猫の抜け毛とのお付き合い歴30年のわたしにとって、抜け毛はもはや生活の一部、あって当たり前の存在です。
カーペットやソファは毛だらけ、なでていたら手が毛だらけ、自分の服は気をつかっているつもりでもふと気付いたら猫の毛が。
すべての飼い主さんにとって、抜け毛はお悩みの多くを占めていると思います。
ズバリ結論から言いますと、「猫は毛が抜ける動物」なので、毛が抜けることは防ぎようがありません。
ですが、飼い主さんが原因を知ってケアすることで、ひどい抜け毛を軽減させることは可能です。
今回はわたしが実際に受けた抜け毛のお悩み相談をもとに、原因と対策をQ&A方式で紹介していきます。
皆さんのケースはどれに当てはまるかをチェックしてみてください。
抜け毛がひどい!いったい原因は何?
抜け毛対策をしっかりするためにも、まずは猫の毛について少し知っておきましょう。
猫の抜け毛が多いのは普通です
そもそも、猫の毛は人間に比べてはるかにたくさんの本数が生えているのをご存知でしょうか。
- 人間・・・約10万本
- 猫・・・約100万本
そうなんです。
もちろん品種によっては100万本より少ない猫もいますが、平均値でみると人間の約10倍もの毛が生えているわけです。
全身毛におおわれているということもありますが、猫は1つの毛穴につき5~7本の毛が生えているから、というのも理由の一つ。
なんと1cm四方の皮膚には約600本の毛が生えているというから、その毛の多さがわかりますね。
あまり猫に慣れていない方だと、「毛が抜けるのは季節の変わり目」と思われることも多いのですが、猫の毛は一年中365日生え変わっています。
人間の髪の毛が毎日生え変わっているのと同じですね。
個人差はありますが、人間の頭皮から1日で抜ける髪の毛は50~100本と言われています。
ということは、抜ける本数も単純に10倍としたら、猫は1日500~1000本も抜けていることになりますね。
とはいえ猫の毛は生えてる部位や季節、また猫の種類などによって、毛の密度や抜けやすさは変わります。
抜ける本数を正確に数えることはちょっと難しいですが、「猫の毛が抜けるのは当たり前」「通常でもそこそこ抜ける」ということをまずは頭に置いておいてくださいね。
- 猫に生えている毛は約100万本
- 猫は人間の10倍の毛が生えている
- 1㎝平方の皮膚に約600本の毛が生えている
- 年中生え変わるため常に抜け毛はある
毛の秘密についてもっと知りたいという方はぜひこちらを読んでみてください。図解で詳しくご紹介しています。
抜け毛がいつもより増える理由
日常的に猫の抜け毛があり、また抜ける本数もそこそこあることは分かっていただけたかと思います。
では、普段よりも抜け毛が増えるのはどんな場合でしょうか。
これには健康に問題がなくて増える場合と、病気やストレスなどのトラブルがあって増える場合があります。
こちらに簡単にまとめましたが、詳しい内容は次のQ&Aでチェックしてみてくださいね。
- 毛が生え変わる「換毛期」のため
- 年齢を重ねたため(加齢)
- 妊娠によるホルモンバランスの変化のため
- ノミやダニ、カビなどによる感染性皮膚炎
- 食物アレルギー性皮膚炎
- ノミやダニ、ハウスダストなどによるアレルギー
- ストレス
- 栄養不足
- 腎臓病や糖尿病、ホルモン異常などの病気
【Q&A】健康に問題がない抜け毛の場合
ここからは、実際に私が受けた質問を元に、色々な抜け毛のパターンをご紹介していきます。
まずは、健康に問題がない場合のQ&Aを見ていきましょう。
Q1 季節の変わり目に抜け毛がひどいのはなぜ?
猫には「換毛期(かんもうき)」という毛が生えかわる時期があります。
それは季節の変わり目というより、正確には年に2回。すなわち11月ごろと3月ごろなんです。
- 11月ごろ・・・寒くなる冬に向けて、保温機能のあるモコモコの毛が増える
- 3月ごろ・・・この先あたたかくなっていくので、毛の密度を減らすために抜ける
基本的には、モコモコの毛が抜ける3月の換毛期の方が抜ける量は多くなります。
ちなみに、毛の生え変わりの周期は60日~90日。なので換毛期は2~3か月続くんです。
最近は空調が管理されている室内飼いの猫だと、温度の変化が少ないため、換毛期が起こらない場合もありますよ。
Q2 成長したら急に抜け毛が増えた
子猫のときはそんなに抜け毛は気にならなかったのに・・・ストレスとかなのかしら?
つまり、急に抜け毛が増えたのではなく、今までが抜けない時期だったということですね。
これからは今感じてる抜け毛の量が通常の量になり、また換毛期が訪れたらさらに増えます。
ただし、食欲が落ちていたり、引っ越しなどの環境の変化、一部分だけ毛が抜けているなどの様子が見られるなら、一度動物病院で診てもらいましょう。
Q3 年中抜け毛がすごいんだけど何か対策は?
猫の抜け毛は365日ノンストップです。ですが、健康に問題が無い限りは次のようなケアで抜け毛を減らすことができます。
- こまめなブラッシング(理想は1日1~2回)
- かたくしぼった濡れタオルで拭いてあげる
- シャンプーをする(月に1回くらい)
3つともやろうと思うと結構大変ですし、お風呂嫌いの猫ちゃんだと、シャンプーするのも重労働ですよね。
そんな時にオススメなのが、濡れタオルや猫用ウェットシートなどで事前にすこし湿らせておいてからブラッシングするやり方です。
ブラッシングする時、抜けた毛が空中にフワフワ飛び散らないので、後片付けも楽ですよ。
私が気に入って使っているのがこちらの手袋型のウェットシート。
こちらはシャンプー代わりとしても使える、猫用のウェットシートなんですが、なんと手にはめて使えるんです。
愛猫「ゆね」を手で撫でながら抜け毛ケアが出来るし、手袋型なので細かい部分まで届くのでとても便利ですよ。
このシートで全体を撫でてからブラッシング出来たら完璧ですが、時間が無ければこのシートでザッと撫でてあげるだけでも十分です。
使い捨てのシートなので気軽に使えるのもうれしいポイントですね。
ちなみにこちらの記事では、抜け毛が少ない猫の品種を紹介するとともに、おすすめのブラシもご紹介しているので参考にしてみてくださいね。
【Q&A】健康にトラブルがある抜け毛の場合
続いて、健康に問題がある場合の抜け毛のQ&Aを見ていきましょう。
こんな症状があれば病気やストレスを疑ってみた方がいい、という一例なので、お家の猫ちゃんの様子と見比べてみてください。
Q4 抜け毛が多く、やたらかゆがっている
抜け毛が急に増え、強いかゆみがあったり皮膚の状態がいつもと違うなら、皮膚炎になっているかもしれません。
主な皮膚炎4つの原因や症状などをまとめたので、思い当たる症状がないか、チェックしてみましょう。
主な皮膚炎4つ【原因と症状】
【皮膚炎その1】
病名 | 皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう) |
原因 | 糸状菌という真菌(カビ)の感染 |
症状 |
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脱毛箇所 | 背中、手足、顔回り |
人への感染 | 有り |
【皮膚炎その2】
病名 | 疥癬(かいせん) |
原因 | ヒゼンダニというダニの寄生 |
症状 |
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脱毛箇所 | 顔、耳回り |
人への感染 | 有り |
【皮膚炎その3】
病名 | 食物アレルギー性皮膚炎 |
原因 | エサの中の特定のタンパク質(牛肉、魚肉、鶏肉、乳製品、小麦など) |
症状 |
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脱毛箇所 | 身体全体 |
人への感染 | 無し |
【皮膚炎その4】
病名 | ノミアレルギー性皮膚炎 |
原因 | ノミの寄生(ノミによる直接的な刺激や吸血の際の唾液に反応) |
症状 |
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脱毛箇所 | お腹、首、背中、お尻など皮膚の柔らかい部分 |
人への感染 | 有り |
いつもと違う抜け毛の多さに気付いたら、まずは皮膚に湿疹や赤みなどがないか、またしきりにかゆがる様子がないかなど観察をしましょう。
Q5 ストレスによる抜け毛はどういう症状があるの?
猫はストレスに弱い動物です。
引っ越し、飼い主とのコミュニケーション不足、新しい同居猫が増えるなど、ささいなことでも猫にはストレスになっていることがあります。
こういったストレスや強い不安を解消しようと、身体の一部分を過剰になめ続けることがあります。
これを「過剰グルーミング」と言いますが、必要以上になめることでどんどん毛が抜けてしまいます。
【ストレスによる抜け毛】
原因 |
|
症状 |
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脱毛箇所 | 内股、下腹部、背中の両側など舌が届きやすいところ |
ストレスによる抜け毛の特徴は、かゆがっている様子はないのに、しつこくなめ続けて毛が抜けていることです。
何か不安になるようなことや、今までと違うことが無いかをひとつずつ考えてみましょう。
Q6 毛が束のようにつながって抜けた!
ひっかき傷やかまれた後のカサブタについた毛が、カサブタと一緒に束のようになって抜けることはよくあります。
特に同居猫がいたり、外に出す飼い方をしている場合はその可能性が高く、特に心配はありません。
ただし、皮膚の状態は日頃からしっかりチェックしておきましょう。
Q7 抜け毛もフケもひどい・・・
抜け毛も大変なのに加えてフケもとなると、もうお手上げ状態になってしまいますよね。
ですが、きちんと原因を探り対策を取ることで、フケを抑えることはできますよ。
フケを生み出してしまう原因とその対策をまとめてみましたので、思い当たることがないかをまずチェックしてみましょう。
フケの原因 | 対策 |
エアコンによる乾燥 |
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加齢による乾燥 |
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栄養バランスの偏り |
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シャンプーのすすぎ残し |
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最近は優秀なドライシャンプーも多く出てきたので、シャンプー嫌いな猫や高齢で体力的にお風呂が厳しい猫にはぜひ取り入れてみてください。
フケや抜け毛を落とすためにシャンプーをしていても、猫が暴れてすすぎ残してしまい、フケを増やしては元も子もないですからね。
また、先ほど出てきた4つの皮膚炎の症状としても、抜け毛やフケがみられます。
そしてその他にも、フケが大量に出る皮膚炎として、「ツメダニ症」という病気があります。
【皮膚炎その5】
病名 | ツメダニ症 |
原因 | ツメダニというダニの寄生 |
症状 |
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脱毛箇所 | 頭部、背中、お腹など |
人への感染 | 有り |
ツメダニ症は「歩くフケ」とも言われるほど、大量のフケを生み出す皮膚炎です。
あまり猫自身はかゆがらないので気付きにくいのですが、突然フケが増えたならツメダニ症かもしれません。
人へも感染するので、早めに動物病院で診てもらいましょう。
猫の抜け毛は放置するとどうなるの?
自分さえ気にしなければ抜け毛は放置でもいいと思ってしまいそうですが、実は猫にも飼い主さんにもリスクがあるんです。
抜け毛を放置するリスク
ブラッシングなどのケアをしないと、猫が毛づくろいでなめとる抜け毛が増えてしまいます。
舌でなめとった抜け毛は当然飲み込むことになるのですが、飲み込む毛が多いと次のような病気になってしまいます。
毛づくろいで飲み込んだ毛は、本来なら便とともに排出されるが、毛の量が多いと処理しきれず胃腸の中でかたまりになってしまう病気。
毛玉除去剤を飲ませて治療するが、かたまりが大きくなると開腹手術も必要になる。
お腹の中で溜まったこのかたまりのことを「毛玉」や「ヘアボール」と言ったりします。
毛玉を出そうとして猫は嘔吐を繰り返すのですが、うまく吐けずに胃にとどまって胃炎になったり、何度も嘔吐をすることで食道炎になったりします。
毛球症を防ぐ方法はこまめなブラッシングで抜け毛自体を減らしてあげること。これに尽きます。
また、抜け毛を放置することは、猫だけではなく飼い主さん側にもリスクがあります。
それは「猫アレルギー」です。
猫の毛には猫アレルギーの元となる物質(アレルゲン)が含まれています。
抜け毛を掃除せず放置しておくと、このアレルゲンを沢山体内に取り込んでしまうことになってしまいます。
日々体内に取り込まれたアレルゲンの量がその人のMAXに達したとき、ある日突然猫アレルギーが発症してしまいます。
それまで花粉なんて全然平気だったのに、突然花粉症になってしまう人がいるのと同じですね。
わたしの息子もアレルギー検査で軽度の猫アレルギーと出たことがあります。
今のところ全く症状なども出てはいないのですが、少しでも発症のリスクを減らしたくて、日々のブラッシングやお掃除を頑張っている結果だと思っています。
ちなみにこれまで様々な掃除グッズを試しましたが、最近の一番のお気に入りがこちら。
このスポンジでソファやカーペットなどをなでるだけで、からまった毛をキレイにかき出してくれるんです。
粘着テープでもとれなかった毛がスッと取れるのが快感でヤミツキになっちゃいます(笑)
愛猫と家族の健康を守るためにも、抜け毛を放置せず、ブラッシング&お掃除をしていきましょう。
まとめ
「抜け毛がひどい」「病気で抜けてるのかも」といった、具体的な質問を元に、抜け毛の原因と対策をお伝えしてきました。
最後にもう一度振り返ってみましょう。
- 猫には人間の10倍の毛が生えているため抜け毛も多い
- 毛は年中生え変わり、特に年に2回の換毛期では抜け毛は増える
- 生後1年くらいまでは抜け毛が少ない
- 高齢になると抜け毛は増える
- 猫の品種によって抜けやすさに違いはある
基本的な抜け毛対策はブラッシングです。
出来れば毎日1~2回のブラッシング、そして必要に応じてウェットシートなどで拭いたり、お風呂が大丈夫ならシャンプーを加えましょう。
また、次のような症状があれば、皮膚炎などの病気による抜け毛かもしれません。早めに動物病院で診てもらいましょう。
- 抜け毛が急に増えた
- 赤みやカサブタ、フケなどの症状がある
- やたらかゆがって、激しく掻いたりする
- 一部分だけ脱毛してハゲている
さらに、環境の変化などによるストレスでも抜け毛は増えます。
- ストレスや不安を解消しようとして毛づくろいをする
- 同じ部分を何度も何度もなめるため毛が抜ける
- ひどくなるとハゲたり、皮膚が赤くなり炎症を起こす
ストレスの原因を突き止めることが最優先になります。愛猫の様子やお家の環境をしっかり観察してみましょう。
最後に、抜け毛自体を放置することは、猫にも飼い主さんにもリスクがあることを覚えておいてください。
- 猫が大量の抜け毛を飲み込むことで毛球症などの病気になる
- 猫の毛に付着するアレルゲンによる猫アレルギー発症の可能性
抜け毛の対策は時間も体力も使わないといけませんが、「猫の毛は抜けるもの」ということを頭に入れ、愛猫を抜け毛ごと愛してあげてくださいね。
https://www.shiawasegift.com/cat-hair-loss-sick/