょう)と言います。
毛玉を吐きだすだけで、それ以外は普段と様子が変わらないということもありますが、悪化すると手術が必要になったり、最悪死亡する場合もあります。
毛球症は早く見つけて、対処すれば悪化する可能性は減るので、気になる症状が見つかった時は早めに病院に行きましょう。
<毛球症の症状>
- 吐き気、頻回に吐く(1~2週間に1回程度ならOK)
- 食欲不振
- 下痢
- 便秘
- 腹痛(お腹を触られると怒る)
また、長毛種の猫は、毛づくろいをする回数がそれほど多くなくても、口の中に入る毛の量が多くなり、毛も長く塊になりやすいので毛球症になりやすいと言われています。
換毛期の健康チェックポイントについて
換毛期の時期は、ちょうど季節の変わり目の時期に重なっていきます。
季節の変わり目と言えば、1日の中でも気温差が大きく、猫にとっても身体にこたえる時期です。
そのため、体調管理をする上での注意点はたくさんあります。
ここでは、季節の変わり目に特に注意したいポイントについてお話します。
1.食欲の異常はないか
季節の変わり目は食欲の変動がある時期になるので、多少の変動は正常範囲内です。
しかし、全く食事が取らなくなってしまったり、逆にずっと食べてしまうほど食欲が増えるのは危険信号。
動物病院に行く目安としては、以下のように判断すると分かりやすいと思います。
<異常な食欲低下>
- 36時間(1日半)、何も食べていない
- 3日間の食事量が普段の半分以下
- 子猫の場合、18時間絶食状態
ぽっちゃりした猫ちゃんもかわいらしいのは分かります。
しかし、猫にねだられるままおやつをあげてしまうのは、健康に良くありません。
冒頭の夫とゆねのお話でもあったように、おやつをあげすぎてしまうと胃腸に負担がかかってしまい、下痢しやすくなります。
また、肥満状態の猫は関節や心臓への負担が増えるだけでなく、糖尿病の発症リスクが増えてしまいます。
過去には肥満が原因で呼吸不全を起こし、亡くなった猫がいることも報告されています。
人間でも肥満は強敵ですが、猫も同様です。
もし、猫が肥満気味であれば、エサの量を調節する、フードを変える、運動量を増やすなど対策を考えましょう。
適性な体重かどうかは、動物病院に行けばすぐに体重測定ができますので、愛猫の体型が気になる方は健康診断がてらお願いしてみるのもいいかもしれません。
<猫の肥満は人間のせい!?>
最近は猫の喰いつきがいいおやつもたくさん販売されています。
コミュニケーション手段の一つとしておやつをあげるのはいいのですが、あげすぎは厳禁。
最新の調査では「猫の食事を適切に制限することで飼い主への愛情が深まる」との報告もあるようです。
おやつをあげないからと言って、猫から嫌われることはありません。
1日に必要なカロリー数とエサの量から計算をして、適切なおやつの量をあげるようにしましょう。
2.下痢や嘔吐を繰り返していないか
猫は季節の変わり目に、下痢や嘔吐を繰り返しやすいと言われています。
下痢はフードの食べ過ぎ、ストレス、発情などが原因です。
嘔吐についても、春の換毛期で被毛が抜けきらずに残ってしまい、そのまま夏になってしまったときに嘔吐しやすいと言われています。
これは、冬毛が残っているために体温調節がうまくできず、夏バテになり、食欲不振から嘔吐してしまいます。
そして、先ほどお話した毛球症の症状にも、下痢と嘔吐があります。
季節の変わり目は気温が変わりやすく、上手に体温調節ができない結果、体調を崩しやすくなるそうです。
3.ストレスがたまっていないか
季節の変わり目に、一番気を付けたいのが猫のストレスです。
猫のストレス耐性は強くありません。
環境の変化には特に敏感と言われていますので、家族やペットが増える、引っ越しなど大きく生活環境が変わる時は注意しましょう。
また、寒暖差に敏感なのも猫の特徴の一つ。
室温はもちろんのこと、寝床やトイレ、トイレまでのルートも冷えすぎない(暑すぎない)か、改めて確認してみてはいかがでしょうか。
猫のストレスサインに気づき、早めに対応してあげましょう。
猫がストレスを感じているときのサイン
- 食欲不振
- 下痢、嘔吐
- 自分の身体を過剰になめる(過剰グルーミング)
- 触られるのを嫌がる
- なんとなく元気がない
<春ストレスについて>
春は寒暖差に加え、環境の変化も起こりやすく、猫にとってはストレスフルな時期です。
この時期にストレスから体調を崩す猫は多く、「春ストレス」とも呼ばれています。
これらのストレスから、突発性膀胱炎、猫風邪、心因性脱毛症などの病気になる猫もいます。
また、尿マーキングの回数が増えたり、ひどい場合は脱走してしまったりするなどの困った事態も起こりやすいです。
春は特に様子に注意し、早めに対策をしてあげましょう。
季節の変わり目を気持ちよく乗り切る方法
抜け毛に、ストレスに、体調の変化。
季節の変わり目になるといつも以上に気を付けなければいけない部分が多く、飼い主さんにとっても神経質になってしまいます。
これらのことも日常の中のちょっとした工夫で、対策をすることができます。
すでにやっていることもあるかもしれませんが、ぜひ参考にしてみてください。
①こまめなブラッシング
抜け毛対策には必須のブラッシングですが、ストレス対策にもうってつけ。
「猫は自分で毛づくろいをするから」と、あまりブラッシングをしていない飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんね。
ブラッシングを嫌がる猫ちゃんもいますし、慣れていないとなかなかできないと思います。
わたしの友人Kさんのお話ですが、お宅にお邪魔するといつも猫ちゃんがKさんの足元にすりよってきます。
Kさんの話によると、その猫ちゃんは以前、人間嫌いだったのか、飼い主にもなかなか近づかない猫ちゃんだったというからビックリ。
それが、抜け毛対策として始めたブラッシングをしだしてから甘えてくるようになったとのこと。
子猫の時はしていなかったので、最初は嫌がったそうですが、猫ちゃんのペースに合わせて、最初はほんの1~2分程度のブラッシングから始めたそうです。
子猫のときから始めるのが理想的ですが、ある程度年齢を重ねた猫ちゃんでも習慣づけることはできます。
まずはブラシに慣らしていくことから始めていきましょう。
②食事の見直し
季節の変わり目になると食欲がかわるのはこれまでお話してきましたが、それにあわせてフードを見直すのも大事なポイント。
また、換毛期に入り、毛玉をたくさん吐くという猫ちゃんも多くなります。
最近では食物繊維が豊富な毛玉対策のフードがたくさん市販されてしますが、個人的にオススメなのは「猫草」です。
一般的な猫草は「燕麦(エンバク)」という別名カラスムギの若葉、または小麦や大麦の若葉のことで、イネ科の穀物になります。
猫草を食べることで胃や腸を刺激し、毛玉の排出促進につながる仕組みがあります。
フードを変えたくない、おやつはカロリー的にあまり食べさせたくないという飼い主さんにオススメです。
③寒暖差対策
1週間どころか、1日の気温差が大きいのも季節の変わり目にはよくあることです。
猫にとって快適な室温は22~24℃くらいです
真夏・真冬の時期はエアコンなどで十分な対策ができますが、季節の変わり目になるとあまりエアコンに頼らなくなるため、突然の暑さ・寒さに対応しきれない場合もあります。
最近の天気予報では、時間帯による気温の変化も伝えてくれるので、夜中に気温が低くなる時や外出中に冷え込むことが予想されるときは、エアコンのタイマー機能を使うことも1つの手段です。
また、夜中に冷え込んでしまい、そのせいでトイレに行くのが億劫になる猫も多く、中にはトイレを我慢して膀胱炎になってしまったという話も聞きます。
トイレまでのルートにタイルカーペットをひくなど、猫にとって冷たさが少しでもマシになるような工夫をしてみてはいかがでしょうか。
寒暖差対策は、猫自身ではなかなか難しいところがありますので、飼い主さんがしっかりと環境を整えてあげることが重要です。
④環境の変化によるストレス対策
引越しや転職、結婚、出産などで大きく生活環境がかわるとき、猫にとっても大きなストレスになります。
特に春は人の動きが大きくなる季節、猫にとってもその変化を敏感に感じ取ってしまうのかもしれません。
引越しは、猫にとっては「縄張りから強制的に追いだされた」と感じてしまいますし、家族が増えることも「知らない人が縄張りに入ってきた」というストレスにさらされます。
引越し対策は、自分のニオイがついたものがポイント
新居に引っ越して心機一転と思い、新しくベッドやお皿を買い替えようとしているのならば、それは少し待ってください。
もともと猫は縄張り意識の強い動物なので、自分のニオイがするものがないと不安になってしまいます。
新居の中でも自分のニオイがするものがあると、安心して、早く慣れてくれます。
また、移動の時に使うキャリーケースは、猫にとって「動く縄張り」となるため、引っ越しの前から使わせておくとよいでしょう。
新しい家族になったとき、まずはそっとする
家族が増える場合、基本的には猫が近づいてくるまでは必要以上に構わないようにしましょう。これは、以前一緒に住んでいて戻ってきた場合でも同じです。
猫が「この人なら大丈夫」と判断し、安心してからコミュニケーションをとってもらうようにしてください。
また、もしこれまで一緒に遊んでくれていた家族が出ていってしまった場合は、その人のニオイのついた衣類などをそばにおき、安心させてあげましょう。
まとめ
季節の変わり目は人間も猫も体調を崩しやすくなる時期。
特に猫は換毛期というデリケートな時期にも重なるので、普段以上に飼い主さんが気を使ってあげなければなりません。
換毛期の注意点とポイントをまとめました。
- 換毛期は年に2回(3月頃と11月頃)にある。
- 季節の変わり目は食欲が変わりやすいため、異常かどうかの見極めは重要。
- 下痢や嘔吐を繰り返すようなら、食事の見直しや動物病院の受診を検討する。
- 抜け毛・毛玉対策のためにもブラッシングはオススメ。
- 気温差だけでなく、環境の変化からも体調を崩しやすくなるので、環境を整える。
猫ちゃんとの生活は気を使う部分も多く、大変だと思うこともあります。
しかし、愛情をしっかりと注いで可愛がれば、猫も必ずそれに答えてくれます。
普段から愛猫との生活を楽しむことが、きっとお互いに健康で楽しく過ごす秘訣なんだろうなと、今日もゆねが日向ぼっこする姿を眺めながらしみじみと感じています。