猫の大半は、「歯肉炎を患っている」言われていることをご存じですか。
成人の80%が「歯周病」にかかっていると言われる今、実は肉食で虫歯知らずそうな猫もまた、約80%が「歯周病」にかかっているというデータがあるんです。
実際わたしのまわりでも、愛猫ちゃんの「歯肉炎」で悩んでる飼い主さんは多いです。
そして今、健康ブームにのって話題になっている「マヌカハニー」が、猫の「歯肉炎」にも効果があると言われているのはご存じですか。
聞きなれない食べ物なので、いろいろ気になりますよね。ましてや「ハチミツ」なんて甘い物をあげたら虫歯になって余計に口内トラブルに発展しそう。と心配になる方もいるはずです。
そこで今回は、「マヌカハニーとはどんなものなのか」と「その効果と与え方や注意点」などについてご紹介したいと思います。
マヌカハニーとは
「マヌカ」はニュージーランドにのみ自生するフトモモ科の低木です。ミツバチによって集められた、この花の蜜が「マヌカハニー」になります。
マヌカは古くから病気の治療に使われていた
紀元後700年から1700年にニュージーランドに来た、マオリの人々は、多くの病気の治療にマヌカを用いる方法を学び、マヌカの葉、樹液、新芽、樹皮、すべてを使い下記の病気の治療に使っていました。
- 鼻風邪
- 肩こりとリウマチ関節の痛み
- 赤痢
- 皮膚病
- うがい薬
- 痛む目の洗浄
「マヌカ」とは、マオリ語で「復活の木」もしくは「癒しの木」という意味なんです。
マヌカの葉から蒸留されるマヌカオイルも、今「ストレス緩和」や「筋肉や関節の痛みを和らげる」「皮膚病改善」などに効果があると、幅広い分野で注目されているんですよ。
ネコ科の動物は遺伝的にエッセンシャルオイル(精油)の成分を上手く代謝することができないのでマヌカオイルを猫に使用するのは避けましょう。
マヌカハニーが高級品で治療薬にもなるわけ
マヌカハニーは「ハチミツの王様」「世界で最も高級なハチミツ」といわれています。それはマヌカハニーが、強力な抗菌効果をもたらす物質「食物メチルグリオキサール(MGO)」を豊富に含む食品だからです。
そして、マヌカの木は基本的にはニュージーランドにしか生えていません。(一部、オーストラリアにも存在している) 加えて、ハチミツができるのは年間で花が咲く約4週間であるといわれてます。
この食物メチルグリオキサール(MGO)が含まれることで、あらゆる病気や傷の症状に高い治療効果が期待できるんです。
マヌカハニーには「MGO」と「UMF」という2つの品質保証基準が表示されていますが、まずは、抗菌作用の強さを表す「MGO」についてご説明しますね。
MGOとは
「MGO」は先ほどお話した非常に強い抗菌活性*を持ってる天然の成分「食物メチルグリオキサール」のことです。
横の数値はハチミツ1kgに含まるMGO含有量で、「MGO100」は100mgのMGOが1kgのマヌカハニーに含まれているということになります。
抗菌活性*(こうきんかっせい)…菌の活動を抑える特性
ある研究チームが全世界から80以上のハチミツを試験したところ、食物メチルグリオキサールの濃度は7mg/kgを超えませんでした。
しかし、一部のニュージーランド産マヌカハニー中のMGO濃度が、通常のハチミツより70倍以上も高い、30mg~700mg/kgほどまであることを明らかにしました。
MGOの横に表示されている数が大きければ大きいほど、食物メチルグリオキサール濃度が高く抗菌力も強くなります。
もしマヌカハニーの食物メチルグリオキサール濃度が低い、あるいはまったく含まれていないとすれば、それはマヌカハニーが他のハチミツと自然に混ざったもの、あるいは人工的に混合されたものです。
UMFとは
【Unique Manuka Factor】(ユニークマヌカファクター)の略で、マヌカハニーの純度や品質を保証する国際品質基準で、ニュージーランド政府が100%出資している検査機関で厳しく検査され、合格した証がUMFです。
UMFの数値は消毒液のフェノール溶液*と比べてどのくらい抗菌効果があるかを表したもので「UMF10」と表示されている場合は、10%のフェノール溶液と同じ抗菌効果があるということになります。
フェノール溶液*…殺菌効果があり、消毒などに使われる溶液
つまり、「UMF」と「MGO」の数値はともに抗菌作用のグレードを表しているということですが、その数値ごとの効果は下記のようになります。
UMF | MGO | 期待できる効果の目安 |
5+ | 30+ | おいしく栄養補給できる。マヌカハニー初心者におすすめ |
10+ | 100+ | 風邪予防や健康維持に。手軽にマヌカハニーを続けたい方におすすめ |
15+ | 250+ | おいしく体調管理したい方にある程度効果が期待できる |
20+ | 400+ | 美容と健康維持を目的とする方に十分効果が期待できる |
25+ | 550+ | 医療用レベルの効果が期待できる |
抗菌効果が明らかにされたマヌカハニーは、治療目的に採取され、医療用ハチミツとしても使用されています。
最近は、ヘリコバクター・ピロリ菌*に対する高い殺菌効果も証明され、オセアニアや欧米の医療機関では、糖尿病の合併症や長期療養患者の床擦れ(とこずれ)による皮膚の病気などの治療にも、積極的に利用されているんですよ。
ヘリコバクター・ピロリ菌*…胃の粘膜にすみ付く細菌で胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に関わる。
マヌカハニーが効果があると言われている病気は次のようなものもあります。
- 胃腸の病気
- 虫歯、歯周病、歯肉炎、口内炎などの口腔内の病気
- 風邪
- 糖尿病
- 皮膚、肌トラブル
- 傷
マヌカハニーが「猫に害がないのか」、また「猫にも効果があるのか」についてはこれからお話しますね。
マヌカハニーを猫に与えても大丈夫?
マヌカハニーは天然のハチミツなので危険はありません。なので、成猫は適量であれば与えても大丈夫です。与え方や量についてはあとでご説明しますね。
そこはとっても気になりますよね。じつは、ハチミツは虫歯になりにくい甘い物なんです。
ハチミツは虫歯になりにくい
虫歯を起こすのは虫歯菌の餌となるショ糖と呼ばれる甘み成分です。
ショ糖は、普段の食事やおやつとしてわたしたちが食べている砂糖のことで、その正体は「ブドウ糖」と「果糖」が合体して結合したものですが、「ブドウ糖」と「果糖」が単体で入っている場合は、「ショ糖」にはなりません。
ブドウ糖… 自然界に最も多く存在する代表的な単糖類。動植物が活動するためのエネルギーとなる。 脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質で、人体にとっても重要な栄養素。
果糖…全ての糖の中で最も多く水に溶ける。ハチミツ、木に成る果実、ベリー類、メロン、ある種の根菜に多量に含まれている単糖。
ハチミツの主な甘み成分は、ブドウ糖(約42%)と果糖(51%)なので虫歯菌が餌に出来ないため、そのまま食べても虫歯になりにくいんです。
また、ハチミツには、過酸化水素(オキシドール)という物質が含まれています。このオキシドールが、虫歯の原因菌であるミュータンス菌の繁殖を抑え、虫歯や歯周病の予防になっているんです。
安全で虫歯になりにくいハチミツですが、与えるときは次の2つの注意が必要です。
- ハチミツのボツリヌス菌に注意する
- ハチミツで糖分の取り過ぎに注意する
詳しく説明していきますね。
1 ハチミツのボツリヌス菌に注意する
ハチミツにはボツリヌス菌が含まれていることがあり、「芽胞(がほう)」と呼ばれる菌の卵・種のようなものが腸の中に入ると、発育・増殖して毒素を出すことでボツリヌス症が引き起こされます。
ボツリヌス毒素は、100度で2分程度加熱することで死滅されると言われていますが、ただ、はちみつを加熱すると、含まれる栄養素が熱で破壊されてしまい、せっかくの成分が摂れなくなってしまうんです。
ボツリヌス菌自体は、大人でも激しい食中毒症状を引き起こすこともあります。なので、まだ消化器官が成長していない子猫にはハチミツを与えないほうがいいですね。
2 ハチミツで糖分の取り過ぎに注意する
ハチミツの主成分は糖です。つまり炭水化物から成り立っているので、元々肉食動物の猫はタンパク質を主な栄養源としているため、猫にとって炭水化物はさほど重要な栄養素ではありません。
なので、本来猫にとってハチミツは、必ずしも必要な食品ではなくし好品です。
猫の糖の代謝能力には限界があり、糖を摂取しすぎるとお腹をこわして下痢をしてしまったり、代謝できずに血糖が高い状態が続くと、糖尿病のリスクや肥満を引き起こす可能性があります。少量に控え、与え過ぎないことが大切ですね。
マヌカハニーは猫の歯肉炎にも効く
マヌカハニーが高い抗菌力をもつことは先ほどお話しました。もちろんその効果は猫の口腔内の病気「歯肉炎」「歯周炎」「口内炎」などにも有効です。
猫の口腔内の病気について詳しい症状はこちらの記事にかいてあります。治療法や予防法なども書かれているので参考にしてみてください。
わたしの友人は、愛猫ちゃんの歯肉炎に悩んでいて「できるだけ天然のもので口腔ケアしてあげたい」という思いから、獣医さんに相談したところ、マヌカハニーを教えてもらったと教えてくれました。
その獣医さんは、マヌカハニーは副作用がないため病院での他の治療と一緒に使用できるので、マヌカハニーを指サックに乗せて歯茎をマッサージしてあげることで、口腔内の殺菌ができ、症状を抑えることができるとお話してくれたそうです。
栄養補給にもなる
マヌカハニーは高い抗菌力の他にもビタミン、ミネラル、アミノ酸を豊富に含む栄養価の高い食材です。
- 食欲がない
- 口内炎で食べたくても食べられない
- 下痢しがちで栄養を効率よく摂取できていない
- 高齢であまりたくさん食べられない
などの症状のある猫ちゃんの栄養補給にもマヌカハニーは役立ちますよ。
マヌカハニーの与え方
マヌカハニーをどのくらい与えたら「歯肉炎」や「口内炎」などに効果があるかは、個体差もありますので具体的にはどのくらいと言えません。
マヌカハニーを初めて猫に与える場合は、1滴なめさせる程度にとどめて、猫ちゃんの体調をチェックしてあげてください。
特に問題が起こらなければ、小さじ1/3~1/2程度を食べさせてみて、嘔吐(おうと)や下痢がみられたら、直ちに与えるのを控え、動物病院で診てもらいましょう。
マヌカハニーは数値の低いものは一般的なハチミツの味に近く、すっきりとしていますが、数値の高いものは若干の苦味があり、お薬らしい味なんです。
なので、「歯肉炎」などの予防のために高い数値のマヌカハニーを与えようとしても嫌がる猫もいます。
マヌカハニーは「歯肉炎」や「口内炎」といった口腔内の病気に効果があり、また栄養価も高くとても優れた食品ですが、先ほどもお話ししたように、ハチミツは猫にとって必ずしも必要な食品ではありません。
嫌がるようなら無理に食べさせてないで、猫ちゃんのストレスになるようなことは避けてあげたほうがいいですね。
どうしても、マヌカハニーを食べない猫ちゃんにマヌカハニーを試したい。という方は、次の方法を試してみてください。
- 指に少量のマヌカハニーをつけて歯茎に塗り込む
- キャットフードやおやつの風味付けに少量マヌカハニーを混ぜる
- 猫の肉球ケアついでに少量のマヌカハニーを塗り、猫が自然と舐めるのを待つ。
まとめ
「マヌカハニーについて」と「猫への効果・与え方や注意点」についてお話してきました。
強力な抗菌効果をもたらす物質「食物メチルグリオキサール(MGO)」を豊富に含むハチミツで
- 胃腸の病気
- 虫歯、歯周病、歯肉炎、口内炎などの口腔内の病気
- 風邪
- 糖尿病
- 皮膚、肌トラブル
- 傷
などの病気の治療に効果があり、虫歯になりにくいので猫の口腔内の病気にも効果があると言われている。
- ハチミツにはボツリヌス菌が含まれていることがあるので、子猫にはハチミツを与えない
- 猫は糖の代謝があまりできないため、1度にたくさん食べると下痢をしてしまうので与える量は少量にする
- 食べさせすぎは、糖尿病や肥満の原因になるので1日小さじ1/3~1/2程度にする
- 初めてハチミツを与えるときは食べた後の様子をよく観察して、異変がみられたらすぐに病院につれていく
マヌカハニーは高い抗菌力から、猫の「歯肉炎」や「口内炎」などの口腔トラブルに効果があり、また天然の食品なので副作用もなく優れた食品です。ただ、食品なのでマヌカハニーの効果には個体差がありますし、嫌がる猫もいます。
なので、体にいいからといって必ずしも猫にとって必要な食品ではありませんので、くれぐれも与えすぎには注意して、与えるときは愛猫ちゃんの様子をよく観察してあげてくださいね。