わたしは子供の時、初代愛猫「みゅう」とのある遊びにハマっていました。
寝ているみゅうの耳にさわると、ピコッとなるのが可愛くて可愛くて。しかも寝ているはずなのに、ほんの少し触っただけでも反応するのが不思議だったんです。
先端だけわずかに触るなら気付かれないか、一瞬ならどうか、という風に寝ているみゅうの耳で遊んでいました(笑)
猫を飼った経験のある方なら、猫耳の可愛さやフワフワの毛、そしてその不思議なまでの敏感さはきっと感じたことがあるはず。
ところでその耳の毛ですが、皆さんの猫ちゃんには耳の先からシュッと伸びている長い毛はあるでしょうか。
実はこの長い毛には、「リンクスティップ」という何とも立派な名前がついています。
耳の中から生えている毛と一緒にされがちですが、実は名前も役割も違うんですよ。今回はこの魅力あふれる猫の耳の毛についてのお話をしていきたいと思います。
そうなんです。意外と多くの飼い主さんが、耳の毛は切るなどの処理が必要なのかを悩んでいます。
しかしハンターである猫にとって、耳の毛はとても大切な役割があるので、必要もないのにむやみに切ってしまうと猫の健康に悪影響が出てしまいます。
なぜ切ってはいけないのか、そしてどんな時に処理が必要なのかもあわせてお伝えしていきますね。
耳の先に生えている毛が「リンクスティップ」
こちらの写真の猫ちゃんのように、耳の先からシュッと長く伸びている毛のことを「リンクスティップ」といいます。
リンクスティップは長く生えていてゴージャスな猫もいますし、ちょこっと伸びている猫も、まったく無い猫もいます。
ではこの立派な名前はどこから来ているのでしょうか。
名前の由来
「リンクスティップ」は英語で書くと「lynx tip」となります。この「リンクス(lynx)」とはネコ科オオヤマネコ属のことなんです。
ご覧ください、耳の先から立派な黒い毛が生えていますよね。このように、オオヤマネコ属には数センチにもなる長い毛が耳の先から生えているのが特徴です。
また、「tip」はいわゆるサービス料として払われる「チップ」という意味なんですが、「先、先端に付ける物」という意味もあるんです。
「lynx tip」つまり「オオヤマネコの耳の先端」=「耳の先端の長い毛」という意味で使われているということですね。
ちなみに、他にも「房毛(ふさげ)」とか、「タフト(tuft)」などとも呼ばれていますよ。タフトっていうのは歯ブラシの表現でよく耳にすると思いますが、「房、毛の束」という意味ですね。
リンクスティップの役割
ではこのリンクスティップ、何のためにあるのでしょうか。
リンクスティップの機能は、実は正確にはわかっていません。ですが、次のような役割があると考えられています。
- 頭の上にあるものを感知するため
- 空気の流れから獲物の動きを察知するため
- より聴覚を高めるためのアンテナ
- 自分を大きく強く見せるため
どれも、狩りや縄張りを守るために必要な機能ですよね。
このように、リンクスティップはただの飾りではなく、ヒゲのようなアンテナであり、また自分をアピールするためのものでもあることがわかります。
リンクスティップのある猫種
こちらの写真の猫は、「メインクーン」という種類ですが、とても立派なリンクスティップがありますね。
主にこのような猫種にリンクスティップが見られます。
- メインクーン
- ノルウェージャンフォレストキャット
- サイベリアン
- アメリカンカール
- アメリカンボブテイル
- ペルシャ
ですが、必ずしもこの種類だからリンクスティップがあるかというと、猫によってはリンクスティップが無い猫もいるんです。
リンクスティップがあるのと無いのとでは雰囲気が変わったりもするので、もし猫をこれから飼おうと思っている方は参考にしてみてくださいね。
上記の猫たちの外見や特徴を見てみたいな~という方は、長毛種と短毛種の人気猫種を特集したこちらの記事をご覧ください。
耳の中から生えている毛との違い
ここまで耳の先の毛、リンクスティップについてお伝えしてきましたが、続いて耳の中から生えている毛との違いをお話ししますね。
耳毛の名前
「耳毛」というと、こちらの写真のように、耳の内側から生えている長い毛のことを思い浮かべる方も多いと思います。
耳の中から生えている毛は「耳毛」とまとめて呼ばれていますが、細かく分けると2種類あります。
上の写真の長い毛は、主に長毛種にみられる飾り毛で、「イヤータフト」と呼ばれたりしています。長さはすごく長い猫もいますし、くるんとした巻き毛が生えている猫もいますよ。
では短毛種には耳毛はないのかというと、そうではありませんよね。こちらの写真のように、短い毛が生えています。
このように、耳の中に生えている毛のことを「イヤーファーニッシング」と呼びますが、この耳毛はどんな猫にも生えています。
つまり、長い耳毛を持っている猫は、短い「イヤーファーニッシング」に加え、長い「イヤータフト」も持っているということです。
- どんな猫にも生えている耳の中の短い毛…イヤーファーニッシング
- 主に長毛種の猫に見られる耳から外に出ている長い毛…イヤータフト
耳毛の役割
2種類の耳毛があると言いましたが、役割としてはどちらも基本的に同じです。
- 汚れや虫などの異物が耳に入らないように保護する
- 耳そのものを障害物から保護する
- 直接音が入って刺激にならないように防ぐ
長毛種は寒い場所で生育している猫が多いので、防寒のために体毛と共に耳も長い毛(イヤータフト)で保護しているんですね。
また、猫の耳というのは、狩りをするにあたって小さな音でも聞き逃さないための構造になっており、さらに体のバランスをとるためにもとても重要な器官です。
リンクスティップが狩りのためのアンテナ増幅装置とするなら、耳毛は耳の保護のためにあるというわけです。
耳の毛の処理は必要?
実は、猫の耳がかゆそうだから切ってあげたい、という飼い主さんはけっこう多いんです。
では、耳の毛の処理は必要なのかどうか、また耳がかゆくなる原因はどこにあるのかといったところをお伝えしていきますね。
耳の毛は基本的に切っちゃダメ
先ほどからお伝えしているように、リンクスティップも耳毛もどちらも大切な役割があります。
特に耳毛の形状によっては、耳が詰まっているように見えて、切ってあげた方がスッキリするのでは?と思いがちです。
しかし、猫の耳の構造は、耳の穴から下に垂直に耳道(音の通り道)が伸び、直角に折れてその先に鼓膜という、L字型になっています。
つまり、毛が無いと異物やホコリがそのまま耳の中に入ってしまいやすい構造なんです。
ですが、カットが必要な場合ももちろんあります。
耳の毛を切る必要がある場合
耳を守るための毛ではありますが、猫によっては耳の毛が異常に伸びてしまう猫もいます。特に加齢によって伸びが早くなるケースもあるんです。
そうなると、守っているはずが、逆に守りすぎて通気性が悪くなってしまうなんてことに。
通気性が悪くなると、当然耳の環境は悪くなり、細菌や耳ダニが繁殖しやすくなって外耳炎の原因にもなってしまいます。
また、体質的に耳垢が溜まりやすい猫もいるので、そういった猫の場合はカットが必要になることもあります。
以前の愛猫「しゅり」は正にこの耳垢が溜まりやすい子で、短毛だったのでカットはしなかったものの、しょっちゅう病院に行って処置してもらっていました。
耳のトラブルの原因が多量の耳の毛によるものなのかどうかは、必ず動物病院で診断してもらうこと。
もしかしたら家の中の環境や、外から耳ダニをもらって来てしまったりと別の原因がある場合もあります。
では、猫の耳のケアは実際どうしたらいいのでしょうか。
耳のケアはどうしたらいい?
どうしてもそんな気持ちになるかもしれませんが、耳垢は基本的には自然に取れていくものなので、耳掃除は必要ありません。
世の中には、猫の耳掃除をするためのグッズが沢山あります。ですが、必要以上に耳掃除をしたりすると、かえって耳を傷つけ外耳炎の原因になってしまうことも。
なので、異常を感じたらまずは動物病院にて診断を受けることを基本としてください。また、特にかゆがったり、見た目何も異常がないのであれば、耳は触らなくて大丈夫です。
特に綿棒タイプの耳掃除グッズは、繊細な猫の耳の構造を傷つけてしまうこともあるので、使わないようにしましょう。
目立つ汚れや耳垢を取ってあげたい場合は、柔らかいコットンにオリーブオイルやベビーオイルを含ませて、優しく拭ってあげてください。
わたしが「ゆね」に使っているのがこちらのオーガニックコットン。柔らかくて耳や目などのデリケートな部分にも、また歯磨きにも使えるのでオススメです。
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そして猫の全身を清潔に保つことも大切ですが、実はシャンプーの時に暴れて水が耳に入り、外耳炎になってしまうこともあります。
こちらの記事ではシャンプーしなくても綺麗を保つ方法を載せているので、おうちの猫ちゃんに合った方法を探してみてくださいね。
要注意!こんなかゆがり方・耳の状態
少しかゆそうにしている時は、毛などが耳に入ったのかもしれません。しばらく観察して、また平常に戻っているようであれば問題ありません。
しかし、もし耳の病気だった場合、激しいかゆみと、症状が悪化すれば痛みすら出てきます。そういった時はかゆがり方がいつもと違います。
- しょっちゅう耳を掻いている
- 家具やテーブルの脚などに激しく耳をこすりつける
- 頭をやたら振る
また、耳の状態がいつもと違う、ということも早期発見につながります。
- 耳の付け根に自分でひっかいた傷が複数ある
- 外に出ている耳(耳介)が赤くなったり熱を持ったりしている
- 耳から変な匂い(悪臭)がする
- 耳の中に黒い垢(耳垢)が溜まっている
おうちの猫が妙にかゆがっているなら、まずは耳の状態をしっかり観察してみましょう。
また、何もない猫でも、普段から耳の健康な状態を見ておくことで、異常が起きた時に気付きやすくなります。
耳のかゆみが出る病気
最後に、猫が耳をかゆがるときに疑われる病気は、次のようなものがあります。
外耳炎 | 耳の穴から鼓膜までの部分(外耳道)が炎症を起こしている状態のこと |
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中耳炎 | 鼓膜の奥にある中耳が炎症を起こしている状態のこと |
耳血腫(じけっしゅ) | 外に出ている耳の部分(耳介)の皮膚の下に血の塊(血種)が出来ている状態のこと |
特に外耳炎は、猫の耳のトラブルとしては非常に多く、中耳炎や耳血腫は外耳炎が進行して起きることが多いんです。
また、外耳炎の原因も多数あり、主に次のようなことが原因になっています。
- 細菌や真菌(カビ)が耳垢に繁殖
- 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の寄生
- アレルギー
- 種子などの異物が入りこむ
実はわたしが高校生の時に「しゅり」を拾った時、耳ダニがいたらしく、「みゅう」にもうつってしまって2匹とも大変なことになってしまったんです。
外耳炎の状態で早期発見が出来れば、治るのも早く、中耳炎・耳血腫への進行を食い止めることができます。
まずは日常における猫の耳の状態や、かゆがり方をチェックすることがとても大切なので、愛猫の耳を愛でるとともに、観察もしっかりしていきましょう。
豆知識:猫のパーツの知られざる名前
リンクスティップという名前を知ってから、他にも猫の身体には素敵な名前があるんじゃないかと調べるようになりました。
すると出るわ出るわ、たくさ~んありました。それこそ覚えきれないくらいです(笑)
猫のお顔のω部分
猫のヒゲが生えている部分のことを、「ウィスカーパッド(whisker pad)」といいます。
「whisker」というのが「猫のヒゲ」という意味で、日本語では鼻たぶとか頬袋なんて呼ばれていますね。
プニプニとして形も感触も可愛いパーツですよね。
幸運をひっかけるしっぽ
日本語では「かぎしっぽ」と言われる、骨が一部折れ曲がったしっぽのことを、「キンクテイル(kinked tail)」と言います。
この折れたしっぽで「幸運をひっかける」と考えられていて、幸運をもたらすと言われているんですよ。
短いしっぽの子も触ってみるとかぎしっぽになっていることがあります。お家の猫ちゃんのしっぽはどうでしょうか。
魅惑のクリームパン
猫の指先のことを「ポウ(paw)」と言います。
猫好きの中では「クリームパン」と呼ばれていたりして、とても人気の高い部分でもあります。
クリームパンという呼び方はとても可愛いくて好きですが、たまにはお洒落に「ポウ」と呼んでみるのも良いですよね。
ぜひ、明日から使ってみてくださいね。
まとめ
愛らしい猫の耳の毛について、意外と知らない部分は多かったのではないでしょうか。
最後に簡単に耳の毛についてまとめてみますね。
- 耳の先に伸びている毛…リンクスティップ(房毛またはタフトとも言う)
- 耳の中から生えている毛…総称して耳毛(長い毛はイヤータフト、短い毛はイヤーファーニッシング)
- リンクスティップ…聴覚や触覚をより鋭敏にして狩りを有利にする
- 耳毛…耳の保護、異物が入るのを防ぐ、防音
また、耳に起こりうるトラブルとしては次のような病気があります。
病名 | 状態 | 原因 |
外耳炎 | 耳の穴から鼓膜までの外耳道に炎症が起きている | 細菌・真菌(カビ)・耳ダニ・アレルギー・異物 |
中耳炎 | 鼓膜の中の中耳が炎症を起こしている | 外耳炎が進行した結果 |
耳血腫(じけっしゅ) | 外に出ている部分(耳介)に血の塊が出来ている | 耳をひっかきすぎることによる(主に外耳炎によるかゆみ) |
こういった病気を防ぐためには、普段からの猫の行動や耳の状態の観察が大切になってきます。
耳の毛が特殊な猫や体質的に必要でない限り、基本的には耳掃除や耳毛のカットは必要ありません。
むやみにカットしたり耳掃除することは猫の耳の健康にもよくありませんし、むしろ外耳炎の原因になることもあるので、控えましょう。
耳をしきりにかゆがるようであれば、一度動物病院に連れて行って診察を受けるようにしてくださいね。
今回は耳の毛に着目しましたが、どんな耳の毛でもどんな形をしていても、可愛い愛猫の大切さには変わりません。