「もう耐えられない!!」きっかけはそんな友人の言葉でした。
その友人は、飼っている2匹の猫ちゃんをとても可愛がっていて、猫についての勉強も熱心にしている方だったので、わたしは驚いてしまいました。
ゆっくりゆっくり話を聞いていくと、どうやら友人の猫ちゃんの1匹が、ここ数か月で今までやらなかった尿スプレーを繰り返しているとのこと。
掃除しては別のところにやり、やっては掃除し、の繰り返しで、臭いが家に染み込んでいるかのように常に漂い…という状態で疲れ果ててしまったようなのです。
実はわたし自身の体験では、以前飼っていた愛猫「しゅり」の尿スプレーに少し悩まされたものの、比較的早く改善できたので、「辛くてたまらない!」というほどではなかったんです。なので友人の話をきっかけに、マーキングに効く薬や製品について改めて調べることにしました。
いろんな対策を試したのにマーキング行為がおさまらない、もう疲れ果てたという飼い主さんにしっかりとお届けしたいと思います。実際に友人が選んだ方法やその効果についてもお伝えしていきますね。
困ったマーキング行為の治療
マーキング対策を色々やってきた飼い主さんだと、基本的な知識はすでに頭に入っているという方も多いと思います。
とはいえ、どんなことが改善につながるか分かりませんので、まずはマーキングについての基礎知識を簡単にご紹介しますね。
マーキングとは
「マーキング」といわれている行為ですが、その方法は主に次の3パターンです。
- あごや頬、口周りなど身体をこすりつけるスリスリ
- 爪とぎ
- 尿(まれに便)によるマーキング
これらの行為がすべてマーキング、すなわちナワバリ主張するための行為とは限らないのでややこしいのですが、ここでは「マーキング行為」としてまとめますね。
マーキング行為の目的は、縄張りを示すため以外にもいくつかあって、簡単にまとめるとこのようになります。
- 自分の縄張りを守るため
- ここにこんな猫がいるよ!という性的アピール
- 生活環境や飼い主などへのストレスの主張、あらわれ
1番目と2番目に関しては本能に基づくものなので、その習性をきちんと知って対策すれば、かなりの確率で改善が見込まれます。特に発情に伴うマーキング行為については、こちらの記事でわかりやすくご紹介しています。
猫が感じるストレスの要因
いつもゴロゴロしてよく寝る猫ちゃん、なんだかストレスなんて全くなさそうですが、実は猫というのはストレスに大変弱いんです。
嗅覚や聴覚も優れているので、人間は何も感じないようなささいなことにも敏感に感じ取り、それをストレスとして抱え込んでしまう猫も多いのです。
ストレスの原因といわれるものはもう本当にたくさんあって、それを考えていくとこっちがストレスになりそうなくらいあるんです。ほんの一例をザッとあげると、こういったことが猫のストレスになると考えられています。
音 | 掃除機や洗濯機などの大きな音、工事や花火大会などの音、金属音 |
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ほかの猫 | 野良猫の姿や鳴き声、同居猫との接触 |
匂い | 今までと違う匂い、猫が嫌いな匂い(柑橘系やミント、柔軟剤など) |
環境 | 引越し、模様替え、気温や室温、来客、赤ちゃんや同居動物が増える |
飼い主 | 飼い主の不在、触れ方の不満(子どもなど)、叩かれたりしかられる |
生活環境 | トイレの環境、運動できる場所、爪とぎの場所 |
その他 | 地震や雷、退屈、身体の不調、動物病院、他の過去のトラウマなど |
こういったことをストレスに感じる猫ちゃんもいますよ、というだけです。ですが環境の変化には敏感な子は割と多いようですので、家具を新しくしたりするときには、猫の様子をしっかり見ていてあげるのがいいかもしれませんね。
そして最初の話に戻りますが、困ったマーキング行為、特に尿スプレーの陰にはこういったことが隠されているかもしれないということです。
まだ自分のお家の中でストレスの要因になるものがないかを確認したことがない、という飼い主さんは、ぜひこちらの記事を読んでみて試してみてください。
マーキング行為は薬で治せるの?
とにかく知りたい気持ちをぐっとこらえて最初の部分を読んでくださった方、お待たせしました。もちろんここから読んでいる方も、どうぞこのまま読み進んじゃってください。
動物病院での治療
知り合いの獣医さんにお聞きしたんですが、マーキング行為の治療で猫ちゃんが病院に来た場合は、次の順番で猫ちゃんをみていくそうです。
- 避妊・去勢手術を済ませているか
- 排尿の妨げとなる医学的疾患がないか
- お家の環境や飼い主の行動に不満がないか
- 精神的な不安の度合いがどれくらいか
4つ目の、精神的な不安が大きく、精神病や不安症と診断された場合にのみ「薬」は処方されるのです。ストレスや不安を薬で緩和することで猫の精神を安定させ、マーキング行為の改善をはかる、という治療法ですね。
医薬品は獣医さんに処方してもらう!
これはわたしからのお願いですが、医薬品は必ず獣医さんの処方のもとで与えるようにしてください。
インターネット上でペット用の医薬品も販売していますが、副作用や、いわゆる飲み合わせといわれるほかの薬の成分、そして猫ちゃんの身体の状態によってはむしろマイナスになる可能性があります。
でも日中働いていたり、なかなか動物病院に連れていく時間が取れない。そんな方のために、治療の補助として使えるものをご紹介しますので、まずはそれから試してみてください。
これを使って猫ちゃんを安心させよう
そうですよね。なかなか病院に行くのが大変な方は意外と多いと思います。そんな方に試してほしいのが、薬ではないのですが、猫ちゃんのストレスや不安を和らげるための製品です。
こういった製品は多種多様でたくさん販売されているんですが、今回は次の三点をクリアしているものをご紹介したいと思います。
- 購入がしやすい
- 猫や人に副作用が出ない
- 知り合いに使用経験を聞いたもの
フェロモン製剤【フェリウェイ】
フェリウェイは、猫の頬や口周りから分泌される、F3というフェロモンに似た物質が配合されているフェロモン製剤です。フランスの動物薬専門医薬品メーカー、Virbac(ビルバック)という会社から発売されています。
そういうイメージはありますよね。ですが、フェロモンというのは性的なものだけではなく、同じ動物の間でのコミュニケーションに使われる、自然の分泌物なんです。
- 顔まわりから出る安心フェロモン(フェイシャルフェロモン)
- 足裏や肛門から分泌される警戒フェロモン
- 発情期の猫の尿に含まれる性フェロモン
フェイシャルフェロモンの種類はF1~F5まで種類分けされていて、機能が解明されていないものもあります。そのうちのF3は、「縄張り」や「マーキング行為」と関係性があると分かっています。
安心フェロモンという名前のイメージ通り、フェイシャルフェロモンは猫を安心させる効果があります。これを撒くことで猫ちゃんに安心感を与え、ストレスを緩和させるという目的の製品です。
フェリウェイには「拡散タイプ」と「スプレータイプ」の二種類がありますが、どちらも使い方は簡単。
「拡散タイプ」は拡散器にセットしたら、コンセントに差し込み、そのままにしておくだけ。こちらは24時間連続使用することが基本です。人間の蚊よけの製品をイメージしていただくとわかやすいですね。
「スプレータイプ」は猫ちゃんが良く過ごす場所にスプレーします。ゆねの場合は、爪とぎしてほしくないところに毎日スプレーしていたら、そこでの爪とぎはおさまっていきました。
サプリメント【ジルケーン】
気持ちを落ち着かせるサプリメント、つまり健康補助食品として「ジルケーン」という製品があります。こちらはベトキノール・ゼノアック株式会社という動物用医薬品メーカーから出されています。
ジルケーンにはミルク由来の「α-カソゼピン」という成分が含まれており、この成分が持つ抗不安作用で、猫ちゃんの緊張や不安を和らげることができるんです。
簡単に言うと、赤ちゃんがミルクを飲むと安心して落ち着くように、「α-カソゼピン」を摂取することでリラックスできるということですね。病院に行く前や旅行前など、ストレスを感じそうなときに事前に与える方法も効果が高いです。
牛乳そのものを猫に与えると、下痢や消化不良、または牛乳アレルギーを起こす場合があるのでやめましょう。
こちらはカプセルの中にパウダーが入っており、カプセルのまま飲んでもらうか、もしくはパウダーを食事や水にふりかけても大丈夫です。ゆねはカプセルのままだと嫌がったので、おやつのウェットフードにパウダーをかけたら、そのままペロッと食べてしまいました。
4匹の猫ちゃんを飼っている知人は、「1頭だけどうしても食べてくれない」ということも言ってましたので、猫ちゃんによっては上手くエサに混ぜるなどの方法を考える必要がありますね。
ホメオパシー療法【バッチフラワーレメディ】
聞き馴染みのない言葉ですよね。これについてきちんとお話しすると、ものすご~く長くなってしまいます。なのでものすご~く簡単にいうと、病気の部分だけをみるのではなく、身体全体を考えて、身体・精神・心・生活環境までケアしていく療法のことです。
この考えに基づいて、1936年にバッチ博士という方が完成させたのがバッチフラワーレメディ。人も動物も同じように使用することができて、動物医療関係者はもちろん、なんと英国王室、芸能人やモデルにも愛用者がいるほどポピュラーな製品です。
オリジナルのレスキューレメディも動物に安全、とのことですが、ペット用にノンアルコールタイプが発売されているので、そちらを選ぶとより安心ですね。
ちなみに英語ですが、興味のある方はバッチフラワーレメディのサイトも読んでみてください。「ロックローズはパニックを解消し、勇気と落ち着きを取り戻す」など、38ものフラワーレメディがどんな効果があるかが紹介されていて、なかなか面白いですよ。
副作用や常用性は全くないとのことだったのでゆねにも試してみました。使い方としては1回につき4滴、口に直接入れるか、飲み物やごはんに混ぜ込んで、身体の中に入るようにすればOKです。
お花のエッセンスなんて素敵、と思ってウキウキゆねにあげると…味が嫌なのか、食べてくれませんでした。ですが足や耳にすりこんでもいいとのことだったので、マッサージのつもりでモミモミ。匂いは気にしないようで、特に問題はありませんでした。
ちなみに人間も一緒にとると、飼い主のストレス緩和にも良いということなので、なめてみると、ほんのり甘~い。ちょっと妖精気分を味わえました(笑)
参考:それ、マーキングではなく病気なのかも!?
マーキング行為の中で最も困るのが尿スプレー。実はこの尿スプレーから病気が疑われるときもあります。
疑われる病名 | 見られる症状 |
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ストルバイト結石 | トイレ以外で尿をする、何度も力む、血尿 |
シュウ酸カルシウム結石 | トイレ以外で尿をする、血尿、回数が増える |
糖尿病 | 水を沢山飲み尿の回数が増える、歩き方がおかしい |
慢性腎不全 | 元気がない、やせる、水を沢山飲み尿が増える |
膀胱炎 | トイレ以外で尿をする、お腹付近を触ると痛がる |
このように、普段のトイレでおしっこしないと尿スプレーだと思われがちです。ですが特に環境なども変わっていないのに急に尿スプレーをしだしたら、病気のサインかもしれません。動物病院で相談してみてください。
その際には、生活環境をチェックしたリストなどを持っていくと、獣医さんにも伝わりやすくスムーズです。なかなか全部を覚えておくのは難しいですからね。
友人の選択と効果
冒頭でお話しした友人は、獣医さんに行く時間があまりとれないこと、イマイチ信頼関係ができていない獣医さんから薬を処方してもらうことに不安があったそうなので、まずフェリウェイを導入することを決めました。
拡散タイプのフェリウェイを、猫ちゃんが最も尿スプレーしていた居間に設置したところ、最初は特に変化がなかったようですが、1週間ほどするとかなり頻度が少なくなってきたとのこと。
猫ちゃんが落ち着くにつれ、「もしかしたら、以前より遊んであげる時間が減ったのが不満だったのかな…」と、友人も自分を見直す余裕が戻ってきたようです。
指定場所以外での爪とぎも減ったらしく、今使っているフェリウェイリキッドがなくなったら、ほかの製品も試してみる、とのことでわたしも一安心です。
まとめ
猫ちゃんのマーキング行動には様々な理由があります。
最後におさらいしておきましょう。
- 自分の縄張りの主張
- 発情に伴う、ほかの猫へのアピール
- 生活環境や飼い主などへのストレス
尿スプレーなどで辛い思いをしている飼い主さんには大変かもしれませんが、猫ちゃんはストレスに弱い生き物であるにもかかわらず、言葉で「これ!」というように訴えることができないんです。
ネット販売などで安易に薬を買ったりせず、必ず獣医さんの処方で薬を使うようにしましょう。また、薬を処方してもらったとしても、即効性を求めず、長い目で見守ってあげてください。
そして病院に行くのが難しい場合や、薬の治療の補助として、フェリウェイやジルケーンのような製品を取り入れてみてください。