猫ちゃんのキラリと光る歯って素敵ですよね。あのムニムニのお口の奥にあんな鋭い歯を隠しているなんて、まさにギャップ萌え(笑)
ところでその猫ちゃんの歯磨きって、皆さんはどうされてるでしょうか。
実は歯磨きについてのとらえ方って、飼い主さんそれぞれ違うんですよね。わたしも、昔の初代愛猫「みゅう」が歯周病と診断されるまでは、猫の歯のケアについては無頓着でした。
でも、今は違います。現役歯科衛生士のわたしとしては、声を大にして言いたい。
でもブラシを使っての歯磨きは、初心者の方や、口を触られるのが嫌な猫ちゃんにとってはかなりハードルが高いもの。
そこで、歯ブラシという最終目標の前に試してみてほしいのが「歯磨きシート」。手軽に買えて、種類も豊富な歯磨きシートの選び方や歯磨きのやり方まで、わたしが徹底的にご紹介しちゃいます。
お口のケアを甘く見て行わないと口内炎や歯周病など、大切な猫ちゃんの命にかかわる病気につながる危険性があります。
ぜひこの機会に猫ちゃんのお口のケアを一歩進めてみてくださいね。
なんで猫の歯磨きは必要なの?
まずは、猫ちゃんの歯磨きがなぜ必要なのかを一緒に確認してみましょう。
猫は虫歯にならない!?
よくご存じですね。ですが、虫歯にならないからといって、歯磨きが必要無いというわけではないんです。
「猫が虫歯にならない」という話は、割と多くの飼い主さんが知っていることと思いますが、その理由をきちんと知っている方は少ないかもしれません。
- 猫の口の中はアルカリ性(pH7.5~8.5)のため、虫歯菌が増殖しにくい
- 猫の歯の形は人間のような臼型ではなく山型だから隙間にカスが入りにくい
- あまり噛まない(咀嚼)しないので、食べカスが残りにくい
- 肉食動物のため、虫歯菌のエサとなる糖類をあまり摂取しない
- 炭水化物を糖へと分解する酵素「アミラーゼ」が唾液の中に含まれていない
このような理由により、猫は虫歯にならないといわれているんです。
でも待ってください。これは猫が、野生に近い食生活をしている場合に限ってのこと。
今のキャットフードやおやつは、柔らかかったり、糖類や炭水化物を多く含んでいるものもあるので、今や猫が虫歯にならないとは言い切れないんです。
猫のお口のトラブル
実は、猫のお口のトラブルで多くを占めているのは、虫歯ではなく「歯周病」なんです。これは、虫歯菌が歯を溶かしていく「虫歯」とはまた違う、恐ろしい病気です。
歯にたまった食べかす(歯垢)に住みついた細菌が繁殖し、歯肉が炎症を起こしたり、重度になると骨や歯を支える組織全体に炎症が起きる病気
この歯周病は酷い症状になると、歯周病菌が血液を通って全身に回り、内臓機能に悪影響が出ます。最悪の場合、猫の命さえも奪いかねない病気です。
歯周病・歯肉炎・歯周炎の詳しい話や用語はややこしくなりやすいので、こちらの記事を参考にしてくださいね。
ライオンやヤマネコなど、野生のネコ科動物は肉食ですよね。彼らは獲物を食べる時、硬い皮膚や筋肉を嚙みちぎって食べています。その時に歯の表面の汚れは自然に取れているんです。
つまり、元々猫は歯のトラブルは少なかったけれど、人に飼われて食生活が変わってきたことによって、歯周病などのリスクが高くなっているということなんです。
なぜ1日1回必要なのか
猫の歯磨きは「1日1回」または「3~4日に1回」「1週間に1回」などと言われています。
実はこれ、ある意味どれも正解なんです。それぞれ根拠にしている事が違うので、このように違う数字が出てきているだけなんですよ。順番にお伝えしますね。
1日に1回
歯の表面には、常に「菌膜(ペリクル)」と呼ばれる薄い膜が存在します。これは、唾液に含まれるタンパク質から出来ている膜で、歯磨きが済んだ直後からすぐ形成されます。
決して悪いものではなく、熱や酸から歯を守ってくれるバリアのような存在なのですが、この菌膜が約24時間放置されてしまうと、「歯垢(プラーク)」となります。そして歯垢が放置されて石のようになり(石灰化)、数日で「歯石」となるんです。
菌膜が約24時間放置されて歯垢になり、さらに放置されると歯石となる
歯垢はご存知の通り、歯周病や虫歯のきっかけになるものですから、早めに取り除く方が良い事はわかりますよね。
1週間に1回
これは先ほどの、猫のお口の中がアルカリ性だから虫歯になりにくい、という話と関係してきます。実はお口がアルカリ性であるがゆえに、歯垢から歯石になる「歯石化」が非常に速いんです。
人間が約3週間ほどと言われているのに対し、猫は約1週間で歯石になってしまうんです。つまり、この期間に対して「1週間に1回」という頻度が推奨されているわけですね。
参考までに、人間と猫と犬のお口の中と、歯石化にかかる日数を表にまとめてみました。
人間 | 弱酸性~中性(pH6~7) | 約3週間~約25日 |
猫 | アルカリ性(pH7.5~8.5) | 約1週間 |
犬 | アルカリ性(pH8~9) | 約3~5日 |
このように、どちらも大切な理由があるのですが、歯科衛生士の私としてはやはり1日1回をオススメします。というのも、猫は元々口のトラブルが少ない生き物のため、自分でお口のケアをする習性がありません。
そこで飼い主さんの出番です。猫ちゃんのお口の健康をこまめなケアでしっかり守って、いつまでも元気にごはんが食べられるようにしてあげたいですよね。
歯を磨こう!まずはお口慣らし
今までお口を触られる習慣がない猫ちゃんにとっては、お口にいきなり何かを入れられるのは怖いもの。わたしも以前の愛猫「みゅう」と「しゅり」の2匹は、歯のケアを途中から始めたので、とても苦労しました。
出来たら小さい頃からお口ケアに慣れてもらうのが理想ですが、大きくなった猫ちゃんでも大丈夫。徐々に慣れていくためのステップをご紹介します。
- 口の周りをやさしくなでる
- 両手で包むようにムニムニと口周りをマッサージ
- 指でそっと口を開いて前歯(犬歯)をなでる
- 少しずつ他の歯や歯茎もなでてマッサージ
このような感じで徐々に進めていくのですが、覚えていてほしいのが、猫ちゃんが嫌がったらすぐやめること。そして1ステップにつき1日~1週間以上は時間をかけてあげることです。
また、その日のステップができたら、オヤツなどのご褒美をあげてくださいね。そうしたら、お口周りを触られること=嬉しいことという関係図が猫ちゃんの中に生まれていき、この後の歯のケアがさらにやりやすくなっていきます。
- 猫がリラックスしている状態のときに行う
- 嫌がったらすぐやめる
- 焦らず、ゆっくり日数をとって次のステップに進む
- お口を触らせてくれたらご褒美をあげる
また、こちらの動画では動物看護師さんがお口の触り方について紹介されています。これを何日も何週間もかけてゆっくり進めていくんだな~と、早送りで見ているようなイメージで見てもらえたらと思います。
歯を触っても大丈夫!次はシート選び
歯が触れるようになったら、いよいよ直接歯を磨く「歯磨き」のスタート地点です。歯磨きの最終目標は、歯ブラシを使ってのケアですが、最初から歯ブラシを嫌がらない猫ちゃんはなかなかいません。
そりゃあ、こうなっちゃいますよね。なので歯ブラシの前に、歯磨きシートを導入する方がとても多いんです。
もちろん歯ブラシの方がしっかり汚れを落とせるので、最終目標としていつかは挑戦して欲しいのですが、まずはシートで猫ちゃんに歯磨きに慣れてもらいましょう。
歯磨きグッズは必ず犬猫用に作られたものを使いましょう。人間用は有害になる成分が入っていたり、猫の口腔内を傷つけてしまうこともあるので、決して使わないように!
シートを選ぶときに大事になるのは、こちらの3点。
①素材
②成分
③価格
素材で選ぶ
歯磨きシートは、後で使い方を詳しくお伝えしますが、基本的には飼い主さんの指にシートを巻きつけて使います。なので、飼い主さんの指の長さや猫ちゃんの口の大きさによっても、使い心地はそれぞれ変わってくると思います。
これはわたしの個人的な感想ですが、やや厚手のシートの方が指のフィット感がよく、磨いていてもズレにくいので使いやすいですね。中にはシートのメッシュが粗くて、いちいち歯に引っかかったりするものもあります。
その点で使いやすかったのがこちらの歯磨きシート。
こちらは獣医さんにすすめられた商品なので、とても信頼感があります。
シートの材質はポリエステルとナイロン。このナイロンが使われていることで、強度と耐久性が高いシートとなっているんですね。
また商品紹介によると、「エッジ構造&ミクロの網目で歯の表面の汚れをかきとる」とあり、しっかり汚れを取ってくれる造りになっているのがわかりますね。
使われている成分で選ぶ
猫の歯磨きをする場合、湿らせたガーゼなどを使ってもいいのですが、市販の歯磨きシートの中には歯に良いとされる成分を配合しているものもあります。
例えば先ほど紹介した歯磨きシートには抗菌・抗炎症性作用があるといわれる「明日葉抽出物」と、歯石化を遅らせる成分「ポリリン酸ナトリウム」が配合されています。
他にも有効成分を含むシートは沢山ありますが、中でも面白いのがこちらの歯磨きシート。
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短い歯磨きでもしっかり汚れを落とせるように、研磨剤(炭酸カルシウム)を業界で初めて配合した歯磨きシートです。
今の愛猫「ゆね」は基本歯ブラシなのであまりシートは使わないのですが、知人にすすめられて使ってみたところ、汚れがとれて茶色くなるのがとても快感でした。
価格で選ぶ
やはりそうですよね。飼い主さんのお財布にとって、価格も大切な条件。歯磨きシートもお値段は様々ですが、コスパ重視で選ぶならこちらです。
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網目の汚れが取れやすい構造や、消臭・抗菌作用のある成分、そして猫に安心なノンアルコール・ノンパラベンと、盛りだくさんなのにこの価格。
このシートを発売している株式会社スーパーキャットさんは、それまで割と高価だった歯磨きシートを、商品開発に力を入れてグッと価格を抑えることに成功。多くの飼い主さんから喜ばれ大ヒット商品になったとか。
材質はパルプ、レーヨン、融着繊維。この融着繊維というのは、二つの材料を熱によって合体させて作ったもので、紙おむつにも使われている素材なので安心です。
ちなみに「ゆね」はこのシートの緑茶の成分が気に入っているのか、フンフン匂いをかいでいて、口に入れても嫌がりません。猫ちゃんによって、やはり匂いの好みがあるようなので、気に入るシートを選んであげてくださいね。
番外編:安全性にさらにこだわって選ぶ
ご紹介した3つのシートは、もちろんペットの安全性に十分配慮して作られています。ですが添加物やシートの製造過程で使われる接着剤などにもこだわりたい、という飼い主さんはこちらのシートを使ってみてはいかがでしょうか。
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正確には歯磨き成分が含まれる歯磨きシートではなく、コットンシートです。100%オーガニックコットンを使用しており、接着剤は使用せず高水圧で繊維を絡めることでシート状にしています。
接着剤、防カビ剤、防腐剤、漂白剤等の合成化学成分を全く使っていないものなので安心ですよね。また、ケア用として開発されているので、水に濡らしても丈夫で、繊維残りや毛羽立ちが少ない質感が特徴です。
歯磨きだけでなく、目ヤニ取り、耳掃除やデリケートな部分にも使えるコットンシートで、ひとつあるといざという時に便利です。
歯磨きに使う時は、水に濡らしてそのまま磨くか、もしくは猫用歯磨きペーストをつけて磨いて使ってくださいね。
さあ歯磨きシートでお口のケアをやってみよう
とその前に。まずは猫ちゃんに歯磨きシートに慣れてもらうところから始めましょう。先ほどのお口慣らしと同じく、急いで歯磨きシートで磨こうとしなくて大丈夫。
歯磨きシートを使う時のステップ
猫ちゃんがそのシートを嫌いになったら元も子もありません。そのシートは買った意味もなくなってしまいます。それを避けるためにも、次のステップでシートに慣れてもらいましょう。
- 歯磨きシートを顔の周りにもっていき、匂いを確かめさせる
- 歯磨きシートを巻きつけた指が顔の近くにあることに慣れてもらう
- 歯磨きシートを巻きつけた指で牙(犬歯)を触る
どうでしょうか。だいぶ猫ちゃんとシートを巻きつけた指は仲良くなれたでしょうか。もしなかなかシートに慣れてくれない場合は、猫の好きな味付けがされた歯磨きペーストをシートに付けて、なめさせるというのも有効ですよ。
ここまで何回か指に巻きつける、という使い方が出てきましたが、実際の巻き方をご紹介します。
シートを横長に二つ折りし、利き手の人差し指にくるくると巻いていきます。わたしはシートで人差し指を挟み込んでからギュッと巻いていくのが最も磨きやすいですね。
しっかりと巻けたら、最初は1本目の表面だけ撫でるように磨く。そして慣れてきたら2本、3本と磨いていきましょう。もちろん日数を重ねてゆっくり猫ちゃんに歯磨きに慣れてもらいましょうね。
猫ちゃんが、シートで磨かれるのも飼い主さんとのコミュニケーションと思えるくらい慣れてくれるのが理想です。そうなったら歯の裏側も磨いてみましょう。
歯磨きシートに慣れたら
猫ちゃんが歯磨きに慣れてきたら、出来るだけ上の歯、欲を言えば上の奥歯を重点的に磨けるとより良いです。なぜなら上の奥歯は唾液腺が近くにあり、最も歯周病になりやすいからです。
唾液に含まれるミネラル分(カルシウムやリン)が歯垢に付着することで石灰化し、歯石となる
とはいえ、人間の指は猫にとってちょっと大きくて、シートではうまく磨けないと思います。最初は無理して磨こうとせず、猫ちゃんも飼い主さんも熟練してきてから歯ブラシに移行していくのがオススメです。
また、週に1回だけは歯ブラシでしっかり磨き、その他の日はシートでザッと汚れをとっておく、というのも飼い主さんと猫ちゃんの負担が少なくて良いですね。
歯磨きしていて血が…!これって病気?
どうしよう、歯磨きをしていたらシートに血がついている!という電話が知人からかかってきたことがあります。結果その知人には動物病院に行くように伝えたのですが、猫の口の中からの出血は色々な原因があります。
多くは歯周病などの病気によるものなのですが、病気ではない場合もあります。簡単に見ていきましょう。
- 乳歯が抜け落ちたあとの出血
- 顔をぶつけるなど、怪我による出血
- 歯周病
- 歯肉口内炎
- 破歯(はし)細胞性吸収病巣
- 扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん
1日だけでなく数日出血が続く場合は歯周病などの病気が進んでいる場合があります。歯の抜け変わりの時期(生後約3~6か月)の子猫や、よほどはっきり怪我した場合でない限りは、基本的に病院に行って診察を受けることをおすすめします。
お口の病気は、進行するとエサを食べることができず、ますます弱ってしまう可能性もあります。たまたま血が出たのかな、など軽く流さず、病気のサインだと受け取って、しっかりケアしてあげてくださいね。
まとめ
猫ちゃんに歯磨きが必要な理由、わかっていただけたでしょうか。虫歯にならないし、甘いものを食べているわけでもない猫にお口のトラブルが発生してしまうのは、人間との生活を選んだからこそと言えるでしょう。
とはいえ、いきなり歯ブラシで磨くというのはかなり難しいので、歯磨きのスタート地点としてぜひ歯磨きシートを活用してください。
- 猫の歯は虫歯になりにくい
- その代わり、歯垢が歯石になる時間は約1週間と短い
- お口ケアは出来たら1日1回、最低でも1週間に1回
- 歯を触れるようになったら歯磨きシートで磨いてみる
- 歯石が最も出来やすい上の奥歯が磨けたらGood
猫は、牙がなくなると死に直結するという野生の本能を持ち続けているため、歯を触られるのは基本的に嫌がります。
でも、飼い主さんとの信頼関係、そしてコミュニケーションによってお口のケアに次第に慣れていってくれるはずです。どうか急がず、無理させないようにゆっくり歯磨きに慣れさせてあげてくださいね。