最近うちのゆねのように保護猫シェルターから子猫を譲り受けた友人からこんな相談を受けました。
猫が物を噛むことはよくあること。ですが今回は子猫ということもあり、もしかしたら『歯をかゆがっている』可能性も。
そこで考えられる原因を友人に伝えたところ、その後まさにその原因が当てはまっていたと連絡がありました。
今回子猫というヒントがありましたが、猫が歯をかゆがるには恐ろしい病気が隠れていることもあるんですよ。
子猫に限らず、猫が歯をかゆそうにするときにはどんなことが考えられるのか、詳しくご紹介していきたいと思います。
猫の歯がかゆいときは口に異変がある
猫が歯をかゆがっていたら、それはずばり口の中で何か異変が起きているサインと考えましょう。
でもその異変が必ずしも危険な状態というわけではありません。
猫の成長途中で、すべての猫が体験するものといってもいい、いわば『それが普通』という原因もあるんです。
もちろん猫が噛むのはストレスからということもありますが、次の項目に当てはまるものがあれば、あなたの猫は『歯をかゆがっている』可能性が高いです。
【歯がかゆい判断チェック項目】
かゆがる様子が見られたらここをチェック
生後3週間~生後6か月の子猫
または
強い口臭がある
普段歯みがきができていない
ストレスが思いつかない
このチェック項目、実は歯をかゆがる時の原因となるもののチェック項目なんです。
次はいよいよ、歯がかゆくなる原因について説明していきますね。
猫が歯をかゆいと感じる2つの原因
では、先ほどのチェックリストで歯をかゆがっていることがわかったら、次はその原因のご説明をしていきたいと思います。
かゆがる原因1、歯の生えかわり
わたしたち人間も乳歯から永久歯に生えかわりを誰しもが経験しますよね。これは猫も一緒なんですよ。
歯が生えるときの刺激でムズムズとかゆくなってしまうんです。
猫が歯をかゆがっていたらまずは月齢をチェック。そこから、この原因を推測することができますよ。
猫の歯の生えかわり時期
猫の乳歯の生え始めと、永久歯への生えかわり時期はこちら。
乳歯の生え始め・・生後3週ごろ~生後7週(約1ヵ月半)ごろ
永久歯への生えかわり:生後11週ごろ(3ヵ月)~生後25週(約6ヵ月)ごろ
人間と比べるとすごく早いですよね。
人間の歯は生後6ヵ月ごろ生え始め、3歳ごろまでには20本の乳歯が生えそろいます。その後、6歳ごろから12歳ごろまで乳歯から永久歯へと生えかわる期間と言われているんですよ。
関連記事:猫の歯の本数は30本!気になる役割や構造について学んでみよう!
生えかわり時期の行動チェック
それでは生えかわるときに猫ちゃんたちはどんな行動をしているでしょう。
口臭がする
歯茎からの出血
食欲がない
人の手や物に噛みつく
歯が下から生えてきていることで歯ぐきがムズムズかゆみが出ます。そのため、人の手や物をカミカミしてしまうんです。
ただ、硬いをもの噛むことで口の中を傷つけてしまうこともあるので、噛んでも安全なものにしましょう。
そして猫ちゃんの口の中にはバイ菌もたくさんいるんです。人の手を噛むことで、噛まれた人が感染症にかかってしまうことも。
口臭がする
猫ちゃんの歯は、人間の歯のように乳歯が抜けたあとしばらく生えてこないということはなく、乳歯と永久歯が同じ場所で数日間一緒に生えていることも多いのです。
そのため食べカスが歯の間に残りやすく、口臭の原因になります。
また、歯が抜け時に出血も口臭の原因の一つ。
歯ぐきからの出血
乳歯が抜ける際に出血したものです。初めて見ると心配になりますが、数分で止まれば問題ありませんよ。
食欲がない
乳歯が抜けそうになってグラグラしていることで痛みがあり、食欲が落ちてしまう猫ちゃんもいるんです。
そしてなんと、猫ちゃんの乳歯は知らない間に抜けて、そのまま飲み込んでしまうこともすくなくありません。
なので、もし乳歯を見つけられたらとってもラッキー。
わたしは1本だけ見つけたことがあります。大事な宝物なのでこちらのケースに入れて保存しているんですが、名前も入れてもらえるので、まさに宝物入れにぴったりです。
かゆがる原因2、歯周病
ちなみに以前わたしが飼っていた「しゅり」も歯周病でした。
3歳以上の猫の80%は歯周病にかかっているといわれているほど、口の中の病気『断トツの第1位』なのです。
歯周病は細菌が感染し、炎症を起こしたもの。
炎症が起きることでかゆみの神経に働く物質が放出され、かゆいと感じます。
猫の歯周病って聞いたことはありますか。歯周病について少し説明しますね。
歯周病の原因
歯周病の原因はそう、食べカスとだ液中の成分なんです。
これが歯に付くことで歯垢となり、約1週間ほどで歯石に変化。この歯垢や歯石に付いた細菌の中で、歯周病菌という細菌が増殖することで歯周病は発症します。
関連記事:すぐ実践できる!猫の歯磨きのやり方を3ステップでわかりやすく解説
次に症状です。チェックリストを使って症状が現れていないかをチェックしてみましょう。
歯周病を疑う行動をチェック
猫ちゃんのどんな行動や変化が歯周病を疑うものになるのでしょう。
歯が黄色くなった
歯茎が赤くなった
歯肉から出血する
ゴハンに時間がかかるようになった
ゴハンを残すようになった
片側の歯でしか噛んでいない
よだれの量が増えた
顔を触られるのを嫌がる
口を家具や床などにこすりつける
前脚でしきりに口元をぬぐう
くしゃみや鼻水が出る
グルーミングをしなくなった
では次に治療についてですね。
歯周病の治療
残念ながら歯周病は自然には治りません。「そのうち治るかも~」はないのです。
歯周病の治療は主に3通り。
【歯周病治療】
- 歯石の除去・・全身麻酔で歯や歯周ポケットについている歯石を除去
- 薬の投与・・歯周の炎症がひどいときや、抜歯の後などの感染症予防に使用
- 抜歯・・歯石を取り除いても治せない場合に選択
これら以外にも補助的に治療として使われるのが、皆さんもきっと耳にしたことのある『ラクトフェリン』。
口内環境を改善させ、口の中の病気の治療に役立っているんです。こちらの記事で詳しく説明していますのでどうぞご覧ください。
関連記事:猫の歯肉炎治療と予防にラクトフェリンがおすすめ!効果を詳しく解説
歯周病は進行しひどくなってしまうと全身に細菌が広がり、死に繋がってしまうこともある恐い病気。なので早く見つけて早く対応してあげましょう。
歯周病についてはこちらで詳しくお話ししていますのでぜひご覧ください。
関連記事:【注意】猫は歯周病・口内炎が原因で死ぬ?!今日から始めたい予防法
《ここまでのおさらい》
【歯がかゆい判断チェック項目】
かゆがる様子がみられる時はここにも注目
- 生後3週間~生後6か月の子猫
または
- 強い口臭がある
- 普段歯みがきができていない
- ストレスが思いつかない
【歯をかゆがる原因】
歯の生えかわりで歯茎が刺激されてかゆい
歯周病による炎症でかゆい
では歯がないときの食事についてもご紹介していきますね。
猫の歯がないときの餌やり方法
歯がない場合、餌はどうすればいいか悩みますよね。
でも大丈夫。
ちょっと工夫をすることで、ちゃんと食べることができます。
猫は元々ほとんど噛まずに丸飲みする習慣があります。
歯が残っている場合
歯が抜けたあと2週間は柔らかいフード(ウエットフードやドライフードをふやかしたもの)に変えて、その後ドライフードに戻していきましょう。
歯が全くない場合
ウェットフードやドライフードをふやかしたものを与えるようにしましょう。
準備するもの:いつものドライフード、水かミルク
- 水かミルクを人肌ぐらい(約35度~約37度)に温める
- ドライフードに温めたお湯かミルクをかけて浸す
- ドライフードが柔らかくなったら完成
食べやすくする方法はこちらで紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
関連記事:猫の歯が抜ける3つの原因とは?歯が悪い愛猫への食事方法もご紹介
歯が原因以外の猫が歯をこすりつける理由
それはもしかしたら歯をこすりつけているのではないのかもしれませんよ。
マーキングしている
猫の口の周りには、自分の匂い(フェロモン)を出すための臭腺というものがあります。
家具の角などで、グリグリ口をこすりつけているようにしている様子があれば、自分の匂いを付けている可能性がありますよ。
中には飼い主さんの指にグリグリ歯磨きのようにこすりつけてくる猫ちゃんもいます。
猫は自分の匂いが好きで、自分の匂いがすると落ち着きます。逆に自分の匂いがしないとソワソワしてしまうのです。
大好きな飼い主さんには自分の匂いを付けていてほしいので、こうやって自分の匂いを付けているんですね。
皮膚の病気
中には口の周りに皮膚病を発症している可能性も。
アレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎とは皮膚に湿疹や炎症を起こしたもの。先ほどもお話ししましたが、炎症が起きるとかゆみも起こります。
アレルギー性皮膚炎は3種類にわけられます。
アレルギーの種類 | 原因 |
ノミアレルギー | ノミが血を吸う際、唾液が体内に入り込むことが原因 |
食物アレルギー | タンパク質が原因。肉のみならず、魚、大豆、小麦、じゃがいも等が原因 |
アトピー性皮膚炎 | 花粉やハウスダストが原因 |
これらはアレルギーの原因となるものを食べた、触ったといったことが引き金となり症状が出現したものです。
特に食物アレルギーやアトピー性皮膚炎は口の周りに症状が出やすいので、口元をしきりにかゆがる様子が見られるんです。
かゆみの原因が歯なのか皮膚なのか、口をかゆがるのは同じなのでわかりにくいですよね。そこで、見分ける方法はこちらです。
- 皮膚が赤くなっている
- ぶつぶつができている
- ただれやジクジクしている部分がある
皮膚にこのような症状がある場合はアレルギー症状の可能性があります。
それともう一つ、猫の口元にできるかゆみの原因がこちら。
猫挫瘡(ねこざそう)
猫挫瘡は通称「猫ニキビ」。
あごの下や唇、口角(口の端)にできやすく、はじめは黒い点に見えます。
徐々に周りの毛が抜けて、赤い斑点に、更に進むと細菌感染を起こしたりすることがあります。
症状が進み炎症がひどくなると、かゆみが出るんです。かゆみが出てくると、家具や床に口をこすりつける行為はよく見られるようになります。
【猫挫創の原因】
- 食器に付いた雑菌
- ストレス
- 毛づくろいができていない
- ニキビダニ
- フードが合っていない
人も体調が悪かったり、ストレスが溜まっているようなときにニキビができたりしますよね。
猫も免疫力が低下しているとニキビができやすくなるんですよ。
ただ人のニキビとは全く別物なので、人のニキビ治療薬は絶対に使わないようにしましょう。
皮膚のトラブル、見つけたらまずは一度動物病院を受診しましょう。
猫を叱らなくていい環境づくりのコツ
猫が歯をかゆがるのはかわいそうですが、家中噛まれた紙くずや自分の指が傷だらけになっていくのは我慢の限界がいてしまいますよね。
そんな我慢の限界になって叱ってしまったり、危険な目にあわせないように、環境づくりが大切です。
コード類はカバーをする
噛まれると一番困るとも言ってもいい、コード類。
火事の危険もあるし、ここは噛むのを防いでおきたいですよね。
そんなときはコードにカバーをかけるといいですよ。
カバーは100均やホームセンターなどでも売っていますし、すぐに手に入れることができすよ。
飼い主さんでは遊ばせない
子猫に飼い主さんの手で遊ばせているという方は、今すぐやめることをおすすめ。
手にじゃれて噛んだときに、飼い主さんが反応するのが面白くなり『飼い主さんの手=おもちゃ』と覚えてしまいます。
入ってほしくない部屋はドアを閉めておく
当たり前ですが猫たちはいじっていいもの、悪いものの区別はわかりません。
気になったものはいじってしまいます。
そこで、大事なものが置いてある部屋はあらかじめドアを閉めておくのがベストですね。
噛んでもいいものを与える
危険な物や壊されると困るものは遠のけることができましたね。
最後は一番おすすめの方法、それは噛まれてもいいものを与えておく。
まずはこちらのおもちゃです。キャットニップというハーブが使われているおもちゃになります。
またたびのように猫が夢中になる匂いがするんですよ。
こちらもキャットニップが使われているおもちゃになります。
かゆみは我慢するのもつらいものですよね。
かゆみ解消のために噛んだり、こすりつけたりするので、そのための環境を作ってあげるのも猫への優しさです。
おうちの中を見回して、改善できるところはないかみてみてくださいね。
まとめ
歯がかゆいのかなと感じたときに考えられる原因、それぞれのチェックリストに当てはまるものはあったでしょうか。
ちょっとまとめてみましょう。
まずは、本当に歯がかゆいのかを確認していきます。
【歯がかゆい判断チェック】
かゆがる様子があったらここをチェック
- 生後3週間~生後6か月の子猫
または
- 強い口臭がある
- 普段歯みがきができていない
- ストレスが思いつかない
そして歯をかゆがっていることがわかったら今度は噛む理由ですね。
噛む理由は2つありました。
【歯をかゆがる2つの理由】
- 歯の生えかわり:下から生えてくる歯の刺激で歯茎がムズムズかゆくなる
- 歯周病:炎症を起こすことでかゆみの神経を刺激、かゆみを感じる
それぞれのチェックリストをもう一度おさらいしていきましょう。
口臭がする
歯茎からの出血
食欲がない
歯が黄色くなった
歯茎が赤くなった
歯肉から出血する
ゴハンに時間がかかるようになった
ゴハンを残すようになった
片側の歯でしか噛んでいない
よだれの量が増えた
顔を触られるのを嫌がる
口を家具や床などにこすりつける
前脚でしきりに口元をぬぐう
くしゃみや鼻水が出る
グルーミングをしなくなった
言われてみればこんな行動あったかも・・は、きっとこれからもあると思います。
一番大事なことは、猫ちゃんの行動をよく観察しておくこと。異常は早く見つけてあげましょう。
皆さんと猫ちゃんたちがいつも笑顔でいられるように参考になれば嬉しいです。
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